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死期予見  作者: 本郷真人
第六章
36/69

(2)

 午前4時。渡部刑事と花村のぼるが相対する一時間前である。

 蔵岡署内のほとんどの警察官に出動命令が出た。理由はただ一つ。無断で拳銃を持ち出して行方をくらませた渡部斉紀巡査部長の捜索である。

「渡部刑事は何を考えているんだ。サクラを勝手に持ち出すなど。理由はおそらく復讐だろう。しかし、なぜ彼の家族が狙われたのかがわからない。」

 蔵岡警察署にある連続猟奇殺人事件に対する捜査本部では、渡部宅から帰還した捜査官達が慌ただしく電話をかけたり、走り回ったりしていた。

「渡部刑事は犯人の行方に心当たりがあるのでしょうか?」

「おそらくは。しかし、どうやって彼は花村の居場所を突き止めたんだ?この数日、我々が必死になって捜索しているのに何の情報もつかめなかったというのに。」

 四人の捜査官が会議室に複数ある机の一つに集まって話していた。全員が本庁から蔵岡市に応援に来た捜査官達であった。

「彼と花村のぼるは学生時代の同級生であったと聞いています。それ以外の情報は何も聞いていないです。」

 四人の捜査官達は今までに集めた資料を机の上に広げ、情報を探していた。

 しかし、そんな時に誰かの小さな叫び声が部屋の中で響いた。それはそれほど大きくない声量だったのだが、なぜか全員の注目を集めた。

「大変です。渡部刑事のバックの中からこれが!」

 叫び声の主は渡部刑事の所持品を調べていた女性警察官のものだった。その警察官の手には一つのタッパーが握られていた。

 すぐに何人もの捜査官が彼女のもとに集まった。すると彼女はおそるおそるタッパーを机の上に置いた。そのタッパーには少し黒ずんだ何かが入っていた。集まった数人のうち、幾人かはそれが何かの幼虫に思えたが、やがて全員がその正体に気づいた。

「これは、人の指か?」

 タッパーの中に入っていたのは人の指だった。所々黒ずみ、半分ミイラ化していた。

「何でこんなものが渡部刑事の鞄の中に?」

 一人の捜査官がつぶやいた直後、別の捜査官が声を上げた。

「そういえば、渡部宅で見つかった遺体に手足の指が切られていたものがありました。もしかして、その人物のものかもしれません。」

 その捜査官の発言で室内には衝撃が走った。

「渡部刑事はその人物について口を濁していた。いったいその人物と彼はどんな関係なんだ?」

 捜査本部は同じ仲間の刑事が何かの犯罪に関わっていたのではないかという事実に打ちのめされていた。

「とにかく、渡部斉紀巡査部長を探すんだ。彼が見つからなければ何も始まらない。そしてこの遺体の身元をすぐに調べるんだ。また、渡部斉紀巡査部長は拳銃を所持しているため、捜査官は全員、拳銃を携帯するように。彼が何をしてくるか分からないからな。おそらく彼は花村のぼると接触するだろう。二人を今日中に確保するんだ。」

 捜査官達は一斉に捜査本部から出動した。捜査本部にいた警察官だけではない。非番の警察官も例外ではなかった。総勢57名の警察官が二人を探し始めた。時刻は渡部刑事と花村のぼるが出会う丁度30分前だった。

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