表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/176

131.目覚める本能

「次は二人目だね!!」


 ラーフラは興奮がやみ止まぬといった様子で、隣に拘束されているもう一人を殺めようとする。そんなラーフラを止めたのはアーチェだ。振りかぶる彼の手をアーチェは掴んでいた。そこにはあまり見ない怒りの感情がちらついていた。


「やめろ、ラーフラ」


「もう、うるさいなぁ。アーチェは引っ込んでてよ」


 ラーフラも自身の行動を止まられて、腹を立てているのか少しだけ不機嫌そうだ。


「仲間割れか。本当にくだらない」


 女王はそんな二人の様子を見て、卑下していた。その様子からは人間へのプラスな感情は何も伺えず、女王がどれだけ人間というものを嫌い、蔑んでいるのかよく分かる。

 

 人魚というだけで、人間からは歴史的にどういった扱いを受けていたのかは、簡単に想像できることだからだ。

 それゆえに、彼女が先ほど言ったことは全て事実なのだろう。女王はソラたちが彼等を殺さなければ、どういった処置をするのかは分かりきったことだ。そして、この海の中で彼女たちに逆らうということは致命的なことでもある。


 ソラたちが人間である以上、海の中では生きることはできない。だからといって、ずっと従うわけにもいかない。ソラたちがここにいる理由はないからだ。


 アーチェとラーフラはまだ少し揉めている。二人ともソラの様子を気にすることはない。ソラは剣を見つめた。その白銀に輝く剣を素早く抜くと、船長ともう一人の船員の首を刈り取った。

 刈られた首が地面に音を立てて落ちる。水の中というだけあって、血が噴き出るということはなく、それはただ海の水を一瞬だけ薄めただけだ。動かなくなった船長の体を見て、残された料理長は震え上がった。


 ロロやアーチェに料理を振る舞う彼の姿が目に浮かぶ。その全容から悪い人間ではないと思っていたが、実際には人魚を捕まえている船の乗組員だったのだ。

 彼がそのことを知らなかったという可能性もあるが、そんなことを今は気にかけている場合ではない。


「待ってくれ! ソラ!」

  

 ロロの咎める声が聞こえた。しかし、ソラは止まることはない。もう一人になってしまった以上、一人が一人を殺すことはできない。それならば、ソラがこの手を汚してしまえばいい。どうせこの手はもう肌の色さえ見えないほど、汚れているのだから。


「待つんだ! ソラ!」


 すぐ側にいたアーチェがソラの手を掴んだ。その力は非常に弱く、ソラであればすぐに振りほどくことができるほどの力だ。  

 けれど、アーチェは真っすぐにソラのことを見据えてきた。その様子から、真剣な気持ちが伝わってくる。ソラは剣に込めた力を緩めることなく、アーチェの目を見つめ返した。


「なに?」

 

「殺しちゃ駄目だ」


「この人たちは人魚を攫った人たちなんだよ? 悪人だよ」

 

 アーチェもそれを理解していないわけではない。しかし、それでも彼は首を横に振った。


「そうかもしれないけど、まだ理由も聞いてないし、人魚の女王の話もなんだか疑わしいよ」


「ほぉ、ワシを疑うのか? つくづく、人間とは腹の立つ生き物だ」


「ねぇ、ソラ。ここで殺したら後悔するよ」


「ひいぃー! そうですよ! 私を殺したら、もう美味しい魚料理が食べられなくなってしまいます!」

  

 アーチェの言葉に便乗するように、料理長が口を開いた。彼の口はワナワナと震えていたが、先ほどよりも生気が戻っている。


「うるさいね、この人」


 ラーフラが料理長の頭を足で押さえつけた。そんなことをされたため、料理長は再び怯え始めてしまう。しかし、アーチェのこともあり、すぐには手を出す気はないようだ。耳障りだったため、彼の口を閉ざしてくれるラーフラの存在はありがたかった。


「アーチェは――」


「お前たちは騙されているんだ! 人魚とは、その瞳で人間を虜にしてしまう! 人間の敵だ! 野放しにしてはいけない!」

  

 ソラが言葉を紡ごうとしたところで、料理長は突然に口を開いた。ラーフラが頭を押さえつけているものだから、何度も舌を噛み、口の中は血で溢れていた。しかし、それでも彼は話すことをやめなかった。


「君たちは人だろう? それならば、どちらの味方につくか分かるはずだ!」


「耳障りな奴だな。前言撤回だ。やはり、ワシが其奴の息の根を絶ってやろう」


 女王が錫杖を構えて、料理長の元へと泳ぎ始めたが、ロロが即座に回り込んだ。手元には剣が握られている。

  

「止まれ! ソラ! アーチェの言う通りだ! こいつら、何だかおかしいぞ!」


 ロロが女王に剣先を向けた。


「はぁ、本当にくだらない。やはり、お主たちをここに留めておくことはできないようだ」

 

 突如、彼女の目が見開かれた。その敵意に溢れた瞳にソラは料理長の言葉を疑った。女王の瞳に魅せられたことなど一度もない。しかし、フラワーだけは別だった。彼女の瞳を見ていると、何でもしてあげたくなる気持ちが湧き出したのだ。この違いはなんなのか。  

 考えても分からないはずの答えをソラはその数秒後に知ることになる。


 女王の頭が真っ二つに裂け、中からどんどんと、うねる八本の腕が飛び出してきたからだ。その姿を見た瞬間、料理長の絶叫が神殿内に響き渡った。


「あれは化けダコだー! 醤油焼きにすると美味い!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジー ダークファンタジー バトル 勇者 魔王 魔法 心理描写 復讐・報復 裏切り・葛藤
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ