13話
任務は盗賊の討伐。どうやら、この周辺に盗賊が出るようになったと。どうもこの国で内乱が起きてから出現したらしい。なぜか盗賊は徐々に勢力を大きくしているらしく、今では百人規模ではないかと言われている。しかし、相手が対応しないというのは不思議だった。盗賊や山賊などの賊に関しては軍を起こすには良い機会であり、大義名分もあるためそのまま戦争にと言うこともありうる。
コーリン将軍が陣頭指揮を執るということだが、大丈夫なのか。敵国の脅威がある以上は軍として動かすことができないので少数精鋭でということか。内乱も続いているのでそう多くの兵士を出すことができないというのが本音だろう。しかし、コーリン将軍をたかが、討伐任務に参加させるということをよく殿下が許可したものだ。
殿下の話を直立不動で聞く俺たち。本当に少数精鋭の意味が分かっているのだろうか。今、集まっているのはコーリン将軍と俺を合わせても20名。盗賊よりも少ない人数で討伐するとか聞いたことがない。もっとちゃんとした討伐隊を作るべきだと思っている。この人数だと全滅もありうる。でも、上はこれ以上の兵数は割けないということらしい。少なくとも50人以上はいた方が良かったと思うが。まあ、仕方ない。仕えているため、文句を言うことはできないし。最善を尽くすだけだ。ただ、コーリン将軍が隣で笑っているのを見ると想定内ということだ。
最近では余裕ができて少し周りの様子を見ることができるようになった。ハーグなどの文官は特に興味がないようだ。コーリン将軍がいるからどうにでもなるだろうと思っているのか。彼もスーパーマンではないのだけど。ただ、コーリン将軍がいるおかげで兵士の士気はかなり高い。
肝心な盗賊の情報が思ったよりも少ない。出会った人間のほとんどが死んでいるからだ。盗賊にとっては情報を出さないために重要なことであるとも思う。彼らがそこまで考えているのかわからない。ただ、盗賊の頭は切れる。盗賊たちが殺している人は貴族が多い。どうして貴族が多いのだろうか。金を多く持っているだろうが、その分危険度は高い。私兵を雇っているだろうし。個人的にはそこまでして貴族を狙う必要がないように思う。
今回の任務では盗賊が根城へしているところへ向かう。向かうのは石が多くむき出している山である。名前はマーク山。マークという人間がこの鉱山資源を見つけて、そのまま名前をつけたらしい。その山には石炭があったらしく、しっかりと開発が進められたが、埋蔵量は思ったよりも少なかったらしい。盗賊たちは各地を転々とした後、マーク山に住処にしている。開発の段階で生活ができるように様々なものがあるらしく、住処にするには問題ないらしい。
殿下は少し心配そうにしていた。聞いている盗賊の人数よりもはるかに少ない人数で討伐に行くのだから心配にもなるだろう。しかし、コーリン将軍は殿下に対して何も言わなかった。コーリン将軍からすれば、この程度の人数で大丈夫と言うことである。俺たちは殿下に見送りされながら盗賊討伐に出発した。
コーリン将軍はこの行軍中にも訓練を行うという。彼の中では訓練の内容を決まっているだろうな。すでに討伐任務自体が訓練のように思うが、コーリン将軍からすればこれはただの任務であるらしい。訓練が厳しいと言っていたが、こういったところも厳しいな。盗賊の討伐がただの任務とは…。しかも、20人しかいない中でかなり難しい任務だと思うのだけど。
さらにこの任務に制限をつけたのはコーリン将軍である。コーリン将軍はこの行軍で馬をつけなかった。殿下からは敵がいつ来るかわからない状況なので、馬で行くようにとのことだったが、コーリン将軍は殿下の要請を断った。何か裏があるのだろうと思ったが、俺たちが行軍する時間が非常に長くなる。その上、今回徴集されているのは前回の戦いで褒章された者ばかり。ある意味精鋭とも見ることができるだろうが、ほとんどの兵士が若手。少し不安でもある。




