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似た者同士

似すぎて怖い二人の話。


「おかえり」

「……」

「……なに」

「……」


…仕事が上手くいかなかったのか、何か気に食わない事があったのか、帰宅してすぐ俺の首へ頭を擦り付けてくる彼。


「なにかあったのか」とも聞けず「話してみて」とも言えず、今の俺には強く抱きしめてくる彼の頭を撫で、「大丈夫」だと呟いてみる事しか出来なかった。


するとその言葉に満足したのか、何も言わずに俺から離れ、自分の部屋へと帰ってしまった。



……やっぱり様子が変だな。


扉をノックし、返事を聞いてから…そうだ、晩飯何を食べるか聞こう、連絡しても返信ないし直接聞こう。

落ち込んでるあいつに突然「飯なに食う?」って聞いたらどんな顔すんのかな。

驚くかな。無視しちゃうのかな。

口下手な上に頭の回転が遅いから気の聞いた言葉が浮かばなかったのが原因。

でもあいつは分かってくれる。


そう信じ、「なに食う?」と聞いてみると、彼は顔を上げ「お粥が食べたい」と言った。


体調でも悪いのかと不安に思い、彼の額に手を当てたところで「やべえ、やってしまった」と気付いた。

彼は俺と同じでボディタッチが嫌いなんだ。

なのになんの気遣いもせず額に触れてしまった。

そうだ、死のう。

ごめんって言ってから死のう。



何て変なことを考えていると、そんな俺の手首を掴み、じっ、と見つめてきた。


「……なに」

戸惑ったせいでか細い声しか出なかった。

しかし彼は俺の間抜けな声を笑うでもなく、からかうでもなく、しっかり受け止め「…戸惑わせてごめん」と答えた。

答えてくれた。



「……お粥、作るわ」

そう言い残し部屋から出ようとすると、彼の少しだけ高い声が俺を呼び止めた。


「あ……待って。」


振り替えるが、俺と同じで口下手な彼はしばらく悩んでから

「同僚に、君と二人で住んでると言えなかった」

と呟いた。


「……だからなに?」



そんなそっけない返事をしてしまった。


そんなことであんなに悩んで俺の首に頭擦り付けてきたのか。

そんなことで俺になんか申し訳ないとか思ってんのか。

そんなことでお粥しか食えなくなってんのか。


ウケる。ウケるな。



「……僕…君の事愛してるから、それを分かって欲しい。」



わざわざ台所まで追いかけてきて、そう言いながら抱き締めてくれる彼の体温が暖かくて冷たい。


隣に立って、俺のご飯作ろうとしてるのが愛おしくてたまらない。




「……俺も愛してるよ。」




聞こえるか聞こえないか分からないくらいの声の大きさでそう言ってみると、聞こえたのかにやにやと笑いながら尻を叩いてきた。



分かられなくていい。


この世界に俺とお前がいればそれでいい。

それだけでいい。


部外者なんて必要ないんだよ。



「お粥で足りる?他なに食べたい」

「焼き鳥。」

「わかる、それも塩な。」

「塩以外は邪道。」

「タレはたまにでいい。」

「たまに食うだけでいい。」

「分かる。」

「な。」

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