春 4月5日 作者: 浦田茗子 掲載日:2023/04/09 桜が、しずしずはらはら舞い散っていた。 花曇りの下、アスファルトがぽつりぽつりと白く明るい。 深紅のガクが若葉に寄り添い、切なさに優しさが透けている。 畑の横、庭のみどりの間に、小さないろいろの花が咲いている。 ほんとうの名前なんて、ほんとうはだれも知らないのに。 ほんとうの名前なんて、ほんとうはだれも知らないから――。 すっきりした襟足に、軽やかなペダル。 朧夜、道端のしげみから、気が早いいちばん虫の声がした。