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死期予見  作者: 本郷真人
第四章
21/69

(4)

 14時35分。

「経理部、遠藤明さん。至急、三階第二会議室までお願いします。」

 八雲製作所では、遠藤が社内放送で呼ばれていた。遠藤は開いていたエクセルのデータを保存してからパソコンを閉じるとすぐに第二会議室に向かった。

 遠藤が第二会議室に到着すると、渡部刑事と一人の男性警察官が部屋に幾つもあったパイプ椅子の一つに座って彼女のことを待っていた。

「忙しいところすみません。以前お会いしましたよね。蔵岡警察の渡部です。」

「今日は何の用ですか?」

 遠藤は心底面倒だという様子で言った。

「足立警部のことはご存じですよね。二週間ほど前に私と一緒にこの会社に来た刑事です。その彼なんですが、一昨日から行方がわからなくなっていましてね。その件で貴方に聞きたいことがあって来たんです。」

「一昨日なら九時から18時までは会社にいて、18時以降は蔵岡駅の方にあるファミレスに23時までずっといましたよ。」

 遠藤のこの発言に渡部は不意を突かれたようだった。

「そうでしたか。ちなみにどうしてそんな夜遅くまでファミレスにいたんですか?世間は昨今の連続殺人で夜間に一人で外出する人が激減しているのに。」

「ファミレスではとある資格の勉強をしていたんです。ファミレスの方が自宅よりも集中できると思ったので。」

「そうだったんですか。」

 渡部刑事は念のため一緒に来た巡査長に遠藤の一昨日の行動の裏付けを取るように指示すると、再び遠藤の方に向き直った。

「次なのですが、遠藤さん、貴方は二回も蔵岡警察署に来て足立警部のことを訪ねたそうですね。二回とも本人に会う前に帰ったとのことですが。いったい彼に何の用があったんですか?」

 この質問をされた遠藤は少し悩んだように間を置いてから口を開いた。

「以前、足立さんが貴方と一緒に会社に来たときに、私、ひどいことを言いましたよね。それを謝罪したかったんです。ですが警察にいざ行ってみると毎回怖じ気づいて帰ってしまったんです。」

 遠藤の話を聞いていた巡査長はすぐに彼女のことを信じたが、渡部刑事は彼女の説明に納得がいかなかった。しかし、アリバイがある以上、踏み込んだ尋問を遠藤にすることはできないため、思いとどまった。

「そうだったんですか。いや、お手数をおかけしてしまってすみませんでした。」

 これ以上彼女に何を聞いても無駄だということを悟った渡部刑事は、いらだちを表に出さないように努めながら一礼をしてすぐに立ち去ろうとした。しかし、この第二会議室の出口に向かおうと動き出した足を急に止め、遠藤に向かって振り向き、口を再び開いた。

「そういえば、貴方の周りではよく人が事故や殺人で死んでしまいますね。まるで祟られているみたいに。不思議ですね。」

 渡部のこの発言に遠藤は少し笑みを浮かべていった。

「確かに私も不思議に思っていますよ。でも、まあ別に仕方が無いんじゃないですか。死ぬ時なんて誰にでも来るものですし。」

 「全くその通りですね。」と言って渡部刑事は巡査長を連れて去って行った。そして第二会議室は遠藤明ただ一人となった。

 遠藤は「ふう。」と一息つくと、どうにかして全てうまくいかないものかと考えながら、それまで座っていたパイプ椅子から立ち上がって部屋を後にするのだった。


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