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死期予見  作者: 本郷真人
第三章
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(4)

 二人の刑事達が帰った後、八雲製作所では今回の安藤興介殺害事件について盛上がっていた。勤務時間中もこそこそと事件についての噂話が出回っていたが、昼休みになると社員達の会話は全て事件のこと、午前中の二人の刑事による聞き込みの話題で持ちきりだった。

 昼休みの社員食堂のテーブルの一つで八雲製作所第二営業部の社員達が昼食を取りながら今回のことについて話していた。メンバーは望月薫、今井佳枝、丸山周平の三人である。

「安藤課長が殺されたことで警察がうちに来たけれど、経理部の遠藤さんが彼らに呼ばれたみたいだったけど、どう思う?」

「別になにもないでしょう。酔っ払った安藤課長が遠藤さんに絡んだだけで、それほど問題でも無いんじゃないですかね。」

 望月薫が切り出すと、丸山周平がすぐにそう答えた。そしてその二人の会話に対して今井佳枝が話してきた。

「でも気になりますよね。あの温厚な安藤課長が、お酒が入っていたとはいえ部下を怒鳴るなんて。経理部の遠藤さんとの接点なんて少し前の伊東ゼネコンへの見積書の作成ぐらいしかなかったと思いますし、遠藤さんが何かしでかしていたとも考えにくいですし。」

 この今井の発言に対して望月も丸山も同意してうなずいた。望月、丸山、今井の三人は安藤興介と一緒に、片手の指で数えられるほどではあるが酒を飲んだことがあった。それ故安藤興介という男が人並み以上にお酒に強いことを知っており、何か原因が無い限りはほぼ接点が無い社員を大声で叱責するなどしないと考えていた。

「やっぱり安藤課長と遠藤さんの二人、何かあったんじゃないですかね。」

 望月がそう言うと、今井が何か思いつめたような顔をして話し始めた。

「ここだけの話なんですけれども、安藤課長にも黒い噂みたいなものがあったんですよね。」

「安藤課長に黒い噂?」

「はい。安藤課長が今の役職についてから、彼にたてついたり、仕事ができないような社員がどんどん飛ばされていったんです。後者の方は仕方がないと思うかもしれませんが、彼が課長になってからとそれまでの比じゃないくらい部署異動が増えたそうで、彼が自分の好き嫌いで人を動かしていたんじゃないかって一部の人たちの間で噂になっていたんです。」

 この今井の話を聞いた二人は、その内容にはまだしっかりとした確証を持てはしなかったが、安藤興介という人物の印象がそれぞれの中で変わっていくのを感じていた。

「もしそれが本当で他にも知っている人がいたとしたら、僕たちの知らない間に課長は結構恨みを買っていたのかも知れませんね。案外、今話題の殺人鬼が犯人ではなくて、以前会社にいた人とかの身近な人だったりするかもですね。」

 望月がそう言うと今井も同意した。そしてふと思い出したように今井は言い始めた。

「私たちは警察ではないのでなんとも言えませんが、そういう可能性もありますよね。でもこういう話をしていると、本当に警察の人達と遠藤さんの会話が気になりますよね。さっき食堂に来る前に清掃のおばさん達が結構大きな声で話していたんですけれども、警察の人達は帰っていくときに非常に怒っていたそうですよ。」

 この今井の発言に対して望月と丸山の二人は目を丸くして顔を見合わせた。それから彼ら三人の昼休憩の話題は遠藤明と刑事達の会話で何があったのかになり、それぞれ好き勝手に考察して盛上がっていた。

 この三人の会話が彼らの間だけで収まっていればよかった。しかし八雲製作所の食堂は席が50近くあり、そしてこの日も多くの社員達が利用していた。むやみやたらと人を詮索するものではないということを、後日、三人はその身をもって知ることになってしまった。


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