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死期予見  作者: 本郷真人
第五章
30/69

(5)

 8月30日。

 この日、蔵岡警察署では警察官達が慌ただしく動いていた。きっかけは渡部刑事による昨日の夜に行われた捜査会議での報告だった。

「本件の重要参考人は花村のぼる、31歳。職業は県立蔵岡北高校の教諭であり、現在は連絡が取れなくなっているとのことでした。被疑者の両親は既に他界しており、現在は祖父が一人だけいるはずなのですが、その祖父も行方不明となっています。被疑者の自宅で被疑者とその祖父は二人暮らしをしていたようなのですが、彼の自宅周辺の人々に聞き込みをしたところ、今年の6月の始め頃から、その祖父を誰も見ていないそうです。」

 渡部刑事が花村のぼるという人物の情報を他の捜査員達に共有してからの彼らの動きはとても速かった。渡部刑事をはじめとした連続殺人を担当の捜査官達は、花村のぼるという人物についての現状を先の報告内容まで調べ上げたのである。

「花村は今、どこにいるんだ。」

 花村のぼるの行方は誰にもわからなかった。花村は、渡部刑事と通話をしたその日のうちに姿を消した。捜査官達が彼の勤め先である、県立蔵岡北高校に聞き込みに行ったのだが、学校からの返答は、彼は普段通りの教諭としての仕事をこなした後、その日は珍しく定時で帰ったとのことだった。

 

 蔵岡警察署の第二会議室には、件の連続猟奇殺人の担当の捜査官達が集まっていた。

「足立警部が行方不明になった件に関しても、花村が何らかの情報を持っている可能性が高いです。そして、やはり数日前に起きたバス放火事件も花村の仕業に違いありません。奴は20人以上も殺した。日本でかつて類を見ない凶悪犯です。」

 渡部刑事は声を荒らげ、捜査本部が設置されている蔵岡警察署第二会議室で捜査官達に力説した。多くの捜査官達が彼に感化され、すぐに己の責務を全うしようと、早く捜査に戻りたかったが、一人の捜査官が渡部刑事の発言に対して意見を出した。県警本部から応援に来た刑事の一人だった。

「渡部刑事。少し気になる点があるんだが、いいかな?」

「はい、何でしょうか?」

「この連続殺人と足立警部の失踪、そしてバス放火による大量殺人が全て繋がっている可能性は非常に高いと私も思っている。こんなサイコパスが複数人いるとは考えたくもないしね。だけど、やはり繋がっていることのはっきりとした確証はないとも言える。それなのに、君は全てを確信した上で行動していると感じるんだ。」

 渡部刑事はこの捜査官の意見に対して何も言えなくなってしまった。渡部刑事が全ての事件は花村が起こしたものであると確信している理由は、彼が、遠藤明が全ての事件において、花村の犯行動機になっていると考えているからである。花村が遠藤のために全部行ったとすれば、全てのつじつまが合う。しかし、渡部刑事は彼女の存在を他の捜査官達には言うことができないでいた。

(遠藤さんは俺だけを頼ってくれた。彼女は他の警察官のことは誰も信じられなかったが、俺のことだけは信じて全てを語ってくれたんだ。警察に接触した事によって、自分の身に危険が及ぶかもしれないのに、勇気を持って彼女は教えてくれた。そんな彼女のことを裏切るなんて事は俺には出来ない。)

 結局、渡部刑事はその後もはっきりとした回答をすることができなかった。彼に質問した捜査官はどうも納得できないようではあったが、この押し問答が続いても時間の無駄と思ったため、渡部刑事にそれ以上のことを聞くことはなかった。その後も捜査会議は30分程度続いたが、これといった進展もなく、ただの現状確認で終わってしまった。

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