115 狐の名
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「さっきの妖力は俺が出したんだよ。魔王国の民でもある人でもある、か弱いハーフの子を狙うなんて狐は卑怯者だな」
「お嬢ちゃん、この世は弱肉強食だよ。自分の命を繋ぐ物があったら、手を伸ばして利用するだろう?」
「この子がお前の命に関わるのか?」
「この子は凄くいい。いい魔力だ。ハーフなのも良い。バランスが取れているんだよ。この子の命があれば、4つの我の命が満タンに埋まるだろうさ」
「それが叶った時、この子の命は?」
「この人間の命?そんなもの綺麗に吸い上げて、綺麗な水晶 にでもするさ〜」
「よく分かった…。お前は敵だ!今のところな」
偉そうな態度に狐は眉をピクつかせる。何なんだ、この小さいのは。人間なのに妖力もちで、僕を怖がる事も無い。
まだ生まれてまもない人間に、なぜ僕は手を震わせているのか…。怖がっている?僕が?
「おい狐ー」
「な、何だ?」
「俺はルーナ。お前の名前は?」
僕の…名前…。そんなもの使った事も問われた事も無い。気づいたら1人で生き抜いてきた。生きていく手段も、何もかも実践で学んだ。
だが温かいものに包まれていた記憶もある。母親というやつか…?何か…呼ばれていた気がする…。思い出せそうで出せない。
「分かんないのか?仕方ないな…コマンド!」
えっと狐の妖怪。結構強いんだな、こいつ。何か…生きる為に必死に1人で生きてきたんだな。
さーて。名前はっと。天白…あまはく…か。結構位の高い狐なのかもな。自力で、ここまで強くなるなんて。努力家だな。だけど人に害をなすのは、見過ごせない。
俺は魔王なのだから。そして…妖の王みたいだから、な。メニューを閉じて俺は狐の方を見た。
「お前の名前は、天白だよ。良い名前だな」
「な!!?」
言葉から広がる母との記憶。温かい、とても桜が綺麗だった。兄弟達と甘え飯を取り合い、とても愛しい毎日であった。
「なぜお主がその名を…」
「そう言う能力持ちだ、とだけ言っとく」
「だが、僕はもっと生きる。生きねばならぬ!邪魔はさせぬぞ!」
「おぅ!俺も本気出させてもらうよ!」
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