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死期予見  作者: 本郷真人
第四章
23/69

(6)

 8月25日。

 この日は日曜であったため、八雲製作所は休業日だった。しかし、八雲製作所の第二駐車場には幾人かの社員が集まっていた。その全員が八雲製作所の第二営業部に所属している社員である。

「皆さん、やっぱり人事部長に呼び出されたんですか。」

 望月薫がそう切り出すと、年齢層もばらばらな男女は会話を始めだした。

「僕もそうなんですよ。急に人事部長から電話がかかってきまして、第二営業部の全員に電話が回っているって言ってました。昨日、急に来たので驚きましたよ。」

 丸山周平がそう言うと、他のメンバーも同じような内容の話を始めた。しばらくすると、50代ほどのベテランの社員である安野幸大が、集まっている全員に尋ねた。

「人事部長は理由を詳しく言いませんでした。誰か何か知っていませんか?」

 しかし、この安野の質問に答えられた人物はいなかった。

「そういえば、今井さんの姿がないですね。彼女だけが第二営業部の中で呼ばれなかったなんてことはないと思うのですが。」

 望月薫がそう言うと、丸山周平が答えた。

「確かに変ですね。今井ちゃんに限って遅刻なんてこともないでしょうし、どうしたんですかね。」

 この丸山の質問に答えた者は第二営業部にはいなかった。しかし、それ以外に答えた者がいた。

「今井佳代さんなら、もう既に来られましたよ。皆さんのこともご案内しますので、列になられてこちらにどうぞ。」

 第二営業部のメンバーが声のした方を見ると、薄い緑色の作業着を着た若い男が駐車場の隅に止められた中型バスの前で手招きをしていた。

「失礼ですが、貴方は誰ですか?私たちはここの八雲製作所の社員なのですが。」

 初対面のこの見ず知らずの男を不信に思ったベテラン社員、安野幸大がそう尋ねると、作業着の男は軽く笑ってから答えた。

「すみません。私、青山順平っていいます。こちらの人事部の高野さんという人にあなた方の送迎を任された者です。詳しくは説明されていないのですが、何でもテレビの取材がどうとか電話で言っていたのですが、高野さんご本人から何も聞いてませんでしたか?」

「高野さんからですか。わかりました。なにせ何の説明も無いまま呼び出されたものでして。」

 自身を青山順平と名乗る男の話を信じた安野は第二営業部の社員達に指示を出し、指定された中型バスに彼らを乗せ始めた。

しばらくして、集められた全員がバスに乗車したことを確認すると、作業着の男はバスの運転席に乗り込み、発進させた。

「目的地までは二五分程です。今井佳代さんという方もそこで待っています。」

 そう言って笑みを浮かべる男はバックミラーにこれから映る光景を想像するのだった。

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