18 過去
18
それからの生活は、ガラッと変わった。誰よりも早く起きて川で水を運ぶ必要が無く、掃除をすることも無い。
「レミット」
「は、はい!」
「君はこの環境で、育つ資格があるんだ」
その日から僕の生活は180度変わった。戸惑う毎日は、幸せを噛み締める。
「まぁ、こんな感じでね」
「元両親ヤバくないか?」
「仕方ないよ。昔からの言い伝えだから」
「納得出来ねぇなぁ。お前はお前で、そんな伝説みたいの優先されて辛い想いをしなきゃなんねーんだよ。俺はお前が優しくて、良い奴だなって思うけどな」
「ルーナ嬢…」
ポロポロと泣き出した。辛かったんだろうな。泥水を飲む様な過去があったんだろう。
「優しいんだね。君はやっぱり、僕のママだ」
……ん??
「急にごめん。僕ね遠い過去の記憶があるんだ。前世の前世の更に全然みたいな。間は覚えてないけど、最も過去の記憶」
まだ世界が1つだった頃。この話は何故か昔から言い伝えられている。俺も知ってる。
世界が1つだった頃に、戦争ばかりで世界の滅亡を感じた姫が、決して抜いてはいけないと言われていた剣を大地から抜き、その途端に世界は大きな重なる2つの世界と、小さな多数の世界に割れてしまったと言う。
戦争所ではなくなり、世界は新たな進化を続けていると言われていた。
レミットには1つだった頃の記憶があるらしい。
「そこでも僕は兄妹から産まれた呪われた子として、塔に監禁されてしまうんだ」
「そう、なんだ?」
「ママは毎日の様に会いに来てくれた。ごめんね、ごめんねって。ママはママの兄に襲われたんだ。ママは悪くなかった」
レミット…人生ハードモードすぎやしないか?て言うか俺が、そのママなのか?
「前世の名前もレミットだった。ママは違うんだね。リーファ。それがママの名前だよ」
「………」
その名前を聞いた途端、意識が奥に吸い込まれるようになった。この異世界の様な世界。呪われた子として産まれた兄。占いで選ばれた身代わりの兄。双子の姉。
一気に情報が流れ込んでくる。剣を抜く感覚が手に残っている気がした。
「ルーナ嬢??」
「マジ…かよ」
今までと感覚が変わった気がする。何かが変わった。でも俺はオレ、雅也な事に変わりない。
「何か今日は疲れた。もう帰ってもらっていいか?」
「うん。分かった」
その瞳が悲しげに揺れた。
「違うんだ。俺がお前の母親だった事は確からしい。落ち着かせたいだけだから。また遊びに来てくれよ」
「うん!分かった!また話そうねルーナ嬢」
「またな」
ホッとした様子のレミットが帰って行った。
さてさて。俺は…この体は何なんだよ。