4話~皇太子~
僕はいろんな人を見てきた。お父さん、王に連れられて多くの人と謁見してきた。そのためか人を養われたよう。残念だけど他の能力に関しては全く才能がなかった。特に剣なんてひどかった。運動にしましょうと剣を取り上げられてからは握らせてもらってさえいない。
王代々の墓地に侵入した男を見ていたけど、不思議に思った。ここに連れてこられたことも分かっていないような感じである。あのような人間が間者のわけがない。しかし、周りの側近は疑っているようである。当たり前のことではあるが、疑うのが仕事でもあるから。
しかし、体の線が非常に細い。今までどのような生活を送ってきたのだろうか。農業などをやっていてももう少し線が太くなるはず。貴族ということも考えられるのだけど、貴族の言葉を知っているようにも思えないね。会話はできているからそれなりに学があるのだろうけど。
ハーグから渡された資料を見たが、まったくの白紙である。…、ハーグの方を見たがハーグは何も言わない。この情報しかないということは皆目見当もつかない人であると。少なくとも近隣の国ではないということだろうけど、そんなことはあり得ないと思う。背が180センチを超えるような人間はそんなにいないため目立ったはずだし。
まあ、ないものはないのだし。伝令が入ってきた時にも彼は驚いた顔をしていた。あの驚き方であればこの国の話も聞いていないのだろう。しかし、ではどうやって彼は生きてきたのだろうか。
ということで牢屋で話を聞くことにした。話を聞いていたが、彼は本当に何も知らないようだった。ただ、兵士にしたいと言ったら驚いていた。適性という面で驚いたというよりも提案に驚いたように思えた。しかし、彼には兵士になるしかない。食い扶持を稼げないから。あまり良いことではないと思う。彼はきっと大きくなるから兵士として雇った方がいいと思っている。そして、真面目であるならばコーリン将軍のところがいいだろうね。
さてと、後はみんなに任せて押印しますか。