3話
道路は舗装されていなかった。土である。携帯している食事は干し肉などが中心になっている。これでは体力が持たないだろう。しかし、誰も文句を言わずに食べているということはこの携帯食が普通であるということだろう。電気というものを使っていないのが分かった。幸いにして太陽光でスマホを充電できる充電器を持っていたのが良かった。
着いたのは城…、にしては小さい。家令が出てきているので、この建物が居城なのだろう。本当に大きくない。堀などはあるものの1メートルあるかどうかで浅い上に門が守ることができるような造りをしていない。
男に引っ張られながら城を案内される。会議室で床に座らされた。石でできているため、思った以上に床が冷たい。小さな背の男は皇太子らしい。道理でよい服を着ていると思った。ただ、皇太子という感じではない。気さくな方らしく貴族の挨拶なども求めなかった。公式的な会議でないというところもあるのだろうが、皇太子の人柄だろう。
皇太子は少し顔を引き締めた。あんまし変わっていないが。しかし、俺が出現したところが悪いのは事実らしい。墓地…。その国の風習によっては王族以外に立ち入り禁止など神聖な場所として指定されているところもある。墓地に居るのは不味かったが、そもそもあそこに居たのだから仕方ない。
側近の中年の男性が俺の状況についてこの場には俺を連れてきた男と女を合わせて6人ほどがいる。発言した男性も年は少し取っているが、体は引き締まっている。話を聞いていると転移した場所は歴代の王の墓だったらしい。国宝に指定されているため入るには許可がいる。
…信用されていない。どこかで口裏を合わせたのだろう。情報が全く入ってきていない。今回の墓地については俺の反応を見るために教えている。間者と思われているらしいが、周りの服を見る限り、かなり浮いているだろう。このような人間が間者と思う方がどうかしているが、仕方ないことでもある。異世界から転移している人間はそのように映る。持っている物も分からないものだから。
ただ、意見の中に死刑や打ち首があるのは怖い。疑わしきは罰せずという考えもあるが、疑わしい人は全員罰するということもある。流石にそうなれば逃げる手立てがない。
そんな話をしている最中、いきなり扉が開かれる。…、伝令か。どうやら、軍勢が攻めてくるらしい。その数は5千。みんなの表情を見ているが、驚いた様子はない。ただ、この5千という数が多いか少ないかわからない。
皇太子が処遇を決めるらしい。戦時中にここまで怪しい人間をここにおいておけるとは思えなかった。しかし、変なところに連れていかれるのは目に見えている。ただ、耐えるしかないのだろうが、チャンスがあればいい。フードをかぶせられ、どこかに連れていかれた。
フードを取られて、鉄格子がある部屋に入れられた。…わずかに血の匂いがする。じっとしておくようにと。少なくとも暴れたりはしないよ。
連れてきたのは最初に会った男だった。
戦争に関しては関係のないことだ。その男もそのように言っている。牢屋に入れられて入り以上は罪人として扱われるらしい。
罪人…、確かにな。あの墓地が立ち入り禁止であれば罪人だろう。男はその言葉以外に何も発さずにそのまま部屋を後にした。結局、俺が得た情報は猪=スーラということのみ。彼らが情報統制しているのであればかなり優秀である。…トイレはボットンか。覚悟はしていたものの。まあ、罪人に気を遣う余裕もないか。
そのまま牢屋の中に入れられた。
自粛が長く続いていますが、皆様は元気でしょうか。
私はオンラインライブや漫画を読んで過ごしています。
徐々に物語も進めていきますので、自粛生活が少しでも楽になればうれしく思います。




