13、ナターシャ
あれから、ナターシャと龍也は母さんの「ご飯よー」っという声を聞き、話しをきりあげ家族のいる方へ向かった。
みんなが集まり食事を始めようとした所、ナターシャは「ナターシャと申します!記憶を無くしてしまいましたが改めてお礼を言わせてください!」っと、いきなり立ち上がり緊張した表情で言った事により、みんなの視線がナターシャに集まる。
「いいのよナターシャちゃんそんな事より早くご飯を食べましょう?」
「そうだぞ、早く食べないとナターシャちゃんの分も食べちゃうぞ?」
父さんと母さんはそう言うと黙々と食事を初め、ナターシャも慌ててその後を追うように食事を始めた。
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よほどお腹が空いてたのか、みんな黙々と食べ、気付いた時には、ある程度空腹が収まり、食事がひと段落した所で琴遥が隣でお腹いっぱいでウトウトしているナターシャに話しかけた。
「それでナターシャさんはこれからどうするの?」
「‥‥‥‥は!、えっと実は先ほどですね、龍也さんに街まで連れて行ってもらえないかとお願いした所条件付きでお引き受けいただいたので、龍也さんに街までの護衛をお願いする形になってます。」
寝ていたナターシャは琴遥の声で飛び起き、やや早口になりながらも先ほど龍也と話した事を話した。
それを聞いた琴遥は目を見開き驚きながらも、すぐさま鋭い目つきで龍也を問い詰める。
「お兄ちゃん相談もなく何勝手に引き受けてるのさ!‥‥‥っていうか条件ってまさかお兄ちゃん変な事を頼んでないでしょうね?」
「そんな事お兄ちゃんがするわけないじゃっ」
「いえいえそんな!これは私からお願いした事ですので、もしお願いを聞いてくださるのでしたら報酬として私の出来ることならなんでもします、っという条件で心良く引き受けてくださいました!」
龍也がなんとか誤魔化そうと言い訳をしていると、被せるようにナターシャがそんな事を言いだした。
「‥‥で?、お兄ちゃんどういう事かな?」
「‥‥ほら、これはナターシャさんから提示された報酬であって、決して俺からお願いした事じゃないからセーフでしょセーフ!」
龍也は慌てて誤解を解こうとするも、琴遥は変わらず疑わしい目つきで龍也を見ていた。
「でもお兄ちゃんその条件聞いたときに下心なかったわけじゃないでしょ?」
「‥‥‥‥‥‥そんなことはないぞ?」
「いやいや、流石に間が空きすぎでしょ!」
龍也が何も相談せずに決めた事が悪いのは確かだが龍也も、もう引けなくなってしまったのか琴遥と、あーだこーだと言い合いを繰り返している。
「まぁまぁ2人とも取り敢えずは、ナターシャちゃんがどうして街に行きたいか聞いた方が良いんじゃないかしら?」
言い合いをしていた2人はお母さんの声を聞き「は!」っとなり、2人は「ごめんなさい」と言いながら、すごすごと自分の席に戻っていった。
「それで?ナターシャちゃんはどうして街に行きたいのかしら?」
「‥‥‥すいません、なぜかは分からないのです。ですが、どうしてか私の直感が街に行けと言っているのです!」
それを聞いた未来は、直感ってだけで街に行きたいと言うナターシャをどうするか考える。確かにそろそろこの森を出たいと思ってはいたが、記憶喪失の足手纏いを連れて、果たしてこの森を抜けれるかと言われると流石に厳しいのではないかと思う。
「いいんじゃないか?、どうせそろそろ森を出る気ではいたんだし、これを機に森を出るっていうのもアリじゃないか?」
「そうは言うけど貴方、記憶喪失の足手纏いを連れて被害を出さずに森を抜けれると思う?、確かにここに来たばっかりの時は異世界に来れたことに浮かれてはいたけど、この前の蛇との戦いで思ったわ、この世界では弱ければ簡単に死ぬわ、それで森を抜けるのに足手纏いを連れて、万が一にも私達の子供が死んでみなさい‥‥‥多分私は問答無用でナターシャちゃんを殺すわよ?」
未来は夫である真のあっけらかんとした発言を聞き未来は真を睨みながら少し咎め立てるような目を向けた。
「‥‥すまん、ちゃんと考えてたつもりだったんだが、考えが甘かったみたいだ。」
「分かればいいのよ、‥‥それで、ナターシャちゃんはこの会話を聞いても龍也に‥‥‥いや私達に頼むっていうのかしら?」
未来はそういうナターシャを値踏みするように見つめながらナターシャの返答を待った。
「そうですね殺されるのは嫌ですが、もし犠牲が出てしまった場合は殺してもらって構いませんのでよろしくお願いします。」
今の話を聞いてもナターシャは動揺を見せず、立ち上がり深々と頭を下げながらそう言った。




