Single Flower
ネットの広告から始まった。
神足と名乗る女の子がバンドメンバーを募集していて、それに目を付けたのが私だった。
幼馴染のマーガロを誘い、神足が呼ぶ場所へ行くと既に、ドラムの安栖里が居た。
その後、双子で姉はキーボード、妹はベースをやる女郎花姉妹と知り合い、あっという間に、まるで導かれるようにバンドメンバーが集まって、とんとん拍子で話が進んでいった。
練習を重ねていると、ふと女郎花の妹が口を開いた。
「私たちのバンドの名前、どうしますか」
黙り込む5人に、呆れたのか首を傾げる妹。
しばらく続く沈黙。
「ひとりばな」
その沈黙を破ったのは、神足だった。
「ひ、ひとりばな?」
聞き返す私。
「そう、孤独の独に、中華の華で独華」
「なんか…気取った名前だな」
「でもいいじゃん!ほら、中二病って感じ!」
「神足中二病だもんね?」
「ちがうもん、中二病じゃないもん」
拗ねてムキになる神足、それを見て笑う私達5人。
神足も、私達の笑顔を見て微笑んだ。
それから、一年と数ヶ月後に私たちは解散した。
予告も無しに、ライブも無しに事務所から「解散しろ」と告げられた私たちは、顔を見合わせ、怒りにも悲しみにも似た感情を胸に抱きながらいつも通りスタジオに籠った。
黙ってギターをチューニングする私。
みんなの顔色を伺いながらエフェクターの確認をしているマーガロ。
空調を気にするフリをしている雪。
堪えきれず静かに涙を流すクロエ。
スティックを握りしめ、みんなを見つめているラフ。
アリスは、振り向きこう言った。
「歌お、最後に」
私達は、うなずくことしかできなかった。
それしか、したくなかった。
『意味深な歌詞の羅列
大して意味なんて無いくせに
伏線らしくない伏線って
貴方も解っていないくせに
あぁ、汚い言葉を呑吐
目標提示なんてDon't
すべからくして 誘わせてみて
上手に歌って踊って ロボット
ねえ
BPMを15だけ上げる勇気をください
こんなつまらない歌 私の手で変えてみせるから
ねえ
キーを少しだけ下げてくれないかな
私らしく 歌いたくて 謳いたくて
個人的思考に基づいた
捻くれ屋の商売人 なんて
性癖拗らせ続けて
二度と現れない王子に夢見て
他人事じゃないロジック
歴史的瞬間盲目民族
全てにおいて最低な
貴方達の目線を
塞いでしまいましょ 飲み干せ
天才のフリをした凡人
対して深くもない癖に
凡人のフリをした天才って
敗北の味は甘くて美味しいの
あぁ、貴方のために鈍頭
言う言葉全て Don't
誘わせてみて すべからくして
上手に歌って踊れよロボット
ねぇ
BPMを15だけ上げる勇気をください
こんなクソみたいな歌 私の手で壊してみせるから
ねぇ
キーをもう少し下げてくれないかな
私らしく歌いたくて 謳いたくて
個人的思考に基づいた
捻くれ屋の商売人 だって
性癖拗らせ続けて
二度と現れない王子に夢見たって
他人事じゃないホリック
歴史的瞬間盲目民族
全てにおいて最低な
貴方達の目線を
塞いでしまいましょ 飲み込んで』
持っていても仕方がない楽器を背負い、スタジオへ背を向ける私達五人。
アリスは一人一人の名前を呼び、スタジオ近くの公園へ行こうと言った。
真剣なアリスの表情に、私達五人は従うことしか出来ず、公園へと向かうことにした。
公園に到着し、わがままを言ったお詫びだとアリスが買ってくれた缶コーヒーを一口飲む。
ずんと重い空気。
どうせならスタジオにいたかったな、なんて、沈みかけてる夕日を見ながら思ったっけ。
アリスが口を開く。
「独華の、名前の由来、言ってなかった」
「……?」
顔を上げる五人。
「由来はね、五人は私にとって命を繋ぐ要みたいに重要なもので…みんなもそうであってほしいから」
「だけど、いつか私が一人でも立てるように、生きていけるように、みんなも、そう生きて欲しくて、そうであってほしくて」
「私、花は枯れる時が最も美しいと思ってるんだ」
「その枯れる瞬間が誰に見られていようが、誰にも見られてなくても、なんにも、一つも関係ない」
「独華が通過点で構わない、独華が、私たち六人が枯れようが…枯れて、その後に何も残らなかったとしてもそれでいい」
「何が起きても構わない、例え今世界が滅んでも良いとさえ思ってる」
「六人になった瞬間からそう思ってた」
「ただ私たちはここにいる、それを伝えたくて…それを大事に思って欲しくて、バンドの名前を独華にした、しようって言った」
「解散はもちろん悲しいよ、本当は大泣きしたい…でもこの悲しさは乗り越えるためにある」
「みんな無しでは生きれない私の背中を押して、側にいてくれて、妹みたいに愛してくれて、大好きって言ってくれて本当にありがとう」
「いつか魂の灯火が消えてしまっても、いつか枯れてしまっても、今日の言葉を…何もかもを忘れてしまっても構わない」
「ただ、今だけはこうさせて、今だけは独華でいたと、私の胸に刻ませて」
「みんなはこの世に存在するどんな花よりも美しいよ」
「今までありがとう、お疲れ様」
微笑むアリス。
何も言えず、何も出来ず泣く私達。
過呼吸になるまで泣いて、喉枯らして泣いて。
アリスだけは泣かなかった。




