表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/301

12話

 寮の中というか部屋の中を見てみる。2つほど家具とバケツみたいなものが置いてあるだけで他には何もなかった。家具の中を見ても物がないな。しかし、誰かが使った後はあるので誰かが住んでいたのだろう。当面はここに住んでから買うようにする。…、少し我慢してから買うようにしよう。兵士になっているのだから、よく考えないといけないな。少ししたら兵舎に集合のため買う時間はない。


 トイレと洗面台があったのは正直助かる。ただ、大きく掘ってあるトイレは怖い。ここに落ちれば糞まみれで死ぬことになるだろう。1人暮らしだから助けは来ないだろうし。しかし、本当に掘っているだけなんだな。もう少し周りを加工していると思っていたけど。石が置いてあるだけというのは厳しいな。和式だし。


 洗面台には水がない。汲むのは外の井戸で汲むことになる。そのためか、家は平屋が多い。水を上まで運ぶのはかなり難しい。毎日の話だから、いかに力持ちの兵士と言ってもそのような場所に住居を構えることはないだろう。一般の人はなおさらだ。排水だけはしっかりとしているようだ。しかし、川に垂れ流ししているらしく、水道ではあまり生ごみなどが流れると詰まる原因になる。ここは異世界の国であるとしっかりと頭に入れておかないとうっかりしそうだ。


 個人的には竈のようないわゆる台所がないのはすごく残念だった。料理ができるわけでないけど、量を食べるのであれば自炊が一番だ。どうしても手間暇がかかるけど、一度に多くの量を作ることができるし、何より自分の好みに味を変えることができるのは楽だ。店の人を悪く言うわけではないけれど、柚子胡椒があればなとか、ご飯のお供にこれが欲しいとかできないから。長く住むようであれば頼もうか。


 論功行賞でもらったものがある。それがお金である。金貨百枚というのが多いのか少ないのかわからないけど、周りの兵士が驚いていたことからそれなりのお金だとわかった。ただ、価値も分からないので、とりあえずは兵士組と言うのに預けている。軍の中での銀行らしい。以前は普通の銀行でも貸し借りができたらしいが、戦争がない間に破産する兵士が増えたため信用を無くしたらしい。なので、軍主導で作ったということである。これに関しては素直にかっこ悪いと思う。


この部屋は前の兵士が住んでいたものの亡くなったらしい。食器や服もあったらしいが、すべて引き上げられている。俺としてはあってよかったのだが、この国の風習で死んだ人の持ち物を関係者以外が持っていると死に招かれると言い伝えがあるようだ。自分が気にしていないとしても、文化に気を付ける必要がある。最初は仕方ないが、この国で生活しようと思うのであれば覚える必要がある。


 部屋のカギを使ってドアを閉めた。もうすぐ任務ということで寮の場所だけを案内してもらったのだ。本来なら買い物をして次来るときに足りないものだけということにしたかったけど、そうもいかないらしい。しかし、すぐに任務なんておかしいな。コーリン将軍はそんなに無理をするような人ではないような気がしたけど。


 兵舎に着くと兵士が整列している。俺もその列に加わる。少し遅くなったから後ろに居たら、前に連れてこられた。どうやら、これから新しい任務として郊外に行くらしい。その発表会ということだ。忙しいな、軍と言うのは。いろんなところで事件が発生するから仕方のないことだろうけど。俺の名前が呼ばれているような気がしたが、ぼーっとして聞いていなかった。コーリン将軍の話はまどろっこしいからな。


 コーリン将軍がニヤッとしていることから何かを企んでいるのだろうな。彼は俺の肩をバンバンと叩き、笑いながら去っていく。不吉な予感しかしないのだがね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ