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蔵岡警察署では一つの問題が起こっていた。
今回の連続殺人事件を担当していた足立司警部が一昨日から行方不明になったのである。
「14日、足立警部が非番だった日です。その日の夜遅くに彼の奥さんが、警部が家に帰らないと警察に電話してきまして、昨日に数名の警察官が捜索に当たったのですが、そうしたところ彼の車が山中で見つかったそうです。その後、付近を捜索しましたが手がかりもなく、状況から警部は何らかの事件に巻き込まれたと推測されました。」
「そうですか。ありがとうございました。」
足立警部の捜索に当たっていた女性警官からの報告を聞いた渡部斉紀刑事は少し黙った後に再び口を開いた。
「警部が失踪する前に何か変わったことなどはありませんでしたか?例えば警部が何かに気づいた様子だったとか、誰かが警部を訪ねてきたとか。」
「そういえば、一人の女性の方が二回ほど足立警部と渡部巡査部長、あなたを訪ねてきましたよ。」
「なんだって。聞いた覚えがないですよ。」
「いえ、私ではなく受付の警官が案内したのですが、毎回お二人のところまで案内したらすぐに帰ってしまったとのことでした。人違いだったと言われたとのことでした。」
「二回も人違いの訳がないでしょう?何をやってるんですか、受付の人は。」
「一回目と二回目で別の受付の警察官が対応したため、そのようなことになってしまったのだと思います。」
この話を聞いた渡部刑事はすぐに気がついた。
「わざと受付が別の人間になった時を狙ったな。おそらくその女性は遠藤明だ。間違いなく遠藤明は足立警部の失踪に関わっているはずだ。」
渡部刑事はすぐに近くにいた彼の友人でもある伊東恵巡査長に声を掛けた。
「遠藤明に足立警部が行方不明になった八月一四日のアリバイを聞きに行きます。」
渡部刑事が蔵岡警察署から出て行ったことを見届けると、彼に足立警部失踪の近況報告について訪ねられていた女性警官はすぐに一人の人物に電話を掛けた。
「お忙しいところすみません。たった今、渡部刑事が署から出て行きました。間違いなくあなたのところに足立司警部失踪時について聞きに行ったのだと思います。以前、貴方に言われていたとおりに、貴方が警部を訪ねに来ていたことを話しました。あとのことはよろしくお願いします、遠藤さん。」




