15 畑にて
15
「落ち着いたか?」
執事さんが持ってきてくれたお茶を飲んで、ふーっと息を吐いた。
「ん、大丈夫」
「で、お前は雅也…なんだな?」
「そう言ってるだろ。美奈姉…ナナにも会ったよ」
「そうか…母さん…元気にしてるか?」
「明るく振る舞ってたよ。俺まで死んで、今はどうなってるか分かんないけど…」
「そうか…心配だな」
「そういや、美奈姉が母さんにもここの話をしてみようかなって言ってた」
「信じない…だろうな」
「なった本人もまだ信じられないしなぁ」
「お前は別格だろ。美少女に生まれ変わるなんて羨ましい。でも年齢は10歳くらい若いんだぞ」
「そうなんだ?親父の両親…目覚めるまで待ってたんだろ?」
「あぁ。泣いて喜ばれてな。今は好きにさせてもらってるよ」
家でやるには大きすぎる畑を見る。結構実ってるなぁ。
『ルーナ…来て』
頭の中で声がした。小さな光が、俺を呼ぶようにフワフワとしている。
何だ?
「畑、見ていいか?」
頷かれたので、光を追って歩く。すると、端の地面でクルクルと縁を描いて何か知らせようとしている。
ここか?何かデカイ石があるな。緑の石?
『それダメ。この大地育てる』
畑全体が薄く光り、畑全体に大量の蛍の光りが浮き上がるように瞬いて消えた。
「何をしてるんだ?」
親父には見えてないのか。さっきのは精霊と言うやつだろう。
「これ拾っただけ」
「おおお!それは!そうか、このせいだったのか!」
どうやら、ただの石では無いらしい。
それは大地のエネルギーを吸い取る魔石らしい。
どう頑張っても、畑の実りが思った程なくて気になってたらしい。
「これで畑が良くなるぞぉ!」
嬉しそうだ。何か少し親父に親孝行が出来たみたいで嬉しい。
「じゃ、頑張ってな。会えて嬉しかったよ」
「お前は俺の息子だ。また、いつでも来い」
「…あぁ。サンキュ」
迎えてもらえる場所。今の俺には、どれだけ心強いか。
多分…土の精霊の加護がついたと思うし、思う存分畑仕事が出来るな。
「また来る」
今の母さんが心配する。俺は館に戻る事にした。