14、ナターシャ2
「そうですね殺されるのは嫌ですが、もし犠牲が出てしまった場合は殺してもらって構いませんのでよろしくお願いします。」
そう言ったナターシャさんは、しっかりと10秒ほど頭を下げたあと頭を上げ未来と、じっと目を合わせてしばらく沈黙が続いた。
「‥‥‥は〜〜、分かったわ、そこまで言うなら引き受けてあげるわ。それでナターシャちゃんの職業はなんだったの?」
家族が第一の未来からすると赤の他人である女の子を助けるために家族の命を危険に晒すのは絶対的に反対ではある‥‥が、それよりも、記憶喪失とはいえ現地の人間である彼女は、今現在全て手探りでやってきた自分たちには、必要な人間であるのは確かなので、未来的には多少リスクを負ってでも彼女に恩を売っておきたいため、渋々深いため息を吐きながらそういうと、視線を龍也に向けそう問いかけてきた。
「‥‥いや、それが鑑定しようと思ったら、はじかれて名前と年齢しか分からなかった」
「龍也‥‥‥、まさかとは思うけど、ステータス聞かずに鑑定しただけって事はないわよね?」
龍也から「あっ‥‥‥」という、声が漏れた。周りから「お兄ちゃん‥‥‥」と言う声や「‥‥‥龍也」と憐れむ様な視線が刺さり微妙な雰囲気になる。
そう、聞けばよかったのだ。本人にステータスを聞けば鑑定などせずとも確認できたのである。
その事を言われて、遅くも今気づき、ギギギと油のささってないブリキの様に龍也はナターシャの方を向いた。
「‥‥‥あの〜、もしかして自分のステータスを見れたり見れなかったりしますか?」
「‥‥‥すいません、自分で見る事はできませんでした、お役に立たず申し訳ないありません」
ナターシャは、そういうと俯きながら申し訳なさそうに押し黙った。
ナターシャの返答を聞き、胸を撫で下ろした龍也は何か言いたそうな顔で、そっぽ向いている家族に対し、ムッとした顔をしている。
「間違ってなかったじゃんか〜」
間違ってなかった挙句に散々な言われようにジト目で抗議の声を上げる龍也。
「ごめんなさいね龍也、‥‥でもどうしてナターシャちゃんは自分でステータスを見れなかったのかしら?」
流石に、いたたまれなかったと思ったのか未来が、即座に話を変えた。
ステータスに関しては家族みんな自分のステータスを確認できているので、この中でステータスを確認できないのはナターシャだけであり、この中で違いがあるとすれば、やはり異世界人か現地人かの違いだけである。
確かにそもそも、この世界の住人と自分達とは身体の構造が違う可能性があり、当たり前ではあるが地球の人間しか知らない上倉家にとっては、違いなど認識することもできるはずがなかった。
その結果、「「「「‥‥‥ま〜っいっか」」」」っという事になった。
「それで、ステータスが見れないのは、いいにしても魔法とかは使えるのか?」
ナターシャは自分が何も役に立たない事に悲しくなったのか涙目で俯きながら、しょぼくれていたが真の言葉を聞き今の自分にできる事を喋り出した。
「ごめんなさい‥‥今の私に可能なことは、この世界の事を教える事位しかできません」
「‥‥いやそれ、むしろ1番重要なのでは‥‥」
龍也のボソッと出た言葉に、全員が激しく同意するかのように激しく頷いていた。
「えっと‥‥‥ナターシャちゃんは何処まで事を憶えているのかな?」
「‥‥‥自分の事意外です、自分の事意外の事は全て憶えています、それと先ほど、この世界の事しか教えられないと言いましたが、おそらく私は記憶をなくす前は戦えてたのだと思います」
ナターシャは真の質問に答えたあと、何を思ったのか少し離れた所へ移動し、その場で構えをとり、まるで幼い頃から身に付けてきたかのような洗礼された動きでパンチや蹴りをその場で放った。
「‥‥‥ナターシャさんその動きは何?」
「えっと、ただのパンチとキックですが?」
あっけらかんと、そんなことを言うナターシャは不思議そうな顔でこちらを見てきた。
‥‥‥うん、可愛い!‥‥ではなくて!
「‥‥えっと、記憶がないと言ったのですが、どうも今まで経験してきた事は身体が覚えてるようなので、少なくとも自分の身は自分ので守れると思います。」
‥‥‥っということらしい。
「お母さんこれなら、少なくとも足手まといにはならないんじゃない?」
「そうね、‥‥もっともこういう事は初めに言ってほしかったのだけどね」
確かに家族が一番大事なのは変わらないが相手の事も、ろくに聞かずモンスターの襲われた被害者である彼女に対し言い過ぎてしまった事を悔いているのか、未来は申し訳なさそうな顔をしている。
「殺すなんて言ってごめんなさいね?でも私たちも自分の身や家族の安全が一番大事なの、それに戦えて、この世界の事を教えてくれる子なら大歓迎よ」
「はい、ありがとうございます。それと、先ほどの事に関しての謝罪は必要ありません、いくら私が記憶喪失だとしても、家族が一番大事だという事ぐらいは分っているつもりですから。」




