5 俺だよ俺
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だけど双子のように似た姿で産まれると聞いたはずだが?髪の色はともかく、今の俺は完全に女の子だ。何気なく確認したが、男についてるべきものもない。
「ルーナ様?大丈夫ですか?ショックなのは分かりますが、こちらでは貴女の帰りを待っていたご両親もいるのですよ」
ナナの背後には、心配そうに泣きそうな顔の若い夫婦がいる。あれがこの体の両親か。
俺の父親はガッチリしてて、どんな作業もこなす頼もしい父親だった。ガテン系ってやつかな。
この体の父親は線が細くて、身なりのいい…いかにも貴族って感じだ。
「はい、ルーナ様」
ナナが水を差し出してくれた。有り難い。喉が張り付きそうな程に乾燥していた。冷えてて最高に美味い。
「ありがとう。それで、さ。ナナに聞きたい事があるのだけど」
「はい!その為に私の様な者がいるのです。何でもお聴き下さい!現世界の話も、その後の事とか後で教えられますので…」
「じゃぁ単刀直入に聞く。ナナ」
「はい?」
「お前…美奈姉だよな?」
「…へ?は?え?いや、でも…。はー!?」
一瞬にしてナナは固まった。何が起こっているのか、整理が追いつかないのだろう。
「俺は雅也だ」
「ま、雅也?え、でも体が…似ても似つかない…性別も違うし。こんな事例は…初めてで」
混乱中らしい。
性別や見た目が、双子のように似ているのが普通な様だから訳が分からないのは当然だろう。
もう一度鏡を見る。10歳…より小さくないか?にしても、可愛いなぁ。将来は美人でモテモテだろうな。って、今の俺の姿なんだけどな。
男にモテる所を想像して、気持ち悪くなる。
「本当に雅也なのね?」
「そう言ってるだろー。美奈姉は髪と瞳以外は、現世界?とやらと同じなんだな?行き来が出来るとか、便利すぎてウケる」
「本当に雅也だ…。こんな美少女からウケる、とか聞きたくなかった」
ガクリとうなだれる。
そう言われても中身は俺だしなぁ。
話を聞いていたらしいこちらの両親も、混乱中みたいだ。