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2話

 猪は多くの血を流しながら倒れている。あの剣。しかし、大剣と呼ばれるほどの剣を扱うなんて昔の人でも難しいはずだが。どんなに軽量化を図ったとしても重さはあるだろう。汗を拭きながら立ち上がった。彼らは俺に対して気を抜いていない。その証拠に女は剣を俺の方に向けたままである。先ほどのように首に剣を当ててはいない。緊張のあまりうまくしゃべることができなくなるからだ。


 口が渇いている上に疲れでうまく思考ができない。男は少し顎に手を当てている。こちらを見ながら何かを考えているが、女は俺を監視しているようだ。日本という国はこの世界に存在しないらしい。日本という国を知らないということも考えているのだが、それなりに有名であったし、目の前の男は貧相な格好をしているわけでもなかった。


 女はあからさまに俺に対して憎悪を向けている。そこまでの憎悪を向けてくるほどの何かがあったか。しかし、ここに来ているだけであって何かしているわけではない。女の警戒は解けないが、男の方は首を傾げている。とりあえず、ここでの情報を収集しなければ。口を開こうとしたら、目の前には剣先がある。思わず尻餅をついた。いつの間に抜剣して目の前に移動したのだろうか。なすすべなく見守るしかない。

 

 彼らは威嚇しながらも話し続けていた。今後のことではなく俺のことを話している。縄があるかどうか聞いている。確かに不審者であるが、ここは誰かの領地なのだろうか。それとも誰かが住んでいる?護衛がいるとすればそれなりの人間がいるはず。


女は腰から小さな筒を取り出して、後ろにいる男へ手渡す。男は女の方を見た。女がわずかに頷いたのを見た。…、彼女の恰好は中世の貴族みたいだ。ロングスカートに帯剣しているのがアンバランスである。そのような走りにくい恰好で何をしていたのだろうか。


 男は直ぐに後ろを向いてどこかへ走っていった。女は俺に剣を突き付けている。わずかに頬に痛みを感じる。頬を触ると血がついていた。どうやら彼女は本気で剣を向けている。何か狂気のような感じも受ける。過去に何かあったのだろうか。


彼女から動かないようにと指示を受ける。少し態勢が悪かったので少し足を動かしたが、左の足首に痛みを感じた。彼女はわずかに横目で左の足首を見ていた。猪の突撃を避けた際に怪我をしているが少し痛みが長引きそうだ。痛みがひどいようだったら申告するように言われる。仮に罪人としても牢屋には運ばなければならないわけである。


 先ほどの男がほどなくして戻ってくる。どうも険しい表情をしている。縄を持ってきているようだから連行されるのだろうが、何をしたというのか。男はこちらを見ながら女と話をしている。


男は俺の手首を縄で縛る。そのまま縄を持ちながらどこかへ連れていく。


 森を抜けて、草原に出た。その先には馬車が4台ほど止まっている。今までの流れはライトノベルとそっくりだ。物語の中でも王族に捕まるのは運がいい。ほぼ名君の流れだからな。逆も多いので難しいところだが。縄で縛られるのは結構痛いな。俺の縄は馬につけられた。…馬よ、貴様良い体躯をしているが、暴れてくれるなよ。俺も一緒に暴れることになるからな。


 金髪の背の小さな男が出てきた。衣服から考えても高貴な人物であるらしい。何か話をしているが少し心配になるような言葉が聞こえる。反乱軍かそれとも敵に攻められているか。ライトノベルではよくある展開だが、実際に起こっているとかなり不安になる。


 兵士の表情が誰しも明るくないところを見ると劣勢なのだろう。…、沈む船に乗っているかもしれない。



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