8 男同士の秘密
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「大丈夫ですか?」
「あぁ、うん。体力無いけど、元気だから大丈夫」
今日はこの屋敷の執事長のジョセさんが、屋敷内の案内をしてくれているのだ。
「この家、大きすぎない?」
「そうでございますね。最強の聖なる力を持つ血筋で、王家に1番近い大貴族でございますから」
「魔法使えるのか!?」
残念そうにジョセが首を横に振る。
「ここ数代、聖なる力持ちが産まれておりません」
「なーんだ。何か体が小さいし、宙に浮けたらって思ったのに」
そう言った瞬間。シュルシュルと音を立てて空気が巻き上がり、俺の体は1mくらい持ち上がった。
「え、何?魔法?」
「こ、これは!ルーナ様、これをお持ちください!」
天然石のブレスレットの様な物を手渡してくる。はめろということか。ユルユルだけどな。
はめた途端、石全体が何色かに輝き始める。何色だろう?綺麗だなぁ。
スーッと体が下に降ろされた。
「な、な、な、な」
「ジョセフさん???」
「凄いですよルーナ様!貴女には全精霊の加護があります!あんなに全色光る所なんて見たことはございません!…あ、もしや魔力も??」
ブレスレットを返すと、水晶の玉を渡してきた。この体には重いな。
「そこに念をこめて下さい。力を注ぐイメージで!」
「??やってみる。んんんー」
すると真ん中が少し光り始めた。それが球体に飛び散るように当たり…水晶は静かに粉々になってしまった。
「聖なる計測器が壊れるとはっ。ルーナ様!!!」
「は、はいっ」
「この事は誰にも内緒ですよ?ご主人様達にもです。精霊の事と魔力の事は内緒です」
「な、なんで?」
「ルーナ様に危険が及ぶかもしれません。大きな力は争いも招きますから」
何となく想像出来る。出る杭は打たれるって言うしな。俺は平穏に暮らせれば、それでいい。
「分かった!言わねぇよ!」
「…男の子ですねぇ…」
なぜか残念そうな声で言われた。ジョセフ、悪いが中身は17歳男子だ。諦めろ。
そうこうしながら、屋敷内の案内は1日かかったのだった。