表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/23

第15話 追憶を携えて来る者(後編・アナザーサイドストーリー)

一部残酷描写があります。注意してください。出来るだけ不快にならないように配慮致しましたが、実力不足で不快させてしまうかもしれません。

 兄は誰からも好かれる人間だ。

 それは優しいとか、親の言うことをよく聞き守る子とかのそういう評判のようなものでなく、自然と人の輪に入り込んでしまう人物であったという意味だ。

 兄はお世辞にも品行方正という言葉の角をとり、ついでに押し広げても当てはまらない性格であった。むしろ破天荒とかハチャメチャとかの言葉の方が当てはまる。親の言うことは聞かない、夜遊びはする、悪戯だってやる(←この間は隠れんぼに夢中になるあまり、三軒先の家の屋根に穴をあけて隠れたそうだ。当然、その後お母さんにこっぴどく叱られていた)そんな兄だが何故だか村の人々には受け入れられていた。子供は悪戯するほど元気が一番という感じで。いくらお母さんが鬼の形相で叱りつけても、兄は反省することなくケロッとした様子で新たな問題を引き起こす。そしてまたお母さんが叱りつける。そのイタチごっこが繰り返される毎日であった。

 兄の周りには自然と人が集まった。木こりの三男坊であるザックおにいちゃんと猟師の娘のミリアおねえちゃんは兄と最も親しく接していた人物である。二人はヒト族で村で生まれた人間であった。私も兄も生まれる前の話なのでピンとこないが、お母さんの話だと私たちは移り住んできた人間とのことだ。けれど、兄と二人の様子を見ているとそんな隔たりは見られなかった。二人は兄が日差しを浴びると倒れてしまうという兄の普段の行いを知ってる人間なら信じられない体質であることを二人は信じていた。だからといって特別扱いをしてたわけではない。

 ある時、照りつける日差しの中、兄がいても二人は川で行水をしていた。兄はローブを脱げないので川岸でつまらなそうに釣りをしてたのが印象的であった。

 一見、二人の配慮の欠けた行いに見えるが兄は釣った魚を器用に捌いて、火を起こし、事前に採取した素材を用いて調理をしていた。香草やキノコで調理した兄の料理は食べざかりの二人には目の前にぶら下がるご馳走ヨロシク、羨ましいそうに眺めていた。兄は二人の前で自ら作った料理を一口食べ、「一芸を見せてくれたらやらんでもないぞ」と告げていた。この頃から既に兄の性格はひねくれていて、今の性格の一部を垣間見せていた。

 意外という印象はあるかもしれないが兄は分け隔てなく人と接する人間である。それゆえに村のみんなに受け入れられていたのかもしれない。そんな兄でも苦手としている人物は存在する。一人は私のお母さんである。お母さんは兄も息子だというが兄は何故か母のことを「おばさん」と言い表していた。そう言われた時のお母さんの表情は何故か複雑なものになる。当時の私はそれはお母さんの年齢を考慮した(←ヒト族に即して言えばおばあちゃんと呼んでも余りある年齢だが)上での兄がお母さんを皮肉った言い方をしたのだと思っていたのだが、今考えてみればこの頃には兄は自分とお母さんとの間に血の繋がりが無いことを知っていたのだろう。

 そして、もう一人兄が苦手としていた人物がいた。それが私であった。

 別に仲が悪かったわけではない。兄からしたらお母さんと血の繋がっている私と血の繋がってない自分との距離に悩んでいたのでは無かろうか。顔を合わせれば自然と会話を交わすし、喧嘩だってした。けれど、どこか距離がある。それが歳の差や性別の違いという根本的な差から生まれるものでなく、心理的なものであったことを幼いながらも私は感じとっていた。

 一度、お母さんに聞いたことがある。私は兄に嫌われているのか、と。

 お母さんは一瞬驚いた表情を見せたが、直ぐにほほ笑み、私の頭を撫でながら答えてくれた。


―― イゥプリカ、あなたはあなたが思っている以上にカルに想われているわ

―― どうしてそんなことが分かるの?

―― あら、分かるわよ。ねぇ、イゥプリカ。あなたはいつも本を読んでいるわね。それはどうして?

―― 面白いから。

―― ええ、そうね。本を読むことは面白いわよね。じゃあ、その面白い本はどこから持ってきているの?

―― お父さんの書斎から。


 書斎などというが実際は部屋に本を詰め込めるだけ詰め込んだ物置のような部屋である。奥にあるうず高く積まれた本は下手にとると本雪崩が起きて危ないから、私は奥に入ることをお母さんに禁じられていた。仕方なく私は部屋の手前に無造作に置かれている本を勝手に引っ張り出して、それで満足していた。


―― あなたが読んでるその本はカルがわざわざ書斎に入って、読めそうな本をあなたが取れるようにカルがわざと置いたものなのよ。


 知らなかった。言われてみれば本を取り出す時に困ったことはなかった。いつも部屋に入って直ぐに興味を惹くような本が転がっていたからだ。


―― お兄ちゃんはどうしてそれを言わないの?


 お母さんはクスクスとほほ笑みながら私をギュッと抱きしめ、私をあやすように語りかけた。兄はお母さんを鬼かオークの類だと信じて疑わないが、普段のお母さんはちょっと儚げな印象だけど、私や兄に愛情深く接している。私はお母さんに抱きしめられるのは嫌ではなく、むしろ不思議な安心感があって心地がよく、いつもお母さんに寄りかかってしまう。


―― 男の子はね。素直じゃないのよ。女の子に優しいとかの言葉を言われるのが恥ずかしいの。ふふふっ、お父さんもそうだったわ。

―― どうして恥ずかしいの?

―― どうしてかしから? ママでも分からないわ。そういうものなのよ、男の子って。だから、イゥプリカも女の子になりなさい。

―― 私、元から女の子だよ。

―― ええ、そうね。だけど私が言ったのは男の子の優しさを知る女の子なのよ。パッと感じたことが全てじゃないの。それを理解した上で男の子の優しさに甘えなさい。

―― 甘えていいの?

―― ええ、勿論よ。


 とお母さんは寄りかかった私をあやしながら頷いた。この頃の私にはお母さんの言った言葉の半分も理解できず、ただ兄がひねくれ者なんだなと漠然と思うだけであった。



 ある日の早朝。私はいつもより早く目が覚めた。まだ太陽が昇って間もないのか辺りはほのかに薄暗い。ベッドから起き、すぐに私の傍で寝ていたお母さんの姿が無いことに気がついた。眠気を完全に払えず低迷する思考の中、兄を叱りに行ったんだなと思った。その証拠に兄の姿も見当たらない。

 私はお母さんを探す為にローブを羽織った。おそらくお母さんも兄も外にいる。ローブを羽織ったのは外に出る時は必ずローブを着なさいとお母さんに言われたからだ。

 家を出ると小鳥のさえずりが耳に入り、それから徐々に明るくなってくる景色とうすら寒い空気が私の意識を覚醒に導ていく。

 家の周囲を見渡し、兄とお母さんの名を呼び掛けるが反応が無い。この辺りにはいないようだ。仕方なく私は家を離れ、兄とお母さんの探索に出る。

 ほどなくして、兄の声が耳に入ってきた。声のした方へ足を進めると民家と民家の合間に隠れるようにして広場の様子を窺う兄とザックおにいちゃん、ミリアおねえちゃんがいた。


 「麓の方で竜がでたらしいぞ」


 私はこの時、竜という単語に妙に惹かれてしまった。何故ならお父さんの書斎から引っ張り出される本には竜に関するおとぎ話がいくつも記されていたからだ。興味がある。竜というのがどんな姿をして、どんな存在なのか。雄大にして大陸の守護者として在るのか、それとも大陸最凶の破壊者として在るのか。知りたかった。

 私は夜に村を抜けて出して竜を探しに行くという兄たちの会話を隠れて聞きいっていた。こっそり付いていくために。



         ☆☆☆☆☆   ☆☆☆☆☆   ☆☆☆☆☆



  子供が出来てからの数年間はそれまでの何百年よりも貴く感じる。カルナヴァルやイゥプリカが生まれた最初の数年は特にせわしなかった。子育ての苦労や大変さは周りの話から知っていたがいざ自分の身になってみるとそれがほんの一部の話しであったことが分かる。右も左も分からない子育てに挫けそうになることが何度もあったが、その度に村の子育て経験者に相談にのってもらった。夜泣きやおしめなどの苦労を越え、自らの力で子供が立ち上がった時の感動や初めて自分のことを「ママ」と読んでくれた時の感喜は未だ忘れられない。

 ただ子供の成長は早いものでまだ幼いと思っていた長男もいつの間にか十歳になり、お腹を痛めて生んだ長女でさえ六歳と自我が芽生えつつある年頃になっていた。近頃、長男のカルナヴァルは自分との間柄に意識するようになり「お母さん」と呼ばなったことに一抹の寂しさを感じたが、それでも可愛い自分の息子だという思いに揺らぎはない。

 その日、行商人に以前から頼んでいた薬・疑似血液製剤を受け取るだけのはずであったが少々事情が変わってきた。

 竜が現れたかもしれない。

 人間にとって竜は災厄でしかない。龍災という言葉があるように竜という個体そのものが余りに巨大で、強大な力を持っている。彼らは普段、雄と雌で別々の生息圏を持ち、大陸東部のロート山脈には雄の竜族が、大陸西部のバース山脈には雌の竜族が住んでいる。竜族は百年周期で繁殖期を迎え、雄の竜族が一斉に西部のバース山脈へと移動を始め、雌の竜族の住まうバース山脈に一定期間滞留し、またロート山脈に戻っていく。これが竜族の大移動である。その際、ロート山脈とバース山脈を最短で結ぶ通り道を『竜のドラゴンロード』と呼び、もしそこに村や集落、街があればほぼ間違いなく壊滅する。大移動の際、竜たちは一塊の集団で移動するのだが稀にその集団から外れてしまう竜がいる。集団から外れた竜は目的地のバース山脈を目指すが『竜のドラゴンロード』から外れてしまっている。そのため、はぐれ竜の進路に村や町があると壊滅的な被害が起こるのである。これが龍災である。龍災は百年に一度しか起きないが、地震・洪水などの天災と同じように考えられている。

 行商人が言った一言は山奥に存在するエラト村の存亡に関わる一言であった。

 しかし、村に竜という言葉がもたらされた時、村人たちの反応は非常に淡白なものであった。エラト村は『竜のドラゴンロード』から大きく外れたところにある。龍災という言葉を知れど、体験した者がいないのである。その上、龍災は百年に一度しか起きないため村の危機を告げた行商人自身も体験したことがなく、知識でしか知らない危機を伝えているため緊迫感がなかったのである。そのため、普通の村なら村を挙げての大騒ぎの事を伝えられても何か大変なことが起きたぞぐらいにしか伝わらなかったのである。

 考え方を変えればまだ確証の得られない段階でパニックにならなくてよかったかもしれない。が、危機感がないのは問題である。もし、本当に竜が存在するのならば荷物をまとめ村を捨てねばならないのだから。

 ともかくまずは行商人の告げたことの真偽を確かめることである。村で竜族を知っているのは何百年と生きた自分だけ。竜とはオーエントが建国される前に一度、建国されてから二度遭遇している。三回の遭遇の内、戦闘になったのは二度。二度の戦闘とも竜を撃退しているが一人で成し得た功績ではない。あくまで軍という集団の力があればこそである。一人で同じ結果を出せと言われたら、首を横に振るであろう。

 陽が辺りを照らしていく。木々の間から零れ落ちる陽差しが辛うじて馬車が通れる山道を照らすと同時に自身にも浴びせてくる。村人が心配したようにヴァンピールにとって日差しは毒である。特に純血になると日差し除けのローブを羽織っていても昼間出歩くのは自殺行為に等しい。だがヴァンピールの6系統の中で唯一、欠陥した系統といわれるアズの自分にはそれは当てはまらない。ローブを常に羽織っているのは自身の純血を示す金髪碧眼を際立たせないためである。(副次的目的として子供にローブの着用を徹底させるためというのもあるが)

 だからこそ進んで竜の調査に名乗り出ることができたし、直ぐに現場である麓に下ることができた。今、日差しが高く昇っている昼間なのに関わらずだ。

 

「これは……」


 思わず声が漏れる。行商人の言うように麓の小道の外れた場所が現場であった。行商人は小道の外れた場所と口にしていたが現場に差し掛かればその言葉がいかに些細なことか思い知らされた。

 一瞬、道が開けたと思わんばかり焼け焦げ、不意の広がりを見せる山肌。生い茂っていたであろう草木は皆焼き払われ、炭の黒一色と焦げた匂いが鼻に着く。

 話に聞いたよりも辺りは酷い有様であった。何本もの木々がなぎ倒されたのであろう。根を差して焼かれるのでは無く、根っこを引き抜かれ炭にされていた。

 流石にこの有様を見せつけられては竜の存在を疑わざるをえない。

 魔女はすっかり焼け野原体を見せる現場に足を踏み入れた。もし、竜族がこれを行ったのなら何らかの原因があると睨んだからだ。

 竜族は破壊者としての側面もあるが理由無き破壊者ではない。彼らには大陸の守護者という側面もあるため特に自然、山や森といったものをむやみに破壊したりはしない。

 彼らがこの手の破壊を行うときは日々の糧を獲るとき。つまり捕食のことである。龍災の要因の大半はコレである。彼らは満足するまで糧を求め破壊の限りを尽くす。

 もう一つの要因は自衛のためである。自衛といっても彼らを脅かす存在など殆ど存在しない。が、人間とは業が深い生き物で彼らから得られる鱗や爪は非常に高価に取引されるためソレを目的で竜に挑む者がいる。そういった手合いをあしらう為、結果的に周囲が破壊されてしまう。

 この場所が焼き払われた理由が前者であれば村に掛かる危険はかなり高いものになる。後者であれば前者に比べればリスクは低い。

 せめて何がしかの手がかりがあれば、今後の指針にすることができる。そう思い、焼け焦げた大地を調べることにした。

 見渡す限り、炭と灰ばかりの光景。そんな中、焼け焦げた屍を発見しても驚く事は無かった。人の形を辛うじて残したその燃えカスはかつては人間と呼ばれた生物であっただろう。黒焦げとなった屍が全部で四体、そのほとんどが五体欠けることなく焼き尽くされている。

 もし捕食が目的としたものなら屍の部位部分が欠けていて、食い散らかした肉片も発見しているはずである。しかし、捕食をしたらしい痕跡は見られなかった。


「竜に挑んだ者の末路ね……。決めつけは危ないけど、だとしたら村は大丈夫かしら」


 辺りを見渡し、目新しいものが無いことを確認したあと四体の屍を弔い終わり、後にしようとした時であった。

 大地の精霊たちが私に弔ってほしい遺体がまだあることを教えてくれたのは。彼らは大地に生きる者には生命力を与え、逆に死した者たちを自らの肥やしとする存在である。彼らとの親和性が高いと時より彼らからこうして欲しいとお願いされることがある。お願いを聞くと見返りがあるわけではないが、彼らが気を利かせて欲しい情報を進んで教えてくれる時がある。それは明日の天気であったり、嵐がくるなどの割と重要なものであったり、カルがイタズラをして隣のおばちゃんの癇癪をかったといった些細なものまでだ。

 精霊たちが案内したのは竜が焦がした大地から少し外れた茂みであった。


「ひどい……、どうしてこんな遺体があるの……」


 精霊たちが案内した遺体は女性であった。ただし竜によって殺されたものでは無い、衣服を剥がされ強姦されて亡くなったと一目で判るものであった。




         ☆☆☆☆☆   ☆☆☆☆☆   ☆☆☆☆☆



 こんな血が流れて無ければいいのに……。

 私が生まれてこなければよかったのに……。

 そうすればお母さんは背負わなくいい苦労をしなかったのに。

 私が生まれてからお母さんは肩身の狭い生活を強いられてきた。ヴァンピールとの混血の私を生んだせいで。

 祖父母から勘当され、周りからは白い目で見られる。その上、私は日差しを浴びるだけで体調を崩し倒れ、お母さんを唯一支えてくれていたお父さんは街の人との些細な行き違いで殺された。

 お父さんはヴァンピールだったけど、昼間でしかも全身に油をまかれ焼かれてしまっては……。お母さんはお父さんの最期を知って悲しむ間もなく、私を連れて街を出た。

 次にお父さんと同じ目に遭うのは私かお母さんだということを窺えたからだ。

 真夜中、人目を気にしながらこっそりと街の外壁を抜け出した時、お母さんは私に向かって言い聞かせるようにいった。


「大丈夫、大丈夫よ。ここから少し離れたエラト山に魔女が住む村があるって噂できいたことがあるの。きっとそこなら私たちでも暮らしていけるはず……」


 それは私に言い聞かせるというよりも自分に言い聞かせているようだった。きっとお母さんもすがるような思いで言っていることなんだろう。

 それから私たち母娘は夜通し歩き続けた。魔女が住むというエラト山に向かって。

 エラト山にたどり着くまでは順調だった。昼間ほとんど動けない私のために母は昼は日陰を見つけ休み、陽が落ちてからの大半を移動にあてた。

 だからエラト山に着いた時も当然、真夜中であった。それがいけなかった。

 運悪く村を襲おうとしていた山賊たちと遭遇してしまったからだ。

 山にたどり着き安心しきった私たちは逃げる間もなく、山賊に捕まってしまった。

 お母さんは私の目の前で身ぐるみ剥がされ、何人もの男たちに抑えられながら犯された。

 お母さんは必死に私だけでも逃がしてくれるよう懇願したが、これから村を襲おうと考えている山賊がそんなことを許すはずが無く、私にもその手を伸ばしてきた。山賊たちの気がお母さんから私に向いたその一瞬をお母さんは見逃さなかった。

 お母さんは自分を犯していた山賊の顔を思いっきり引っ掻いて拘束を振りほどき、私を取り押さえていた男に掴みかかっいた。

 お母さんと取っ組み合いになったことで私への拘束が解かれ、それを見たお母さんが「走って!! 逃げて!!」と必死に叫んだ。

 私は言われるがままに駆け出したが知らない山道に足を取られ転んでしまい、他の山賊に取り押さえられてしまった。

 お母さんは「そんな……」と悲壮な声を挙げ、顔を引っ掻れた山賊に顔殴られた。

 何度も、何度も、何度も。

 お母さんがピクリとも動かなくなるまで。

 私はただお母さんお母さんと泣いて叫ぶことしか出来なかった。

 山賊の一人が私の衣服に手を伸ばして来た。きっとお母さんと同じことを私にするつもりなのだろう。

 犯して殺す。

 お父さんは気に入らないから殺された。

 お母さんは私を逃がそうとして殺された。

 私は犯されて、殺されるの?

 お父さんもお母さんも何も悪いことしてないのに……。

 どうして死んじゃうの?

 私が生まれたから?

 私がヒトとヴァンピールとの混血だから?

 なら、私を先に殺してよ。お父さんもお母さんも関係ないじゃない。

 山賊が乱暴に私の衣服を引き裂いた。

 何で何でという自問自答の連鎖がカチリと引き裂かれた。

 どうしてお父さんもお母さんも死んじゃったの?

 それは私がヴァンピールだから。

 ヴァンピールだから私も死んじゃうの?

 だってヴァンピールは人じゃなくて兵器だもん。みんな口を揃えて言うよ。化け物、魔族、吸血鬼……。

 ねっ、人じゃないでしょ。

 私、もう嫌だ。何もかもどうでもいいよ……。

 ならヴァンピールはヴァンピールらしく、兵器は兵器らしく、化け物は化け物らしく人を殺しましょ。


ドクンっ!!


 発作のように胸が揺れた。私を衣服を引き裂いた男が私が怯えているのだと勘違いして下品な笑みを浮かべた。

 だが直ぐに私の身体の変化に気付き顔を青ざめた。

 全身が鱗に包まれていく私。山賊の一人が「殺せ!!」と叫び、慌てて私の胸にナイフを突き立てる男。

 ガチンっと金属音が辺りに虚しく響く。

 私は知っていた。この鱗がナイフなどものともしないことを。

 私は知っていた。私が今から化けようとしている存在が大陸最強と謳われる存在であることを。

 両腕両脚が空気を詰めたように何倍にも膨れ上がった。続けて胴体、首、頭と同じように膨れ上がった。

 気づいた時には見上げていた山賊たちの顔も小さく縮み、見下ろす形になっていた。

 そして、気づいた。

 私にナイフを突き立てた男がいないことを。

 首を傾げ、足元を見てみると何倍にも膨れ上がった私のお腹に潰されていた。

 私は背中に違和感を覚え、水滴を払う犬のように身震いした。すると私の肩を掴み抑えていた為に巨大化に巻き込まれ背に乗っかっていた山賊が振り落とされた。

 その山賊は頭から地面に叩きつけられ、お母さんと同じようにピクリとも動かなくなった。

 私は軽く手を払った。

 すると間近にいた山賊たちが吹き上げられる塵のように吹き飛ばされ絶命した。

 そんな光景を少し離れた場所で目の当たりにした山賊たちは恐怖で統率を失い、一斉に背を向けて皆が我先にと駆け出してしまった。

 私は息を吹きかけるようにフゥっと吹きかけると灼熱の炎が口から吐き出され、生い茂る木々ごと山賊たちを皆焼き払った。殆どの者は死体すら残さず燃え尽きた。

 私は無意味と知りつつ辺りを焼き払った。

 だけど物言わぬお母さんの遺体だけは焼かぬように気を付けた。お母さんまで山賊のように焼き払うつもりはないからだ。

 灼熱の吐息で焼き払われ、辺りが開けたことで私は胸を撫でおろした。

 もう山賊はいないのだと。

 そして、思う。どうしてもっと早くこの力に目覚めないのかと。

 そうすればお母さんは……。

 私は最早声ですらない雄叫びを挙げた。

 ああ、私なんか生まれて来なければ良かった。

 そこでプツンと意識が途切れた。



          ☆☆☆☆☆    ☆☆☆☆☆    ☆☆☆☆☆ 



 兄たちの後をこっそり付いていこうという私の企みは兄にあっさり看破された。

 日が暮れれば兄のヴァンピールの力、ヘシュムの能力は朝や昼と違い段違いに上がることを幼い私は忘れていた。私の追跡は兄が家を出るのを確認し、私も兄の後を付いていこうと玄関の戸を開けた瞬間に私の計画は露呈した。

 お母さんが家にいない(村の集会に出ていて)ことを知っていた兄は、自分がでて直ぐに自分の家の戸が開く音を聞きつけ、直ぐに引き返したきたのだ。(因みに父は民族研究のため家を空けているのが常だった)


「どこに行くんだ?」


 私はあまりに早い計画の露呈に固まった。幼いながらも自分の尾行が終始うまくいくとは考えてなかった私だが、ある程度の場所まで気付かれず付いていければ、例え露呈してもなし崩し的に連れて行ってくれると踏んでいたからだ。だが家を出て直ぐにばれてしまっては家に戻されてしまう。


「おっお兄ちゃんはどこ行くの?」

「ちょっと竜を探しに行ってくる」


 堂々と言い放つ兄に私は言葉を失った。言葉を失って茫然としている私に今度は兄から問いかけてきた。


「付いていきたいのか?」


 私にとってその質問は助け舟であった。私はコクンと頷いて「付いて行っていいの?」と兄の顔色を窺った。

 兄は嫌な顔一つ見せず快諾してくれた。

 その後、兄は私を連れてきたことをザックお兄ちゃんに問い詰められていたが、いつもの飄々とした態度でかわしてしまった。ザックお兄ちゃんも渋々ながら私が付いていくことを認めてくれた。因みにミリアお姉ちゃんは最初っから賛同してくれていたので、ザックお兄ちゃんも強くは言えなかったらしい。



          ―――・・・―――・・・―――・・・―――



 竜は自分が想像していたよりも大きく、禍々しいものを感じた。その姿に大陸の守護者たる風格も品格も無く、殺戮と破壊の化身といった方がしっくりときた。

 鱗に覆われた身体、巨大な身体を支える手足は竜のたとえで引き合いに出されるトカゲの手足とは違い頑強そうで城を支える堅牢な柱を、また研ぎ澄まされた爪は鋭利な刃物を連想させた。

 竜を見ただけで私はこの場に来たことを後悔し始めていた。

 ただ恐い。まるで心臓を掴まれたかのような寒気が全身を過る。

 これが大陸最強の種族なのだと。けして挑んではいけない存在、それを本能的に理解して息を潜め相手が通り過ぎるのを祈るように待った。

 

「きゃっ!!」


 甲高い悲鳴が挙がる。振り向けば兄がミリアお姉ちゃんの首筋に噛みついていた。兄がミリアに噛みつき血を啜る姿は恋人同士の抱擁のようで淫靡なものがあり、私は頬を染め目をそらしてしまった。

 

「カル!! こんな時に何やってんだよ!!」


 ザックお兄ちゃんも頬を赤らめながら兄をミリアから引き離さそうと二人に近寄ろうとしたので、私は慌ててザックお兄ちゃんの袖を掴んで引きとめた。今のお兄ちゃんに理性は無い。そこにあるヒトの血に反応しているのだ。ヒト族であるザックお兄ちゃんが近付いたらミリアお姉ちゃんの二の舞になると思ったからだ。


「大丈夫。血を飲めばお兄ちゃんは正気に戻る」

「大丈夫って……、ミリアはどうなるんだよ!?」

「心配いらない。ほんの少しの血を貰うだけだから」

「話には聞いていたけど、こんな唐突に吸血衝動って……」


 ザックお兄ちゃんは憤りを吐きだすように呟いた。そんなやり取りをしているうちに兄は吸血を終え、ミリアの首筋から口を外した。ミリアお姉ちゃんは気を失っていてそのまま倒れこみ、兄は落ち着いたがまだ意識を戻してはいない。

 ザックは慌ててミリアに駆け寄って私の言葉通り無事かどうかを確かめている。私も兄が傍に駆け寄り吸血衝動が収まったことに安心した。


「あっ……」


 というザックお兄ちゃんのかすれた声が響く。振り向くとザックお兄ちゃんはある一点を眺めながら固まっていた。

 私もザックお兄ちゃんの視線の先を追いかけていき、固まった。

 ギョロリと二つの双眸が私を捉えた。

 竜は、その禍々しく底冷えするかのような視線で私たちを捉えていた。



         ☆☆☆☆☆    ☆☆☆☆☆     ☆☆☆☆☆



 

 村の集会所代わりの小屋に何人もの大人たちが集まり議論を交わしていた。

 村の集会で議題に挙がったのはやはり今朝の竜騒動の真偽である。

 村の大人たちは皆、魔女様と呼ばれているローブを羽織った女に視線を集める。

 皆が注目していること確認した魔女はおもむろに声を挙げた。


「結論から述べます。竜はかなり高い可能性でいたと思います」


 魔女の言葉に辺りがどよめき、騒然となる。村を捨てんといかんのか、早く荷物をまとめないととか、そもそも竜ってそこまで危険なものなのかと、様々な声があがる。その村人の様子に見かねた長老が杖で床を乱暴に叩き、「静かにせんか!! 魔女様の話はまだ終わってらんぞ!!」と静めた。


「皆さん、落ち着いて聞いて下さい。竜はいました。麓の惨状は竜によるものだと思います。けれど竜はもうこの山を立ち去った後だと思います」

「どうして、そう思うのだ?」


村を代表して長老が魔女に訪ねた。


「まず第一に麓を焼いた竜が捕食のために麓を焼いたのでは無いという点です。現場には幾つかの遺体が残っていましたが粗食した形跡はみられませんでした。第二に今こうして何事もなく村が存在していることです。竜が麓を焼いたのはおそらく昨日の深夜、なのに日が暮れ夜になっても竜は襲撃するどころかその姿を見かけた者すらいない。とすれば元々竜は村を襲う気がなかったと考えるのが妥当です」

「なるほど、しかしそれは確証に基づいた推論ではあるまい」

「ええ、これはあくまで私の私見です。ですから、今からでも荷物をまとめるなどの村から離れる準備は必要だと思います」


 魔女は女性の遺体を弔った後、精霊たちに問いただした。この山に竜はいるのか、と。

 すると、精霊たちは竜はいないと答えた。彼らは決して嘘をつかない。ならば、もう安全と考えていいのだが、念のため警戒するにこしたことはない。備えていれば、もし何らかの理由で竜が村に現れても迅速に避難が出来るからだ。


「楽観は出来んということか……。皆の衆、今の言葉を聞いたな。今から各自自宅に戻り荷物をまとめ、いつでも逃げ出せる準備をせよ。荷物は必要最小限にまとめ、かさばる物はどんなに大切な物でも捨て置け!! 皆、命より大切なものは無いと心掛けるのだ!!」

「長老、村を捨てるのですか?」


 一人の男が長老に詰め寄った。男は長老があっさり村をすてる決断に納得が行かないようだ。


「そうじゃ。あくまでいざという時はだがの。お主はこの村に竜と戦う力があると思っておるのか?」

「それは……」


 男はチラリと魔女に視線を移した。

 魔女は男に戦う力ならそこにいるじゃないかと示したことを悟り、口を開いた。


「確かに、私は竜を撃退したことが在ります」

「おお、なら」

「でも、それは私達同族が二個師団集まってなし得た功績です。私一人でどこまでやれるかははっきり言って未知数です。あなたはそんな不確かなものに頼りたいのですか?」


 「そんな……」と長老に詰め寄った男は言葉を失った。


「これでわかっただろう。我々は竜の姿をみたら逃げるしか手段がないのだ……」


 集会に集まった村人は皆押し黙り、ある者いそいそ自宅に戻り始めていた。

 ちょうどその時、甲高い声変わりをしてない男子の声が魔女に届いたのは。


「ここにいた!! 魔女さま。早くカルを助けにいって!! あいつ、俺たちを逃がす為に囮になったんだ!!」

「ザック!? 息を切らしてどうしたの? カルがまた何かしでかしたの?」


 肩で息をしているザックは魔女の矢継ぎ早の質問に即座に答えることが出来なかった。

 魔女はザックの必死な様子とザックの背で気を失っているミリアの姿を捉えて、ただ事ではないことを悟った。


「俺たち竜を探しに麓まで下りて行ったんだ……、それで麓にたどり着く前に竜を見つけたんだけど……」

「見つけたって!? 竜がいたの?」


 ザックの言葉に辺りが騒然となる。竜がいたという事実と村を捨てなければならない可能性が濃厚になったからだ。

 気を惹きたくて嘘を付いているのじゃないのかとザックを疑う声も挙がったが魔女はザックの言葉を疑うことはしなかった。ザックもカルもイタズラや悪さはするが親を心配させるような嘘を付く子ではないことを分かっていたからだ。


「まさか、あなた達竜にちょっかい出したの?」

「違うんだ。初めは竜を見ただけで帰るつもりだったんだ。だけど茂みに隠れて竜をやり過ごす時にカルが吸血衝動に駆られてミリアを襲って、そのせいで竜に気付かれて……」


 そろそろカルも吸血衝動に駆られる頃だろうと思い、備えていたが入れ違いで間に合わなかったようだ。


「カルが囮になってあなた達を逃がしたのね」


 なんとなく、あの子が取りそうな行動が予想でき確認したら、案の定ザックは必死に何度も頷いていた。魔女はザックに背負われ気を失っているミリアを抱き下ろし、カルが噛んだであろう首筋の傷跡に手を翳した。翳した手に生命を司る大地の精霊たちが集い、輝き始める。

 すると、魔女の翳した手から淡い光が零れ落ち、ミリアに残っていた傷跡を跡形も無く消し去ってしまった。

 

「女の子だもんね。跡が残ったら嫌よね」


 「すげぇ」と漏らすザック。魔女はザックにミリアを託し、長老に告げた。


「長老、村のことはお願いします。いつでも逃げ出せる準備をしていてください。私はカルを助けに行ってきます」

「あい、わかった。村のことなら任せときなさい。それより魔女さまは早くカルを迎えにいってくだされ。悪さばかりしてどうしようも無い奴だがいなくなると静かになって落ち着かんわい」

「ええ、連れ帰ってきたらウンと叱りつけてやるんだから」

「魔女さま、実はイゥプリカもいないんだ……。逃げる途中までは確かに手を繋いで逃げていたんだけど、いつの間にか手を離していたみたいで……」


 言いづらそうに告げるザック。見ればザックは目を閉じて俯いていた。魔女はザックの頭を優しくなで、叱りつけるのではなく優しく自信を持たせるように励ました。


「ザック、よく頑張ったわ。竜に襲われただけでもずいぶんと恐かったでしょうに。それでも気を失ったミリアを見捨てず、背負って逃げてきたのだから凄いわよ。誇りなさい、自分を。あなたが成し得た行為は誰もが出来る行為ではないのよ。イゥプリカのことなら大丈夫、あの子も私の娘よ。聡い子だから安全な場所にいるわ」

「でも……」

「これから村も騒がしくなるわ。その間、ミリアのことを頼むわね。長老、もしイゥプリカが村にいたら……」

「わかっておる。村の皆にも伝え、見かけたら保護するように言っておく」


 魔女は長老に礼を述べ、集会場となった小屋をでた。

 今度は風の精霊たちを呼び寄せる。風が魔女の身体に纏わりだし、空に浮く。

 目指す場所は昼間見た焼けた麓。その道筋のどこかにカルナヴァルとイゥプリカがいるはずだ。魔女は逸る気持ちを抑えながら米粒一つ見逃さないように周囲に神経をはり詰めさせた。

 絶対に自分の子供たちを見逃さないように。

 月が照らし始めた夜。一人の魔女が夜空を駆け、麓に向かう姿がそこにはあった。



         ☆☆☆☆☆     ☆☆☆☆☆     ☆☆☆☆☆


 見渡す限りそこは火の海であった。逃げ出す前に茂っていた木々や草花は無残に焼かれ、炭と灰にされていた。

 私は一人囮を買って出た兄の姿を探したが見当たらなかった。

 頭に兄が竜に焼かれてしまったのではないかという思いがよぎった。

 私はそれを振り払うように何度も何度も呼びかけた。その時の私には兄が竜から隠れてやり過ごしていたことなど思いもよらなかったのである。

 だから、私は不用意に声を挙げ、兄を呼び掛けてしまった。

 それが兄でなく竜を呼び寄せるとも考えずに。

 竜の双眸が私を捉えた時、私は委縮して動けなかった。

 心臓を鷲掴みされたかのように全身に悪寒が走る。私は全身が痺れたかのように動けず、竜がこちら向き口に火炎を含んでいるのをただ茫然と眺めるばかりであった。


「くそっ、こうなりゃヤケクソだ」


 兄の声が響いた。見ると竜に向かって駆け出している兄の姿が飛び込んできた。兄は竜によって倒された木を踏み台に跳躍、竜の顔面に飛び回し蹴りを決めていた。

 そのおかげで竜が私に向けて吐きだそうとしていた火炎を呑み込んだ。

 竜の顔面を蹴っ飛ばした兄は真っ直ぐこちらに駆け寄ってくる。

 ダメっ!! 

 私は直感的に悟った。顔面を蹴られた竜の双眸は兄の姿をしっかりと捉えていた。その目には殺意を宿していることを。

 次の瞬間、兄は鞭のようにしなる竜の尻尾によって吹き飛ばされていた。


「お兄ちゃん!!」


 いつの間にか動けるようになっていた私は兄の元に駆け寄った。尻尾によって吹き飛ばされた兄は生い茂る木々に叩きつけられ、全身の所々に血が噴き出していた。右手は変な方向に曲がっていて気にもたれ込むかのように座り込んだ姿勢だが、ピクリとも身体が動いていなかった。唯一、動いていた目蓋も私の姿を確認すると閉じられようとしていた。

 本能的に兄は死ぬのだと思った。私が必死に呼びかけても元気活発がトレードマークだった兄はピクリとも反応しない。


「死んじゃ嫌だよ、お兄ちゃん……。お願いだから目を開けてよ……」


 生きて欲しい。兄に言いたいことはたくさんあるのだ。私もザックお兄ちゃんとミリアお姉ちゃんと一緒に遊びに連れて行ってほしい。一緒に山を散策してみたし、釣りだってしてみたい。隠れんぼだって鬼ごっこだって一緒にやりたいのに。

 それにまだ本のお礼も言えてない。まだまだ言いたいこともやりたいことも残っているのだ。だから、生きて欲しい。心からそう思った。

 竜が私たち兄妹の元に向く。その口に私たちを焼き払う火炎を咥えて。

 それでも私は……、


「お兄ちゃん!! お兄ちゃん!!」


 兄の傍を離れることが出来なかった。

 竜が灼熱の息吹を吐く。その燃え盛る火炎はわき目も振らず一直線に私たち兄弟の元に駆けだし、突如現れた幾つもの竜巻によって上空に舞い上げられた。


「よかった……、本当によかった……、間に合って」


 その安堵を漏らす声は私にとって身近な人物のものであった。

 竜と私たち兄弟の間を挟むように舞い降りてきた人影はよほど慌てて駆けつけてきたのだろう。普段はフードによって表れることがない金色の髪が月の光にさらされていた。

 

「この子たちに手出しはさせません。例えそれが竜族だとしても」


 竜巻を操った人物は。村で魔女と呼ばれている女は。私たちのお母さんは竜に向かって高らかに宣言した。

 その姿が幼い私にはおとぎ話に出てくる戦乙女のように見えた。



        ☆☆☆☆☆    ☆☆☆☆☆    ☆☆☆☆☆



 竜と向き合った時、少々の違和感を感じながらも自分の知る竜の姿と寸分と違わない相手に気を引き締めた。竜と対峙することだけでも大きな負担だが自分の背後にはカルナヴァルとイゥプリカの二人がいる。二人を守りながら竜と対峙せねばならない上に、カルナヴァルは虫の息だ。早く治療しないと手遅れになってしまう。

大地の精霊たちがカルナヴァルの周りで騒ぎ立てだしている。彼らは生と死を司る精霊だ。カルナヴァルの生への執着と死の猛襲に対して過敏な反応をしているのだろう。彼らは自ら進んで生者を手助けしたりはしない。こちらから干渉しない限り、生きる者に干渉しないのが彼ら精霊たちの唯一絶対のルールだからだ。

だから、目の前で子供が死にかけようと彼らは決して助けたりはしない。

目の前にいる竜は突如現れた魔女に一瞬、ひるみはしたが直ぐに立て直し地鳴りにも等しい咆哮を挙げた。

 と同時に尻尾をしならせ、尻尾を魔女に向けて鞭を払うように放つ。

 すると魔女と竜との間の土が盛り上がり、小さな丘が出来上がった。その丘は魔女を、その後ろに控える子供たちを守るように。

 鋼鉄より堅い鱗に包まれた竜の尻尾でも突如出来た丘を打ち破ることが出来ず、土をえぐるだけであった。それを見た竜は小高く積み上がった土を強靭な腕力にものいわせ、打ち払うが、丘に隠れていた魔女の姿はそこには無く、はるか後方に下がって魔女は次の魔術を解き放っていた。

 水気などまったく無かった場所に突如鉄砲水が湧き起こる。竜を巻き込んだ鉄砲水は竜の巨体を元いた位置に押し戻した。

 竜はこれにひるむことなく灼熱の息吹を吐く。しかし、二重になって巻き起こった竜巻の壁に遮られ、吐きだされた炎は魔女の元に届くことは無かった。


―― 竜よ。貴き強き種族よ。


 魔女は竜に語りかけた。その言葉は普段使っている言語ではない。竜族に人語は通じない。言葉が通じないからといって知性がないわけではない。竜には高い知性があり、コミュニケーションを取ることは可能である。それを可能にするのが精霊言語である。

 竜も人も精霊の加護を受ける。当然、竜族も加護のある精霊とはコミュニケーションをとることが出来る。(ゆえに精霊魔術も扱える)精霊を介することで人と竜、精霊の加護のある全ての生物とコミュニケーションを取ることできるのが精霊言語なのである。ただし、これが行えるのは同じ精霊の加護をもった者同士だけだ。

 魔女は四大精霊全てを介して竜に語りかけた。四大精霊のいずれの加護が無い者は存在しない。


―― あなたの鋭く研ぎ澄まされた爪は私の身体に届くことは無いでしょう。

―― あなたの強靭にして鋭利な尾は私の元に届くことは無いでしょう。

―― あなたの鋼鉄をも溶かす息吹も私の身を焦がすことは出来ないでしょう。

―― 闇が夜を支配する限り。空が闇を払わぬ限り。

―― 竜よ。私に貴方を害する意思はありません。貴方が私たちを害する意思が無い限り私は貴方を害しません。

―― だから、どうか退いてはくれませんか


グオオオオオオオオオオンっ!!


 竜は咆哮を轟かせ、魔女に突進してきた。魔女は再び鉄砲水を放って押し戻した。しかし、竜はそれで諦めることもなく何度も何度も魔女に向かって突進を繰り返した。

 魔女は竜のこの行動に戸惑った。何度語り掛けても竜からは雄叫びしか返ってこない上に執拗に襲ってくるのだ。いくら膨大な魔力を宿しているとはいえ、何度も押し返していればその魔力とてそこは尽きる。それでなくても先ほどから放っている魔術は高出力なものばかりなのだから。

 どうして。どうして呼び掛けに答えてくれないの?

 それに先ほどからの竜の行動がおかしい。無駄と知りつつ何度も挑んでくるなんて。たとえあちらにこっちを害する意思があるにしてももっと効率のいい方法が幾つもあるはずなのに。まるで理性を感じさせない。というより理性がない。そう、ヴァンピールが駆られる吸血衝動のように、ただただヒトの血を求めるかのように。

 魔女はある可能性を導き出した。直ぐに大地の精に確認をとる。

 この山に、今この場にヴァンピールは何人いるのか、と。

 すると大地の精は四人と答えた。

 この場にいるのはカルナヴァル、イゥプリカ、魔女の三人のはずである。だとすれば四人目は……。


「あの竜ってことになるわね……」


 昔、『失われし聖戦』の末期。アズ系統の失敗により残りの五系統を更に強化するという計画が持ち上がっていたという話を魔女は思いだした。

 確か真っ先に白羽の矢が刺さったのは動物に化けれるタルウィの系統だったはず。タルウィの能力を戦闘面で強化するというその話は戦争の終結とともたち消えたはずだが……。もしその計画の強化が竜に化けることを示しているとしたら……、確かに戦術の幅は広がるであろう。


「竜に化けれるタルウィなんて聞いたことは無いけど……、だとした動物化したことで理性が吹っ飛んだのね」


 タルウィの能力は動物に化けることだ。しかし、ごく稀に混血のタルウィが動物に化けると理性が飛ぶ時がある。もしそうだとしたら……。

 理性を戻せば見込みはあるはず。例えば吸血衝動を無理矢理収めるやり方のように。

 魔女は腹を決め、竜に浴びせていた水流を止めた。竜が首を傾げ、魔女に視線を向けた。魔術を解いた魔女はゆっくりとした足取りで竜の元へ近づいていった。

 竜は尾を放った。魔女は避けることも魔術で防ぐこともしなかった。尻尾は確実に魔女を捉え、カルナヴァルと同じように魔女を吹き飛ばすはずであった。


「自分を取り戻しなさい。貴方は竜ではないのだから」


 魔女は既に竜の足元にいた。竜の放った尻尾の一撃は空しく空を切っていた。ゆったりとした足取りの魔女は幻。本物は既に竜の懐に潜り込んでいた。幻影を見せるドゥルグの能力である。


「心を取り戻しなさい。貴方は兵器ではないのだから」


 竜は魔女を切り裂こうと鋭いかぎづめを放ち、魔女を切り裂こうとした。が、切り裂いたのはローブだけであった。魔女は自身を霧に変え、竜の爪を掻い潜ったのだ。これが自身を霧に変えることができるザリチェの能力。


「貴方のその力はこんなことをするために存在する力じゃないのよ」


 飛び上がり竜の眼前で語る魔女。先ほどまでと違い竜は魔女の言葉を聞きいってしまっている。何者をも魅了するドゥルグの能力である。

 

「ごめんなさい。ちょっと痛いけど我慢してね」


 魔女は手元にハリセンを喚び寄せた。大地の精が魔女のために造り出した特別な代物だ。その見た目とは裏腹に城門破壊用のハンマーとは比べ物にならない破壊力と質量をもった代物だ。これがノーンの能力。

 魔女は本来ならば女性の細腕では持ち上げられないそれを軽々と振るい、そうまるで普通のハリセンのように、竜の後頭部を思いっきり叩きつけた。これがヘシュムの力である。

 全ての系統の力を扱える能力、これがアズの能力なのである。

 ハリセンの一撃を貰った竜はそのまま地に倒れ伏した。

 もしこれが竜族ならば直ぐに気を取り戻し、戦いは続く。

 しかし、ヴァンピールなら気を失ったことで能力が解けるのである。

 案の定、小山のように大きかった竜の巨体がだんだんとしぼんでいった。鱗も次々と消えていき、その場現れたのはカルナヴァルと同じ年頃の全裸の少女。

 

「まだ幼い……。たぶんそのせいでタルウィの力に引っ張られてしまったのね」


 魔女は何も身につけていない少女にボロボロになった自身のローブを羽織り、直ぐにカルナヴァルの元にかけよった。

 その時である。大地の精霊たちが歓喜の声をあげたのは。途方のない数の、山に存在する全ての大地の精が声を挙げ、祝福の言葉を口ずさむ。


「うそっ……、これは『大地の讃美歌』!? こんな禁呪指定一歩手前の魔術を……、いったい誰が」

 

 魔女の目に飛び込んだ光景はイゥプリカが大地の精を呼び寄せて兄の怪我を治していく光景であった。

 彼女が超高難度の術式を知っていたとは思えない。瀕死の兄を助けたいという思いが、ノーンという精霊とシンクロしやすい能力によって引き起こされた奇跡。

 純粋な感情だけで創り上げられた光景であった。けれど、それも長くは続かない。まだ六歳となったばかりのイゥプリカにこの魔術を維持継続できる魔力も技術も知識もないのだから。

 

「イゥプリカ、そのまま気を落ち着けて。カルはもう大丈夫よ」


 魔女は娘から精霊を取り上げていき、『大地の讃美歌』よりも幾分か劣る治癒術に切り替えていった。

 イゥプリカは母が傍に寄り、治療を代わってくれたことで安心したのか。魔女にもたれ掛りへたり込んでしまった。

 その様子をみた魔女は、「よく頑張ったわ」と安心させる一声をかけた。



        ☆☆☆☆☆     ☆☆☆☆☆    ☆☆☆☆☆



 目を覚ました時、真っ先に飛び込んできたのは見知らぬ天井であった。


「よかった。目を覚ましたのね」


 ローブを羽織った女性が、目を覚ましベッドから起き上がった私の傍に寄った。


「ここはエラト村よ。この家は長老の家の空き部屋。私はこの家の人間じゃないけどあなたの様子を看るために一時的にいるのよ」

 

 ローブを羽織った女性は優しく声音で私に語りかけた。ローブを羽織った女性は「そのまま腰を落ち着かせていいわよ」と声をかけ、自身も私の傍にある椅子に腰を下ろした。

 この女性をよく見ると昨夜、私が竜に化けた時に対峙した女性であった。


「あっ……」


 思わず声を漏らしてしまう。その様子をみた女性はクスッと笑みを零した。


「どうやら私が此処にいる理由を言う必要はなかったみたいね」

「ごめんなさい」

「あら、どうして謝るの?」

「だって、私はあなたを……」


 殺そうとしたのにと言葉を続ける前に女性に指が私の唇を押さえた。

 そして、私に尋ねてくる。


「今も私を殺したい?」


 私は首を振って否定した。あの時はどうかしてたとしか思えない。あのおぞましい感情に委ねることがあんなにも殺伐としたものになるとは思わなかった。何もかも破壊したい。破壊しても落ち着かない。またあんな感情に駆られるのは嫌だ。

 お兄ちゃんと泣きじゃくりながら必死に呼びかける一人の女の子の姿が思い浮かんだ。自分がした過ちが導いた結果、私は山賊と同じことをしてしまったのだ。お母さんを奪った山賊と同じことを。


「あの……、あそこにいたあの女の子と男の子は?」

「どっちも大丈夫よ。男の子、私の息子なんだけど意識はまだ覚めてないけどその内目を覚ますわ。それより貴方がこの山にきた経緯とどうして竜になったのか聞かせてくれるかしら?」


 私は街を出た経緯と山の麓で山賊に襲われたこと、そこでお母さんが私を逃がそうとして山賊に殺されたこと、そしたら感情が膨れ上がって竜に化けたことを話した。

 自分で言葉にしていくうちに自分の身に何が起き、そして失ったものの大きさに言葉が続かなくなっていた。私はやっと立ち止り、悲しむことが出来たのだ。

 傍らにいた女性は私を優しく抱きしめ、「ごめんなさい。辛いことを尋ねて」と彼女は私が落ち着くまで優しく抱きしめ続けた。



         ―――・・・―――・・・―――・・・―――



 ローブを羽織った女性は長老と話があるからと部屋を後にした。その間、好きにしていいと言われたが別段することがなく茫然と日差し除けのカーテン越しの窓から外を眺めるばかりであった。

 日が最も高く、強く照りつける中、ローブを羽織った少年が同じくローブを羽織っている幼い女の子に裾を掴まれながら歩いている姿が目に入った。

 私は慌てて、部屋を飛び出し、少年の元に駆けだした。昨日のことを謝るために。


         ―――・・・―――・・・―――・・・―――



「お~い、イゥプリカや。いい加減、裾を離してくれないか?」

「いや」


 妹の淡白ながらも頑固な拒絶にカルナヴァルは困った表情を浮かべた。妹は普段、昼間に外に出たりする性分でないのだが、今日に限ってずっと自分の傍から離れない。

 どうも昨日、竜にやられた時のショックが大きかったようだ。


「ミリアの所に謝りに行くだけで、他にどこにも行かないから」

「いや」


 と妹は更に強く裾を握った。カルナヴァルはどうしたものかと思案に暮れていると見慣れない女の子に話し掛けられた。彼女も自分と同じようにローブを羽織りフードを被っていた。


「あの……、ごめんなさい!!」


 突然、謝られた。謝られたカルナヴァルは何のことだが分からず、キョトンとしている。突然、見知らぬ少女に頭を下げられたのだから当然である。カルナヴァルは昨夜の竜が目の前の少女であることを知らないのだ。


「この人、竜」


 と裾を握っていたイゥプリカが兄の陰に隠れながら少女の正体を告げる。イゥプリカは竜が少女であることを知っていた。だから、少女のことが謝っている理由を理解しているのだが、昨日の今日で少女のことがまだ怖い。だから、兄の背に隠れていた。

 謝った少女はイゥプリカの怯えた様子に目を伏した。その様子を見たカルナヴァルは納得がいったという表情を見せ、少女と向かい合った。


「なんで謝ってるんだか知らないけど、よろしく。リュウちゃん」

「えっ……?」


 てっきり馬事雑言を浴びせられると思っていた少女は闊達な笑顔と共に差しだされた手に戸惑う。謝ることばかりに気を取られていた少女は、カルナヴァルが先ほど目を覚ましたばかりで自分のことを知らないことに頭が回らなかったのである。


「お~い、カル。お前無事だったのか」


 とザックがそこに駆け寄ってきた。カルナヴァルはザックに顔を向け、「竜にブッ飛ばされたけどこの通りピンピンしてるぜ」と応えていた。


「よかったよ。お前が死んでたら夢見が悪いし」

「それがさ~、目が覚めてから身体の調子が……」

「悪いのか? やっぱり竜にやられたせいで」

「いや、逆。めっちゃ調子がいいのよ。羽が生えたように身体が軽いんだ、これが。なんでだろう?」

「なんだそれ」


 とカルナヴァルに呆れかえるザック。その視線がローブを羽織った少女に移る。少女が何か応えようとするが……。


「この子はリュウちゃん。今日からこの村に住む女の子だ。たぶん」

「たぶんかよ!?」

「だって、俺もさっき会って一言二言交わしただけだもん」

「しかも、ほぼ初対面かよ」


 イゥプリカの竜という言葉を少女の名前と勘違いしたカルナヴァルが少女を差し置いて話を進めていった。リュウと勝手に名付けられた少女はカルナヴァルとザックという人の話を聞かないことに定評のある二人の独特のテンポに付いていけず、弁解の機会を作り出すことが出来なかった。

 その内、ザックが昨夜の事で両親にこっ酷く絞られ、今日は飯抜きにされたという話になり、なら山で山菜でも摘んで飢えを凌ごうという展開になり、それなら人数は多い方がいいということでリュウと呼ばれた少女は引っ張られるがままに山菜取りに駆りだされてしまった。



      ―――・・・―――・・・―――・・・―――



「よかった……」


 魔女は先ほどまで少女がいた部屋の窓から自分の息子と娘、少女の様子を窺っていた。もし、少女が困っていたら手を差し伸べてあげるつもりだったが、それは杞憂に終わった。


「全く、二人とも人の話を聞かない子なんだから」

「おや、魔女さま。何かいいことでもありましたかな。顔が綻んでおりますぞ」


 背後から長老が歩み寄り、魔女と同じように窓から外の様子を窺う。


「顔、綻んでましたか」

「ええ」

「なら、それは子供の凄さに驚かされたからですよ」

「なるほど」


 長老もカルナヴァルたちの姿を捉えていた。


「どうやら受け入れられたようですな」

「ええ、あの子たちを見ていると種族の違いなど些細な隔たりだと痛感させられます」

「ほっほっほ、隔たりなど我々大人たちが勝手に引いた線なのかもしれませんな」

「かもしれません。ただあの子たちを見ていると将来が楽しみになってきました」

「それを聞くと何百年と生きた魔女さまも人の親ですな。本当に我々の隔たりなど些細なものなのかもしれませんの」

「長老。私も親ですよ。二児を抱えた一人の母親です。ですから、あの子たちが生きる時代が、あの子たちの人生が、少しでも多くの幸があることを願うんです」


 長老にそう答えると、魔女は子供たちを見守りながら優しくほほ笑んだ。


更新遅れて申しわけありませんでした。今回は前話の補完的な話になっております。補完的な位置づけなのに前話の倍近く長いのは突っ込まないでください(笑


次回の更新が一カ月後になるように善処します。実は第16話タイトルは既に決まっていて、プロットも出来てたりします。ただそれを書く時間が……。(もしかしたら幕間を挟むかもしれません)


そうそう、話は変わりますが最近、「ロードオブヴァーミリオンⅡ」というアーケードのカードゲームにハマりました。カードのキャラが動いてしゃべったりと、遊戯王カードのアナログさとは違う面白さが楽しいですね。まあ、やり込める時間がないのは悲しいですが。

此処に掲載されている作者名でプレイしているので、もしプレイしてかちあったらニヤリとしてください。いいカモ(獲物)となることでしょう。


それでは作品のご感想・ご指摘・ご質問・その他些細なことでも構いせんからお待ちしております。

以上、作者からでした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ