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人を見る目



僕は昔から、人を見る目が無いと言われていた。


好きになった女の子が万引きの常習犯だったり、尊敬していた先生が淫行で捕まったり、大好きでたまらなかったアーティストがドラッグで捕まって芸能界を干されたり、色々。


僕自身も見る目が無いなと呆れていながらも、少しだけ面白がっている部分があったりした。

警察は僕が好きになる人をマークしておけば犯罪が減るんじゃないか、なんて思ってた。



そんなある日、本当に好きな人達が出来た。

心の底から尊敬するし、ずっと側に居たいと思っていた。

ずっと兄弟が欲しかった僕は、尊敬できる兄や姉が出来たことに心の底から喜んでいた。



「お前のいつものアレ出るんじゃね?」

「……え?」

「人の見る目無いじゃんお前、だからいつも絡んでる人達も捕まったりするんじゃね?」

「……そう、かな」



親友の言葉を、聞いた

ぐっと、飲み込んだ

硬く結んだ拳を、飲み込んだ

背に隠した

否定されたことが悔しかったわけじゃない


ただ呆れた

呆れて怒りが沸いてきた


あの人達が犯罪を犯してからなら分かる

でもあの人達は何もしてない

なのに決めつけるのはおかしくないか

というかいつも僕を否定するお前は何なんだ


そう言おうとしたけど…乾燥した喉がそれを許さなかった。

それに彼は唯一無二の親友だったから、僕を受け入れてくれる彼に離れて欲しくなかった。


だから、ソーダを一口飲み、いつも通り彼の言葉を受け入れた。




「確かに見る目無いと思う」

雪さんがそう言った。

白髪のショートカットの彼女。

僕の胸くらいの背で、肌も睫も髪も、彼女が好んで着る服も全てが真っ白な彼女。

日に当たると溶けてしまいそうな彼女が、信じられないくらい強い言葉でこう言ったんだ。


「友達に否定されたの、これが初めてじゃないんでしょ?」

「……はい」

「そんな友達とずっと一緒にいる君は、確かに人を見る目無いと思う」

「……そうか」

「開き直らなきゃいけなくなるんでしょ?そうやって自分を抑制してしまうような相手は選んじゃいけないよ」

「…雪さん……」


胸にじんと染み込んだ。

やはり、否定されたくない。

貴方の事を、誰かに否定されたくない。


「私もね、昔の…知り…合いが、アウトドア派で…色々、頑張って付き添ってたんだ」

「……その結果、何か起きたんですか?」

「勘が良いね…そう……火傷したんだ、日光で」

「……火傷?」

「私アルビノだから…それに色々、嫌な思いもして……でね、その…友達は「私の心の問題だ」とか意味分かんないこと言ってて…だから私…」

「縁を切ったんですか?」

「そう、クロエに言われてね…」

「……なるほど」

「うん……私、君の事否定しちゃったけど、私だって人を見る目無いんだよね」

「……」

「でも、いくら見る目無くても…隠れ家の人達になら裏切られたっていいかな、なんて思っちゃってる」

「……雪さん…」


二人で紅茶を飲んだ

ふんわりとした暖かな香りが僕の鼻腔を満たした。

お腹の辺りがじんわりと温かくなって、雪さんは太陽みたいな人だなと思った。


「二人で何してるの?紅茶?僕も飲みたい!」


人懐っこい僕の兄。

兄で留まって欲しくない彼。


「僕淹れますね」

「ほんと?僕手伝うね!」

彼になら、裏切られたって。

彼になら、何をされたって、構わない。

雪さんや僕に甘え、たくさん話している彼。

僕のロールモデル。

僕が、ここに来るきっかけになった人。


大好き。

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