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死期予見  作者: 本郷真人
第二章
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(1)

 2019年7月27日。

「ねえ、聞いた?また出たんだって、殺人鬼。今月でもう5人も殺されちゃったんだってね。」

 創立から40年目を迎えるいっぱしの中小企業の一つである株式会社八雲製作所。社内の朝の会話は、最近世間で話題の連続殺人事件で盛上がっていた。この事件はその猟奇的な犯行が話題となり、多くの関心を集めていた。被害者は昨日の晩に警察が公表した一昨日の事件を含めて合計5人。そのどれもが常識人には考えられないような異質な殺され方をしているというものであった。

「おはようございます。今日も良い天気ですね。」

 そんな中、一人の男が出勤してきた。彼の名は安藤興介。年齢45歳。今年で入社23年目になるどこにでもいるような平凡なサラリーマンの一人である。

「安藤さん、おはようございます。今日も元気が良いですね。」

 すぐさま後輩の女性社員である今井佳枝から声を掛けられる。この安藤という男は、勤務態度はまじめで仕事もそつなくこなし、かつ他の社員のことも良く気に掛けており、頼りになる営業課長として社内から高い評価を受けていた。

 安藤が自分の席に着こうとすると、今井が彼に話しかけた。

「聞きましたか、安藤さん。また殺人があったんですよ。ほら、最近何かと話題になっているあの・・・。」

「ああ、あの連続殺人事件か。全く朝からなんて会話をするんだ。気分が悪くなっちゃうじゃないか。」

 安藤はそう言うと笑って後輩である今井の話を受け流す。

「そんな話ばかりしていたら、この会社にもその怖い殺人鬼が来ちゃうかもしれないぞー!」

「何言ってるんですか、安藤さんったら!怖いじゃないですかー!」

 そう安藤がからかうと、今度は今井が安藤を少し責めた。

「でも、怖いですよねーその犯人。警察は何をやってるんでしょうかね。そんな奴を一ヶ月も野放しなんて。」

 安藤と今井以外の新しい声が加わった。安藤と今井の会話の中に若い一人の男性社員が入ってきた。彼の名前は望月薫。年齢は24歳。二年前にこの八雲製作所に入社たばかりであった。

「大丈夫だろ。そのうち捕まるんじゃないか、犯人。なんせ日本の警察は優秀だからな。」

 安藤がそう言うと、望月はこの安藤の発言に対して即座に反論した。

「でも最初の事件から一ヶ月ですよ、一ヶ月!こんなに被害者が出たのに未だに捕まらないなんて・・・。今後もさらに犠牲者増えるんじゃないですかね。」

 望月の言葉を聞き、安藤は少し考え、そして良いことを思いついたような顔になった。

「お前はそんなことを考えてるよりも、そろそろ例の案件を片付けた方が良いんじゃないかー?このままだと他の仕事がお前の机の上に増えるだけだぞ!」

「その件に関してはわかってますって!なかなか商談が進まないんですよ、あの案件。」

 慌てて望月は自分の机に帰っていき、本日の業務の準備に取りかかかった。

「よし!暗い話ばかりしていないで、みんな今日も元気に行こう!俺はもうちょっとしたら外回りに行くから、みんなも仕事頑張るんだぞー!」

「わかってますって!本当に元気な人ですね。」

 安藤の言葉に誰かが合いの手を入れた。こうして八雲製作所第二営業部の一日が今日も始まった。


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