15話
わずかに見えた人影は盗賊で間違いないと思う。カーリン将軍もわずかに目を細めていたからな。ただ、コーリン将軍は反対側に回るように言う。絶壁を登ることはできないため、反対側から山を登ることになる。しかし、盗賊もそのことは分かっている。幾重にも罠を張っていることだろう。
周りを歩きながら山の雰囲気を確認する。…、分かるわけがない。以前の戦いでは迎え撃つ側だったため、攻めあがることをしていない。それに罠を仕掛けると言っても複雑な罠を仕掛けることはできなかった。時間がないので簡単な罠で終わっていた。しかし、盗賊は長く居座ることを想定して罠を作っている。俺たちが作った罠とは雲泥の差があるだろうな。
コーリン将軍はわずかに山を見て頷いていた。…、皆が首を傾げているな。一体、何に頷いていたのだろうか。まさか敵の罠がすごいと褒めているわけではないよな。先ほどの人影といい、普通の盗賊とは思えないような動きである。本来盗賊は野蛮な雰囲気があるし、短気な人が多いという印象だが。
しかし、この山を見る限り百人の盗賊がいるにしては異様に静かだ。もう少し喧騒が聞こえてもいいかと思うが、そのようなことは皆無である。それだけここの盗賊が強い、もしくは組織で行動しているということ。盗賊の頭は強いのだろうと思う。
コーリン将軍は麓に20人全員を集めた。弓矢で撃たれそうな気がする。どうしてこのようなところで集まっているのだろう。もう少し後ろに下がればよいはずなのに…。真面目に聞いているが、目の前の木が怖くて仕方ない。ある意味、緊張感はあるけど、できるだけ危険が少ないところに居たい。
今回の任務でやることは罠の解除と盗賊を拘束することであるらしい。拘束か…。難度がかなり上がった。殺すよりも拘束する方がはるかに難しい。能力が拮抗している場合に拘束するような余裕はないだろう。反対に殺される可能性すらある。コーリン将軍にとっては普通なのだろう。しかし、俺たちは…。目の前の兵士が拳骨を喰らった。
俺たちがやることは罠を潰していくことである。罠が十分に機能していれば敵は守りを固める。その上、罠にかかった兵士を討ち取る。迂遠になるが、罠を解除していくのが最短である。どうやら、コーリン将軍が罠の解除の仕方を教えてくれるようだ。本当に豪華だと思うのだが、もっと違う状況で教わりたかった。
罠の解除を教わりながら3人が警戒にあたる。罠の解除は必ず4人で行う。罠によっては力がいることと周囲を警戒するために最低2人は必要である。ただ、問題は罠の解除をできるかどうかである。やり方を間違えれば怪我をしてしまう罠もある。落とし穴は埋めればいいだけなので大丈夫だが、その他の罠に関しては対処法を学ぶ必要がある。
コーリン将軍は足を挟む木の仕掛けを見つけた。伸びているのは薄い糸。今は昼間なので糸が良く見える。しかし、夜や戦闘中に罠を確認するのは難しいだろう。こうやってみると前の戦で罠に引っかかった敵兵の気持ちがよくわかる。このまま戦うのは勇気がいる。コーリン将軍は当たり前のように説明しているけど、難易度は高いぞ。確かにこのような場合もあるから覚える。
罠ばかりに気を取られていたら、注意が周囲に分散する。どうしても戦いだけに集中するのが難しい。ここら辺は経験で何とかできるそうだ。どれほどの経験をしたら、戦えるようになるのだろうか。コーリン将軍に教わりながら罠の解除を続けた。




