表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/5

ザインとリセラ

(…コンコン)

「お母様、エメルです」

「入りなさい」

「失礼します」

私は正直緊張していた。お手伝いさん以外、しかも目上の人と話すのが初めてだったからである。でも、曲がりなりにも「母」なのだ。リラックスしないと…


「あなた、体調が悪いみたいだけど…大丈夫なの?」

リセラは凄く優しいお母さんといった感じだった。

ドアの前まで緊張してきた私は、すぐにリラックスできた。


「あっ、大丈夫です。少し疲れていたみたいです」

「そう。今日は大切な日だから…ここでゆっくりしていても良いのよ」

「いえいえ!私は元気ですから!」


内心「えっ」と思った。他の王国に行くのに…私は「絶対に行かなくてはいけない人」じゃないのかしら?と。その瞬間「あ、必要なのはもしかして『クランタ』なのかな」とも思った。


「まぁ…良いわ。いつも通り大人しくしていて頂戴ね」

「はい。分かっています」

なるほど。やっぱりそうだ。私は『おまけ』なのかも知れない。これだけで十分な収穫だ。


「今日はいつもと同じ感じで良いのでしょうか」

私は聞いてみた。

「そうね。ファルシア王子との話も、もう少し進展すると良いですけどね」


ほうほう、相手方には『ファルシア』という王子がいて、何か話を進めているのね…そしてそれは私では無く『クランタ』ってことかぁ。


「そうですね。私はいつも通りにしておきます」

「お願いね」

そう言って私は『リセラ』の部屋を出た。

でも不思議だった。今朝食堂でクランタに会った時、私を見て「お姉さま」って言ってたのに…こういうのって普通「王子」と「第一王女」で話が進むんじゃないのかな…ま、とりあえず、次は父の部屋へ行ってみようと思った。


(…コンコン)

「エメルです」

「あぁ、エメルか。入りなさい」

「はい。失礼します」

先ほどと同じく、ゆっくりとドアを開けて部屋へと入る。母親であるリセラと話をしているので、もう緊張は無かった。


「どうしたんだ、急に」

「いえ、今日のご挨拶にと思いまして…」

「『挨拶』?変なやつだ」

「えへへ」おどけてみせた。


先ほどの母との会話がある。父との話もしやすい。

「私はいつもと同じで良いのでしょうか」

「そうだな。それが良いだろう」

「分かりました」

「レフィ王子がお前を見初めて下されば言うことは無いのだがなぁ」

「(…レフィ王子?)…」

「こればかりはご縁だからな…クランタの邪魔だけはしないようにな」

「はい、承知しています」

私は頭を下げた。


なるほど、エジンバラ王国には『レフィ王子』もいるらしい。でも『ファルシア王子』が優先だったから…たぶん『ファルシア王子』が第1王子で、『レフィ王子』が第2王子ってところか…で、第一王子が、私の王国の第2王女と話を進めてるって感じなのね。


部屋に戻って頭を整理する。でも、どうしても聞いておきたい事が、まだいくつかあった。流石に父と母に聞いてしまっては、「いよいよおかしくなった」と思われてしまう…


「…仕方ない、フィラに聞いてみよう」

思い立った私は、フィラを部屋に呼んだ。

「エメル様、どうなさいましたか?」

「あのね、教えて欲しい事が3つあるの」

「はい」

「ほら、私、今日ちょっと変でしょう?だから今から質問する内容、驚かないって約束してくれる?」

「…は、はい」

絶対無理だろうなぁと思いつつ、一応口約束を取り付けた。


「…今から向かうエジンバラ王国の…王様と王妃様の名前を忘れてしまって…」

「…えっ」

「だ・か・ら。驚かないでって言ったでしょ」

私は可愛らしくウインクしてみせた

「…はい。カイル王と王妃はエレヴァ様です」

「そうだったわね!思いだしたわ。流石、フィラ!」

「はい…ありがとうございます…」


もの凄く心配そうな眼差し。

でも、最大の質問がもう一つあった。

「で、残りの一つなんだけど」

「はい」

「…(えぇ~い、後は野となれ山となれだ!)」

私は勇気を振り絞って、フィラに尋ねた。

「…私が今いる、ここの王国の名前って…何だっけ」

「アレンド王国、でございます…」


「あははは!だよね!そうだったよね!!アレンド王国だよねぇ~!確認よ、確認~!」

笑いで何とかごまかした。いや…ごまかせた…のか?

とにかく最小限、知っておきたいことは知ることができた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ