幕間 ヴァンピールの日常-その弐
更新が遅れて申し訳ございませんでした。
作中のテュリア同様、作者も引越しがあったため執筆の時間がとれなかったもので……。
例え銀行強盗に襲われようが銀行は銀行が存在している限りその業務を停止したりはしない。それはボク・ボブ訂正カルマ・ボーマンが任じられた「K当番」も終わってないことを示している。
「この前、僕が通っていた学校のクラスメイトが集まって同窓会が開かれたそうなんだ……」
「お客さま、本日はどのようなご用件で?」
カルマは諦め半分、遣る瀬無さ半分の心境で銀縁眼鏡がトレードマークの警官に向き合っていた。強盗がカルナヴァルの手によって締め上げらた翌日、銀行は何事もなかったように通常業務を行なっている。新米であるカルマにはピンとこないがザール地区国営銀行は過去何度も強盗に襲われている。当然、其処に勤めている者たちも銀行強盗を何度も経験しているため、その対応も慣れたものだ。マニュアルだって確立している。ゆえに昨日の強盗に対して誰一人取り乱すことなく対応し、人的被害は出さなかった。本来、強盗はお金を渡せば素直に立ち去っていく。なぜなら強盗の目的が金を手に入れることであって人を傷つけることでは無いからだ。ただ昨日の強盗は色々な意味で間が悪く、立て籠もりという結果に繋がったが本来は強盗が来ても要求どおりに金を渡し、警察に被害を届けるだけで通常業務に戻るそうだ。ちょっとした嵐がきた程度の対応で済むのである。
今、カルマが向き合っている警官も昨日ことなど微塵も気にした様子を見せずカルマと向かい合っている。彼もカルナヴァル同様、K当番の対象者、つまり交番所に勤めている人間だ。名をノットン・モンラムという。
「同窓会が開かれたということを知ったのがソレが終わった後、僕を担任していた教師とばったり会ったからなんだよ」
カルマの言葉など無視して語り続けるノットン。
昨日のカルナヴァルといい、今日のノットンといい、ザール地区交番所に勤める人間は人の話を聞かない自由人ばかりである。
カルマは憤りというストレスを態度に表さないように意識しながら応対する。
「お客様、カウンセラーがご希望でしたら病院にいくことをお薦めします」
「支店長!! この受付、人の話が聞けないって言ってるんだけど!!」
ノットンはこれ見よがしに支店長に訴える。当然、支店長はあっさりカルマを人身御供した。
昨日と違う人物と応対しているのに関わらず、昨日の焼き増しをもう一度体験しているような感覚に囚われる。ついでに支店長に恨みを抱く点まで昨日と同じである。
ノットンは支店長の許しを楯に取り、話を再会しだした。
「担任の話だと同窓会は僕が卒業した翌年には開かれていたそうだ。しかし、僕がソレを知ったのはつい最近……」
来られるのがイヤだったんだろうな、クラスメイトの皆さん。カルマは顔も知らないノットンの同級生達に同情した。
「担任の『君は毎年参加してないけど仕事が忙しいのかね』と真顔で尋ねられた時の屈辱……」
「お客様の警察官という忙しい立場を配慮して、同級生の方々は声を掛けなかっただけでは?」
流石に思ったことをそのまま告げるわけにもいかず、好意的な解釈を述べることにした。因みに諸々の事情で学校を卒業できなかったカルマの元にも同窓会のお誘いは来る。カルマは諸々の事情(元カノに会うのがイヤという理由)で同窓会に参加しないだけである。
「僕が問題にしてるのは同窓会に参加する・しないの話ではないんだよ。僕に声を掛けなかったということを問題にしているんだ。僕はそんなに影が薄かったのだろうか」
「それは無いでしょう。濃いキャラクターですし」
「なら、どうして僕は尋ねられなかったんだ!?」
「それは私の口からはちょっと……」
「どうしてなんだぁー!!」
ノットンはカルマの両肩を掴み振り子時計のようにシェイクした。その後、暴走するノットンをカルマが必死に宥め、落ち着かせた。ノットンの所用が済んだのはこのやり取りから二刻程過ぎた頃であったという。
K当番、それは過酷にして孤独、報いのない当番である。
次回、カルナヴァルの元同僚が登場する予定です。出来るだけ早く更新したいと思いますが出来るのであろうか? 自分よ。
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この作品が完走できるように頑張ります。