10 朝から大騒ぎ
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「ルーナ様、起きてらっしゃいますか?」
起きてはいるが、返事を返すのはダルかった。まだ眠い。
何だかんだとチート見せつけられて、良く寝付けなかったのだ。
「まだ寝る…」
一言だけ絞り出す。
その途端ガチャとドアの開く音がして、ドタドタと数人が部屋になだれ込んできた音がした。
「な、何だ、何だ?」
メイドが7名ほど立っていた。その1人が1歩前に立ち、ぺこりと頭を下げた。
「婚約者のリスタ様がお見えになります。ご準備のお手伝いをさせて頂きます」
パチンと指を鳴らすメイドさん。残り6人のメイドが、一斉にこちらに向かってきた。
ヤバい怖い。そう思ったのが最後の記憶と言って良いくらいの目にあった。
ただ何一つ動かないままで、メイドが湯浴みから乾かし着替えまで坂道を転がり落ちる様な勢い。その後、鏡の前にはフリフリドレスを来た幼女なお嬢様が立っていた。
俺、ことルーナさんである。自分で見ても可愛いな。寝不足でクマが出来てるし、力尽きた出で立ちだけど。
「おー。ルーナ様お可愛いですよ」
目をキラッキラにさせてるジョセ。グーで殴りたい。世のお嬢様はメイドに着せ替え人形にされるのか。
「さぁ、そろそろ朝食が出来ます」
「何か食欲ない」
「まぁまぁ、食べれば美味しくて止まらなくなりますから」
まぁ確かに美味しそうだった。
柔らかなパンに生ハム?のような物と野菜が挟まっている。
ソースなどは何味なんだろ?
スープも用意されていた。他にも小皿に少しずつ食べ物が乗っている。
「うまい!!何だこのソース。パンとハムに、相性バッチリじゃん!」
美味しい物は人を元気にするもんだな。
「食べすぎた…」
気持ち的には行ける量なんだけど、10歳程度の娘の胃にはきついらしい。
「だいぶ残しちゃったな」
「ルーナ様が気になさる事ではございませんよ」
ここに美奈姉がいたら、どつかれて食え!って突っ込まれるんだろうな…。
「もう少ししたら、婚約者様のお1人であるリスタ様が挨拶に来られるそうです」
「可愛い子?」
「あ、いえ17歳の美少年でございます」
ですよねーーー!
俺さ、こっち来てまだ数日なんだからさ。色々と周りが動くの早すぎね?
もうちょいリハビリ期間みたいのが欲しいんだけど。
「それ断れないの?目覚めて数日の病み上がりの異世界人なんだからさ」
「お見舞いに来てくださったようですよ」
見舞い…か。くっそ、断れねぇ。
まぁ美少年ならマシか。幼女好きの高貴な貴族なんて出てきたら、たまったもんじゃない。