14話
コーリン将軍はこの行軍では早めの休息を取り、行軍を終わらせている。その休んでいる間に訓練を行うのだ。俺以外の褒章者は全て貴族らしいのだが、基礎訓練が疎かになっているとコーリン将軍は言っている。しかし、そのように見えない。むしろ、彼らは俺よりも体力があるようにも思っている。ただ、その貴族たちも俺に嫌がらせをすることは全くなかった。むしろ、フレンドリーに話をしている。煩わしい貴族の言葉も使っていない。性格も考慮されているのかもしれない。
コーリン将軍は個々の能力を見ていた。ついてきた全員が訓練の内容が違う。腕立てなどの筋力訓練が主だが、他の兵士たちは走っていたり、剣を振っていたりと全員がそれぞれ別のことをしている。軍の兵士としては異様な光景であるらしい。基本的には兵舎の中での訓練の時にこのように個々の訓練を行うという。遠征などの時には軍での訓練を主にやっている。団体行動はみんなが集まった時にしかできないからな。
コーリン将軍は最初の1日目で兵士全員の素振りと動きを見ていた。2日目からの練習は個人で行う。練習はおおよそ3時間ほど。個人の練習を見ていくのであれば確かに20人ほどが限界だろう。コーリン将軍の副官なども連れてくることができていればもっと多くの兵士を鍛えることができただろうけど、敵が侵略する可能性がある状態では連れてくることはできないだろうな。しかし、コーリン将軍の個人授業はいいな。他の兵士も聞いたら羨ましがるはずだ。
また、コーリン将軍が考えていたのは食料の現地調達である。草原などでは難しいが林の中や山の中では食べることができる物が多く存在している。その分別をつけることで食料が枯渇した時の対応をしようとしているのだろう。しかし、軍であるならば、多くの食料が必要でとてもではないがまかなえるとは思えない。ただ、すぐに飢餓に陥ることもないということか。計画的に狩っていれば大丈夫ということだろう。軍の飢えをしのぐには難しいだろうけど、害獣となる動物を狩ることは悪いことではない。やはり、保管技術が発達していないのは食糧問題でかなりの遅れをとっているように思う。
それよりも気になったのはどこと戦争しているのかということである。内乱はすでに知っているからいいとしても、ケヴィンという最初に俺を捕まえた男がどこかと戦争したと聞いたのだが、どこの国のことだろうか。多くの兵士を動員したということで話題になっていたが、誰も教えてくれなかった。コーリン将軍も何か考えているのだろうけど、もう間者ではないと決まったと思った。まだ、貢献が足りないのかな。
今回の行軍で助かっているのは香辛料である。この国だけかわからないが、思った以上に香辛料を使った食料が多い。香辛料は美味しいだけでなく、日持ちさせる成分が含まれているものもあるから、存分に使っているのだろう。しかし、どんなにおいしい肉でも何もつけずに食べると不味いことはこの国に来てよくわかっている。行軍の時には食料かどうかも分からなかった。はじめはゴムのような感じがしたものだ。味もないし。慣れてくれば食べることができるようになるが、改めて食が大事というのは痛感する。軍の士気を保つためにも。
1週間が経ってようやく石山が見えてくる。どこも断崖絶壁に見えるが、反対側は緩やかな山になっている。…、普通に考えて殿下のいる街とかなり近いと思う。今までよく侵入を許したな。今回の盗賊は貴族を狙っているため、殿下も例外ではないと思う。しかし、コーリン将軍やケヴィンたちが知らなかったとは思えない。盗賊に危害を加えられる心配がないため、誘い込んだというところか。
マーク山は数年前の地震で山の半分が崩れてしまったらしい。崩れた時には人もおらず、石炭も取れなくなっていたそうだ。上層部はまだ取れる可能性があるため、存続する方針だったが、この状態になった時に廃坑が決まった。ここからさらに整備するには時間がかかる上に石炭があるとも限らないため、廃坑が決まった。
その絶壁の上にはわずかに人影が見えた。数人だが、統制が取れている。普通の盗賊ではない。コーリン将軍はもしかして、この盗賊の正体を知っているのではないだろうか。




