14 願い
14
俺が目覚めてから5日。
両親は扱いに困ってるが、何とか娘と交流したいらしく食事は一緒にとることになっている。
そんな昼間、ふと思い出した。親父ってどこにいるんだ?と言うこと。
ジョセさんに聞いてみると、中貴族の1人で変わり者で有名らしい。
親父が死んで…泣いて…泣いて。なのに親父は変わり者として生きてきた訳だ。複雑。
「親父に会いたい!馬車を頼む!」
「かしこまりました」
転生5日にして、父親に会いに行く事になった。
馬車で15~20分くらいだろうか。大きなお屋敷に到着した。うちよりは小さいな。
大貴族と中貴族の違いってやつか。親ガチャと言う文字が頭をよぎった。大変だよな。
コンコンとドアノッカーを鳴らす。すぐにドアが開き、執事らしき男性が現れた。
「あの…2年前くらいに、こっちに来た息子さんに会いに来たんですけど」
奥からこのお屋敷の夫人らしき人が姿を現した。
「お嬢さん。息子に何か?」
「あ、お母さんですか?えっと…ちょっと会ってみたくて?」
「興味本位なら、お帰りなさい。あの子はあの子らしく生きているから。泥にまみれる貴族が居ても何の問題は無いわ」
「泥に…?」
親父は土いじりが好きだった。畑を借りて、よく野菜や果物を作るのが好きだったなぁ。
こっちでも同じ事やってんのかよ。
「興味本位では無いです。俺は前世の親父に会いに来ました」
正直に答えると夫人は、え…と言ったきり固まった。
「5日前に転生した者です。中身は男で、貴女の息子さんのむすこです」
「あ、ら…あらあら。分かったわ。あの子は裏の庭にいるから」
どうぞ、と執事の人が俺を促した。貴族だろうと何だろうと、やりたい事やってんだなぁ。
「あちらにおいでです」
庭の細道を抜けると、そこには見事な畑が広がっていた。わー。よくこんな面倒な事をするなぁ。
親父らしい。
「ロット様。お客様です」
畑の隅に座っていた大柄の男性が、立ち上がりこちらを見た。
赤みを帯びた髪と瞳の色を除けば、ムキムキの筋肉男は間違いなく父だった。
「何だ?畑をする貴族が珍しいか?お嬢ちゃん?」
声も父のそれだった。
知らない間に、ポロポロと涙がこぼれる。急に倒れて、そのまま亡くなった父。
喧嘩した後で、謝れなくて。どんなに苦しかったか。会いたかった!幽霊でも会いたかった!
泣かないで居られるわけない。
「お、おい?俺は別に怒ってねーぞ?泣くな?な?」
「ごめん…なさい」
「いや、大丈夫だから。平気だから泣くなよ〜」
「ずっと謝りたかった。親父が急に死んで。後悔しか無くて。ふざけんなって。謝らせろよって」
「ん……?お前…」
「ルーナ。昔の名前は雅也だよ、親父」
「……は?雅也…?」
親父も固まった。似ても似つかない、息子を名乗る少女が居たら当然の反応だ。
「馬鹿野郎!」
堪らなくなり、俺は親父に抱きついて泣き尽くした。生きてる間に、たくさん話したかった。
その夢が叶うのだ。