6 女子はお得らしい
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まぁ娘が中身男だったら、混乱するよな。
「雅也…あんたラッキーボーイね」
「は??」
この状況の何がラッキーなんだ?
「この世界では圧倒的に女子が少ないのよ。だから凄く大事にされるし、婚約者や結婚相手も複数出来るわよ」
「いや、まったく嬉しくねぇよ」
そこへ父親と思われる男性が、俺に声をかけてきた。
「ルーナには、既に志望者から厳選した5人の婚約者がいるんだよ」
ルーナ…は俺だよな?俺に婚約者が5人?
「その婚約者の性別は…」
「もちろん家柄の良い健康で優秀な少年ばかりだよ」
ですよねーーー。
可愛い女の子達に囲まれている自分を一瞬想像してしまった。
悲しすぎる…。
「でも…良かったよ。どんな形でもさ、弟がこうして生きててくれて。女の子庇って死ぬなんてさ。母さんなんて、生気のない顔してて心配なんだ」
「そっか…そうだよな。親父に続いて俺まで…」
「母さん的には、ね。そうなるかな」
「は?何?」
「父さんの方の家系なのかなぁ。実は父さんも、こっちで暮らしてたりするよ。あ、独身は貫いてるけどね。夢は現世界に戻る方法を探す事だってさ」
「…親父…こっちで生きてんの?」
「バリバリ生きてる」
「俺のこれまでの涙返せよ」
「まぁ、あんたも頑張りな。性別は体に引っ張られやすいから、そのうち女子的な思考になってくと思うし?多分?」
「それはそれで嫌だよ!」
俺が俺でなくなるって事じゃないか。
「まぁ前例が無いからね未知数だよ」
この世界については、ここの両親に聞くようにと美奈姉…ナナは帰って行った。
何だか第2の人生…波乱万丈な未来しか見えない。
「やってけんのかな…」
小さな白い手のひらを見ながら、やるっきゃないよなーと両親の話に耳を傾けるのだった。