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7/10

やり過ぎた?

久し振りに弾いた。

死んでなければ、ピアニストか物理学者になりたかった。死んでなければ。

まぁ、物理を専門にするか、数学を専門にするかは大学に入ってから決めようと思ってたけど。


「…どう!?」

私は誇らしげに胸を張った。


パラパラ…となる拍手。

そう、ここは演奏会場では無かった。

3人とも目を丸くして手を叩いている。


(…やっちゃったかぁー)

やってしまったものは仕方無い。どうとでもなれだ。

私はドヤ顔で席に戻った。


「…実はねぇ、皆に内緒にしてたけど、弾けたんだよねぇー」

先手必勝、ここは自分から攻めた方が有効だろう。

「凄いねぇ…」クランタはまだ信じられない、という顔をしている。


「素晴らしい演奏でしたよ、エメル姫」

レフィ王子が褒めてくれた。こういうところは流石だなと思う。

「ねえ、兄者」

「あぁ、ああ。本当に素晴らしい演奏でした。先ほどのは曲名…ですか」

ファルシア王子も、豆鉄砲を喰らったような顔をしている。むふ…惚れるなよ?


「そうなんです。フレデリック・ショパンの作曲です」

「フレデリック・ショパン?」


あぁ、しまった。私の生きてる(生きていた)世界じゃないんだ、ここは…。

「あっ…ま、素晴らしい曲だってことで…良いじゃないですか」

「そうですね、いや本当に素晴らしい。能ある鷹は爪を隠されていたんですね」

「いやー、それほどでも」


先ほど前と、明らかに3人の表情が変わってしまったことに気付いた。

これまでのお茶会との関係性を、私が崩してしまったのだ。


それからしばらくまたお茶会は続いたけれど、男性2人の私を見る目が、明らかに変わった。

今までは『無視』という状態だったのに、ちらちらと視線を感じるようになった。


(…あっちゃー…ま、仕方ない)

「エメル姫はピアノ以外に趣味はおありですか」


ついに、ファルシア王子から『私への』質問が飛び出した。これまでの3人のお茶会が、4人のお茶会へと変貌を遂げたのだ。


「…趣味、ですか?」

「はい。好きなこととか」

「好きなこと、ですか…そうですねー…」

正直に答えた方が、私らしいなぁと思い、本音でしゃべることにした。


「数学と物理ですね。数学と物理をやっている時は、本当に『楽しいなぁ!』って思いますね」

「…数学と物理、ですか」

「はい!」

「これは驚いた!とんでもない才女でいらっしゃいましたか…!」

「いえいえ、好きでやっているだけですから」


クランタが『何を言っているの?』という顔で見ている。私は気が付かないフリをした。

「この場をどうしてくれるの?」という意味なのか

「数学と物理なんて、できなかったじゃない」という意味なのか

深くは分からないけど。


「個人的には数学者でしたらゲーデル。物理学者でしたらファインマンに憧れています」

「ゲーデルとファインマン、ですか」

ファルシア王子とレフィ王子は『もう付いていけない』という表情をしていたが、興味深々な表情で私を見ていたこと、見逃さなかった。


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