レストラン‘デュック‘
カレーが食べたくなった時に書いた作品です。
目が覚めた。
もうコタツから出たくない寒さだった。
うつぶせになって寝ていた。
コタツからは顔を出して、首を出したまましばらく続けた。
ちょっと仰向けになってみたが、少し落ち着かない。
時計を見るとAM11:00になっていた。
コタツから台所へ向かい、流しの蛇口をひねり顔を洗った。
飯にしようと台所を見たが、鍋は昨日片付けたので残り物は無かった。
冷蔵庫を開けた。
すると空っぽだった。
またコタツに入った。
今度は体半分を入れ仰向けになって天井を見た。
30分が過ぎた頃、体を横に向け畳から廊下を目で追った。
そのまま外を見た。
地面に雪が積もっている。
まだ降り続いていた。
庭の松ノ木に雪が乗っかっている。
目を左にやると猫がいた。
こっちを見て鳴いていた。
その猫は近所の洋食屋で飼われている猫だった。
ふと、カレーライスが頭に浮かんだ。
頭に食べ物のイメージが出ると腹が減ってきた。
そしてカレーが食べたくなった。
レトルトは食べ飽きたし市販は一から作るのは面倒くさい。
そう考えると外食になった。
時計は12時を過ぎていた。
財布を持って玄関へ向かった。
戸締りをしてから玄関を出ると、庭の猫が気になった。
玄関横の小道を通り、縁側の方へ抜けそっと覗いた。
猫は置石にちょこんと座っていた。
こっちに気づくと小さく鳴いた。
その体をつかんで腕に抱き上げた。
今度は大きく鳴いた。
しばらくしてから降ろしてやり、元来たところを通って玄関前に戻った。
視線が下に降りた。
ポストを見るとチラシが入っていた。
それは洋食屋の割引券だった。
財布の中に畳んでおくことにした。
少し雪が強く降ってきた。
やっとのことで、洋食屋へと足を向け歩いた。
後ろでは猫が後を着いてきていた。
洋食屋は家から徒歩で五分くらいの距離にあった。
赤山通りと呼ばれる街道筋を歩いて、生垣と木々の囲まれた住宅街の一画まで行った。
ここで一週間前のことを思い出した。
友達の家でカレーパーティーがあった。
カレーパーティーというのは、友達メンバーの誰かが誕生日を迎えた時にみんなでお祝いすることだった。
料理部で、全員カレーライスが大好きだった。
パーティーでは特別なカレーが出された。
中には凝りすぎて、冒険心たっぷりの味になったりするのだった。
あの日のカレーもひどかった。
具や盛り付けが奇抜すぎて、手をつけたくなくなるほどだった。
それでも飲んだり、ゲームしたりだったから楽しい時間だった。
みんなで祝うことは楽しいのだが、もうちょっとカレーの味はしっかりした方がよかった。
店の前まで来た。
店構えがスナックかバーのような雰囲気で、看板の蛍光灯の文字はイルミネーションされていた。
この辺りは、高層マンション群が並び建つ、再開発された場所と違って時が止まっていた。
しばらく突っ立っていると、あの猫が店に入りたそうにこっちを見て鳴いた。
ドアを開け、中に入った。猫も後に続いて付いてきた。
店の入り口で少し明かりが暗く感じた。
昼時なのでお客は結構入っていた。
店員が席まで誘導した。猫は店の奥へといなくなった。
店内奥壁側のテーブルの席に着いた。
壁には額が掲げてあった。
天馬が、厚い雲から地上に向かって駆け下り、それを地上の農夫が見ているのだった。
椅子に座ると目線上で、ガラスに装飾を施されたランプが吊り下げられていた。
メニューを開いた。
定食からオムレツにハンバーグへ、そしてカレーライスと眺めていった。
しばらく迷ったが、ここはやはりカレーを頼んだ。
店員に割引券を渡し、お水を貰った。
店員がスプーンとフォークをテーブルに置いていった。
しばらくして店員は厨房の方へいなくなった。
待つ時間は退屈だった。
指を動かしたり、キョロキョロしたりした。
ゆっくり周り眺めてみた。
日当たりの良い窓側のテーブルで、よく整った形の服を着た老齢の夫婦がいた。
その向かいにはケータイをいじりながらも会話が弾み男女がいた。
トイレに近い所にノートPCを打ちながら、コーヒーを飲むスーツ姿の男がいた。
厨房の近くには口を開け、後ろのめりになって椅子で寝ている中年の男がいた。
店の真ん中では暖かそうなスープを飲む母親に、赤ん坊が物欲しそうな顔で腕に抱きつこうとしていた。
皿をもった店員がこっちに来た。
いよいよカレーの登場だった。
横から皿が出た。
目の前にふわっとした卵がかかったカレーが出てきた。
ルーがたっぷりとご飯が少し残るぐらいにかかっていた。
ふかしたジャガイモとにんじんがルーのかかっていないところに置かれていた。
そして、福神漬けも少々添えてあった。
いよいよと、スプーンで卵からすくってみた。
すると湯気があがった。
皿の底までスプーンを挿し、ご飯とルーがこぼれないようにゆっくりと上げ、口に運ぶ。
スープのように中へ広がっていき、同時に熱々のご飯とルーが合わさってうま味が増してきた。
この感じが至福の時だった。
ふかしたジャガイモとにんじんはフォークで丁寧に切っていき、口に入るくらいに切っておいた。
そして二口目に卵がかったルーの上に載せ、またスプーンでゆっくりと口に運んだ。
ご飯とルーは同じ比率で食べていった。
米粒一つ、ルーと一緒に食べ進めないと残った福神漬けに申し訳ない。
じっくりと堪能した。
客が少しずつ減っていなくなった。
最後の米一粒一粒と福神漬けを口にかき進めた。
最後にスプーンを皿に置き、完食した。
店員が側に立って待っていた。
閉店の時間だった。
食したカレーライスは三十皿になった。
店員の足元で猫があくびをかいてこっちを見てきた。
レジでお会計の時、おつりと一緒にあの割引券を受け取った。
店員は送り迎えに丁寧とお辞儀をした。
店のドアを開けてもらった。
それと同時に、足元で猫は「にゃー」と声を鳴らした。
終り。