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幕間 ヴァンピールの日常-その参

 常世の国『オーエント』において情報伝達の専らは新聞や手紙、書類など郵便機構が主軸である。郵便機構の良い点として伝達される情報の真偽はさておき確実に書かれた情報を届けるという点だ。逆に悪い点は情報の発信源と受け手の距離が離れれば離れるほど情報が伝達される速度が遅くなることだ。しかし、伝達される情報の確実性というのは案外馬鹿に出来ないもので、オーエントでは都市と都市との情報のやり取りでは確実性のある郵便機構が担っている。(勿論、点滅信号という緊急時の迅速に必要最低限の情報伝達する手段は確立されてはいるが、それは最低限の情報量でしかない。)

 しかし、都市内。もっと焦点を絞って地区と地区とのやり取りや日常生活において郵便という伝達手段は些か不便である。ゆえに時間にゆとりがある時か、何か特別なことや重要なことを伝達する時にしか使われない。

 では、普段はどのような手段で情報のやり取りをしているのか。実はこれがこの国独自の形態であり、他国の者が知ると誰もが驚愕し関心するのだが、大半の国は真似が出来ない手段なのである。

 その伝達手段とは風の精霊を介した音(大半は声)の伝達である。要するに精霊魔術を用いるのである。ヴァンピールは魔術素養に優れた種族のためどんな系統の者であれ、精霊魔術は扱うことが出来る。風の属性を持つ者か精霊との親和性の高いノーンの系統の者であれば音の伝達など容易くできる。(伝達距離は使用者の素養に左右されるが)一般的にコミュニティ、職場などには風の属性が持つ者が必ず一人はいるのでその者が情報のやり取りを担うのである。この手段が他国に真似されない理由の一つはオーエントのように国民全てが魔術素養のある人間ばかりはないため、真似をしたくても出来ないという点と例えその問題を解決してももう一つ問題で断念せざる得ないのである。

 そのもう一つの問題とは情報の確実性である。



――― ペタ地区交番所の場合 ―――



「出前がきたわよ」


 と篭から各々の注文していたメニューを取り出していく褐色肌に赤髪の女性警官こと、フラジリア。ここペタ地区交番ではノーンである彼女が出前や情報のやり取りを担っている。フラジリアの場合、地区交番の責任者であるがこの手の当番は一般的に階級や役職はあまり考慮されない。明確に出来る・出来ないの差があるからだ。ペタ地区交番所ではフラジリア以外の人間は風の加護を得ていないので、自然に彼女が受け持つことになった。(風の加護を持つ者が複数いれば階級や役職で決まる場合はある)


「カタハはクラブサンドセットね」


 フラジリアは金髪碧眼の部下、カタハに注文した品物を手渡した。カタハは礼を述べ、商品を持って自分の席に戻って行った。彼女は警官の体型が分かりずらい服装であるのにも関わらず、その妖艶な容姿は同性であるフラジリアの気を惹いてしまう。流石はドゥルグと言うべきか。

 しかし、魅惑や誘惑を得意とするドゥルグの彼女だが異性、つまり男性に対しては潔癖症の毛があり、毛嫌いしている傾向がある。特に最近は同僚による痴漢騒動のおかげでそれに拍車がかかっている。

 上司としてこれは何とかしないといけないなと思いながらも、その有効な手立てが思い浮かばないのが現状である。


「部長、僕のは?」


 と尋ねてきた童顔で実年齢より幼く見えてしまう男性警官、エトランゼ巡査である。かれは犬に化けれるタルウィである。


「あるわよ。はい、肉丼」

「僕が注文したのは地底エビのピラフです!!」

「でも、篭には後私の分しかないし、コレがあなたの分よ」

「この前もタマゴサンドを頼んだら焼き肉定食になってました……」

「あら、スタミナがついていいじゃない」

「どうして僕の注文だけ肉系のメニューに変化するんですか!?」

「さあ、そんなこと私に言われても。ちゃんと私は伝えているのよ。たぶん、精霊が犬に化けれるあなたに気を遣ったんじゃないの?」

「いらぬお節介です!!」


 と不満を爆発させるエトランゼ巡査であった。



――― ザール地区交番所の場合 ―――



「テュリア。そろそろ出前」


 と部下に命じるカルナヴァル。ここザール地区の場合、ノーンであるテュリアが出前などの情報のやり取りを担っている。

 テュリアは「はいっ」と頷き、皆のメニューを取り始めた。


「俺、肉丼」


 とカルナヴァル。


「僕はミートドリアにするよ」


 とノットン。


「吾輩は地底キノコのパスタセットで」


 と黒猫部長ことイストリア。


 皆の注文を取り終えたテュリアは「わたしはクラブサンドセットにしよ」と呟き、風の精霊に出前をお願いするのであった。



――― 数分後 ―――



「先輩、出前が来ました」

「おっ、随分と早いな。今日は」

「そうですね」


 と呟き出前の篭から皆が注文したものを取りだすテュリア。


「トンカチ、金槌、ハンマーです」

「ああ、これでお前の穴の開いたロッカーを塞ぐことが出来るな……、って違う!!!」


 感情が高ぶったカルナヴァルは手にしたトンカチ(金槌でも可)をテュリア目掛けて投げつけた。テュリアは反射的に(←おそらくこれまでの人生で最も俊敏に)躱し、目標を見失ったトンカチ(金槌?)は空しく交番の壁にめり込んだ。


「トンカチでロッカーの穴を塞げても腹は膨れない!! 金槌で腹は膨れない!! ハンマーで腹は膨れない!! 俺の肉丼はどうしたんだぁー!!」


 と声を張り上げるカルナヴァル。空腹のためいつも以上にテンションがおかしい。


「僕はむしろ金物屋に出前が存在したことに驚きだけどね。あっ、これって出前というよりむしろお使いかな?」


 と出前を届けてきた金物屋に感心するノットン。


「しかもコレ、品数から考えるに一人分のオーダーが入って無いにゃ」


 と妙に冷静な意見を述べる黒猫部長。


「そんなことはどうでもいい!! せめて食べ物をオーダーしてこいよ、テュリア!!」

「そんなこと言ったって、これは完全に風の精霊さんの気分(?)次第ですよ!!」


 と不毛な言い争いが勃発するザール地区交番所であった。



          ―――・・・―――・・・―――・・・―――



 精霊の用いた伝達手段の確実性については色々と仮説を建てられているが、まだ確立はされてない。

 伝達される情報が歪められる原因が術者にあるのか、環境などの外的要因なのか、はたまた精霊の気まぐれなのかも定かではない。


 

 

 

次回、第16話のタイトルは「やってみよう!! 運動会!?」です。ギャグ回を予定してますのでお楽しみ下さいませ。


更新はこれまで通り、一ヶ月後予定してますが遅れる場合は活動報告にてご連絡いたします。


では、ご意見・ご感想・ご質問・誤字脱字のご指摘をお待ちしております。


以上、作者からでした。


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