30 本物
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「なぁ、あなたも龍の姿になれんの?」
日常にポチャンと色がついた。目の前の人の子の、コロコロ変わる表情が物珍しい。
我に話しかける事に、何の抵抗もなさそうだ。
「なれる。見たいのか?」
「見たい!!!」
興味津々な様子だ。見たところ貴族のようだが、そうは感じさせない。自然体な人間だな。精霊が気になるのも、頷けると言うものだ。
「良かろう。目に焼き付けるがよい」
「焼き付ける!」
俺がそう言った瞬間、目の前が真っ白に光った。明るさに目がなれると、そこには宙に浮いた大きな白い龍が居た。
「満足か?」
「す、凄い!すげー綺麗!これが純白ってやつなんだな!」
眩しい。何にも染まらない程に強い白。でも何色にも染まれる可能性のある白。
また目の前が光る。すると、元の場所に人の姿で座っていた。
「我はただの龍だ。何も無い…ただの龍だ」
「何言ってんだよ!すげー綺麗だった!あんな白さ見た事ない!」
「本物の龍は火竜なら赤。水龍なら水色。風龍なら銀色。地龍なら緑。雷竜は黄色と決まっている」
「それはそれで見てみたいけど…って事は、白は特別なんだ!?カッコよかったもんなぁ」
この人間は何を言っておるのだ?我は異質なのだ。特別ではない。
「白って、どんな色にもなれそうだよなぁ」
「どんな色にも…」
「ひょっとしたら、龍の原点の姿なのかもな!白が始めで、そこから色々な色が産まれて!無限の可能性がある、本物の龍なんだよ!」
目を見開いて人間の少女を見る。そんな事を言われた事などない。皆が半端者と除外してきたと言うのに。
我が原点?本物?可能性?何だか胸の奥が暖かくなる。これまでの辛さで凍った心が、温もりでほぐされていくようだ。




