表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空白のアデア―空を継ぐ者たち―  作者: 月夜 ダイヤ
3章 勇者の目覚め
100/146

99.二回目の恐怖

 こちらに向かってくる物体にロロの影が見えた。


「ソラ!」


「ロロ」


 ソラはロロの姿を見て安堵した。一瞬だけだが、最悪の想像をしてしまった。しかし、実際には彼は無事で、こうやってこちらに向かってくる。アユリアという少女も一緒にその物体に乗っていた。それは鳥のように両側の翼を広げ、そのままソラたちの横を通り過ぎようとする。


「掴まってくれ!」

  

 アーチェが物体の端を掴んで、上に体を持ち上げた。アユリアは放心状態に見えたが、アーチェの体を引っ張った。彼が驚いた顔で、お礼を言うのが見えた。ソラも物体に掴まると、そのままその上に降り立った。


「よし! このまま上に上がるぞ」


「待って! ヘリオが、あとリトがあの森にいるんだ」


 そのまま何やら棒のようなものを上に上げようとした、ロロにアーチェが声をかける。恐らく、あれがこの物体の方向を動かしているのだ。


「悪ぃ、無理だ。これ以上は下に下がれない。墜落しちまう!」


 ロロは物体が大きな音を立てる中、声を飛ばした。


「リトがあそこに……」

  

 アユリアが燃え盛る炎をその目に映しながら、呟いた。彼女がどんな感情を抱いているのか、分からない。魂が抜け落ちた人形のように森を見つめていた。


 ソラは縁の方に近づき、森の奥を眺めた。物体は森からどんどんと離れていく。風の向きからしてその方角に進むのが難しいのだ。森には火が燃え移っている。緑色の美しい森が、赤い光に呑まれていった。リトがヘリオを連れて、逃げ出してくれていることに期待するしかない。


 同じ名前の彼を思い出し、ソラは胸が痛くなった。ソラが大事だと思うものは、ことごとく離れていくようなおかしな感覚だけがあった。



「はぁ、疲れた!」


 ロロは体を荒野に投げ出すと、息切れをした。長いこと操縦をしていた彼はかなり体力を使ったようで、少しもそこから動く気配がない。


「酷い着地だったよ」

  

 アーチェがプスプスと変な音を立てている、飛行船という乗り物が地面に着地したのだ。危うい操縦のため、何度もその体を飛行船にぶつけたようで、痣が多くできていた。


 ロロが操縦する飛行船はかなりの難航を極めた。元々、ロロは操縦士ではないのだ。不安定に揺れる飛行船が上手く着地できるはずがなく、その飛行船はもう使いものにならないということだけが分かった。


「お祖父様……。リト……」


 アユリアはかなりのショックを受けているようだった。いきなり、故郷が燃えれば無理もない。おまけに見知らぬ地に連れてこられたのだ。


「ここどこだろう。いつも、それを答えてくれた人がいる気がするんだけど」


 アーチェはキョロキョロと辺りを見渡した。アーチェの言う通り、ソラたちは自分たちがどこにいるのか分からなかった。そして、それと同時にそれを確認する相手はアユリアしかいないと思った。だが、とても聞ける状態ではない。杖を握りしめ、ボーッとしていた。しばらく、放置するしかない。


「元の場所に戻った方がいいよね」


 アーチェはヘリオのことを言っていた。少しの間とはいえ、自分たちが孵した竜だ。みんなの子供のような彼女を迎えに行かないわけには行かない。ソラは初めて辺りを確認した。

 

 荒野だと思っていたが、ここは砂漠ではないかと思った。地面も歩きにくく、やけにサラサラとした砂が靴に纏わりつく。荒野だと思ったのは、ソラがそう思っただけなのだ。砂漠には嫌な思い出がある。セザールとの出会いは幸運だったが、それ以外はずっと苦労の連続だった。


 蟻地獄、シュトラーゼ、モデラート。それらを思い出し、ソラは身が強張るのを感じた。アーチェも同じことを思っていたようで、靴の裏にこびりつく砂を厄介そうに払っている。


「まさかと思うけど、ここにはアレはいないよね」


「うん、いるはずないよ」


 彼の言葉にソラは頷いた。本当にそう思っていたわけではない。ただ、気持ちを落ち着かせたいだけだ。

 しかし、呼吸を整えたロロが足だけを使って立ち上がると、さらっと言った。


「いや、いるだろ」


 二人が無言になったのは言うまでもない。最年少のロロは足で砂を蹴り始めた。そんなことをしても、砂はなくならない。


「ここって、もしかしてエルデア砂漠?」


 黙りこくっていたアユリアは、ようやく口を開いた。そして、ガタガタと震えだした。アーチェが彼女に問いかける。


「知ってるの?」


「あぁ、信じたくない。ここがエルデアなんて……」


 話ができると思ったのも束の間、彼女はすぐに元の調子に戻ってしまった。


「会話は無理そうだね」


 アーチェがため息をついた。実際に彼女はただ、思い浮かんだ言葉を口走っているだけで、意思の疎通は困難を極めていた。


「なぁ、なんか地面が揺れてないか」


 ロロがそう口にした時には、ソラはアユリアのローブを引っ張ると、上に飛び上がっていた。家一つが丸ごと入ってしまうのではないかと思うほど、大きな口を開けたモデラートの姿がそこにはあった。


 間一髪のところでそれをかわし、ソラは相手から距離をとった。咄嗟に反応できたのは奇跡だ。少しでも遅れていたら、ソラの足はあの大きな口に飲み込まれていただろう。


 アユリアは口をパクパクさせながら、まだ意識がしっかりとしていなかった。逆にこの状況では、実態を理解できないことは幸せなことなのかもしれない。


 ロロは既に、ソラと同じくモデラートから距離を取っていた。しかし、アーチェの姿が見当たらない。ソラは最悪の想像をしながら、アーチェの姿を探した。


 アーチェはモデラートの体が当たったようで、遠くまで飛ばされていた。幸い、大きな怪我はしていないようだが、すぐに体が反応できる状態には見えない。

 

 ソラとロロはほぼ同じタイミングで駆け出したが、間に合わない。


 走っている最中、モデラートの大きな悲鳴が聞こえた。



************************



ここまで読んでくださってありがとうございます!

面白かったと思ってもらえたら、ブックマークやポイントを入れていただけると嬉しいです。

次回もよろしくお願いします!





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジー ダークファンタジー バトル 勇者 魔王 魔法 心理描写 復讐・報復 裏切り・葛藤
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ