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死期予見  作者: 本郷真人
第七章
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(2)

 10月2日。

 木下警部率いる特別チームが、二年前に大量殺人が起きた蔵岡市に到着した。

「のどかで綺麗なところですね。」

 警視庁から高速道路を使って7時間で到着した蔵岡市。蔵岡警察署に向かう道中に木下警部の口から自然に出た言葉だった。

「はい、そうですね。人口密度がとても低いため、平日は道路も閑散として静かですし、何より素晴らしい田園風景です。」

 木下警部の言葉に佐々木警部補が賛同した。

「住宅地と田畑のコントラストに、それ程田舎という訳でもないのに、どことなくのどかな感じな町です。こんなところで20人も犠牲になった凄惨な事件が起こったとは思えない。本当にいいところです。」

 木下警部が車窓から景色を眺めていると、長時間運転をしていた宮本彰吾刑事が「もうすぐ着くみたいですよ。」と声をかけてきた。高速道路を降りてから20分が経ち、特別チーム一同は蔵岡警察署に到着したのである。


 蔵岡警察署に到着した特別チームが初めに行ったことは、蔵岡警察署の署長へ挨拶であった。

「本日からお世話になります。本庁から来ました、再捜査担当特別チームです。」

 軽い挨拶の後、木下警部はチーム全員の自己紹介をした。それが終わると、今度は蔵岡警察署の署長である杉原弘庸が軽い挨拶を始めた。

「こちらこそよろしくお願いします。去年、新しくこの蔵岡警察署の署長になりました杉原弘庸です。」

 杉原署長が軽い自己紹介をした直後、特別チーム最年長の山口刑事が声を上げた。

「突然すみません。去年から署長になったということは、矢木署長は辞められてしまったのでしょうか?」

「はい。溺愛していた一人娘が亡くなってしまってから、ひどく憔悴してしまいましてね。しばらくは有休を使っていたのですが、もう続けられないとのことでして。自ら辞表を出したそうです。」

「そうでしたか。」

 杉原署長は少し目線を特別チームからそらした。

「二年前の事件はこの蔵岡市に大きな傷を残しました。大量殺人が起き、警察官も死に、さらに同じ仲間の警察官が犯人とつながっていた。そして当時の署長の娘まで死んでしまいました。その時の蔵岡警察署は全てを早く終わらせたがっていました。」

 杉原署長は静かに話し始めた。

「事件の真相を知るはずの人物は全員死んでしまい、状況証拠などで推測せざる終えなくなりました。身内が犯罪行為をしていたという後ろめたさから、警察は事件の終了を早急に宣言しました。それ故、犯人の動機など、未だに不可解なことが多々あります。だから私も事件の再捜査はするべきだと以前から思っていました。」

 杉原署長のこの話を聞いた木下警部は内心喜んだ。警察では再捜査に否定的なことが多い。それ故、秘密裏に捜査をする必要があったり、捜査にいらぬ邪魔が入ることが数回あった。今回のように再捜査の全面協力と言っても良い杉原署長の態度は珍しく、それ故木下警部は嬉しがったのである。

「今回、我々再捜査担当特別チームはこの蔵岡市に三週間滞在し、事件の再捜査に当たります。三週間と短い期間であるのは、本庁で正式な再捜査の命令が出るかもしれないため、この度は三週間で事件を捜査することになりました。短期間ですので、事件の新たな手掛かりをつかむためにもご協力よろしくお願いします。」

 木下警部がそう言うと、杉原署長は快く引き受けた。

「欲しい情報や人手が必要な時は遠慮無く言ってください。喜んで協力しますよ。」

 特別チームと蔵岡警察署のファーストコンタクトはとても良いものだった。特別チームは蔵岡警察署の空いている会議室の一つをあてがわれ、事件当時の大量の捜査報告書を渡された。再捜査担当特別チームによる、2019年に起きた蔵岡市連続猟奇殺人事件の再捜査が本格的に始まったのだった。



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