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【旧】無口な異世界転移者が大将軍に成り上がるまで  作者: かかと
サエルガマズ滅亡編
287/301

外伝ジャック・ロイの戦い~ハーグ~③

 コーリン将軍の印象は手堅い武将という感じです。もちろん、忠義には厚いですし、無理する時もあります。ただ、自分よりもふさわしい人間がいた場合にはその人間に道を譲る。そのような器の大きな方です。今回の主戦は山攻めです。その苦手とする山攻めをコーリン将軍が2つ返事で了承するとは思いませんでした。作戦上、コーリン将軍が山攻めをした方がいいわけですが、彼は山攻めを苦手としています。昔の彼では引き受けなかったと思います。その上15万の軍勢ですからね。


 会議の中でコーリン将軍は何も言っていません。何を考えているのやら。しかし、これで私は作戦に移ることができます。副官を見れば準備を淡々と行っています。彼は私のところへ来て長いですね。黙々とする彼はあまりしゃべることはありませんが、周りの人間は彼の指示に従ってよく動いています。彼も働いていますからね。単純な作業を兵士に指示ながらもいろいろなところで指示を出し続けています。さて、私も準備しますか。


 …、もうコーリン将軍は始めているのですか。思ったよりも速いですね。彼はもう少し様子を見るかと思いましたが。兵糧を徒に消費するわけにもいきません。しかし、左のフォンも何か考えているようですね。どちらにせよ、私たちには取り決めをしていません。サエルガマズに何かを感じさせないためには何も共有しないほうが良いのです。今回の進軍では経験豊富な3人ですからね。無理して歩調を合わせる必要もないのです。自由にやって勝てばいいのです。


 ただ、注意しないといけないのはサエルガマズの兵たちは共有することがあるということです。中央の山の攻略に15万の兵を割いていますが、サエルガマズの兵が介入する可能性も視野に入れる必要があります。フォンと私はすでに倍の兵数の差がありますからね。すぐには向かうことができないでしょう。


 フォンが無理をしなければいいのですが。私が攻撃を苦手としていることは伝わっているはずです。サエルガマズの兵が攻勢に出ることは間違いありませんが、私のことは気にせずに自由にやればいいのです。私もそれに攻勢に出ることは可能ですし。


 サエルガマズの兵が全く動きません。こちらの状況を見ているようにも見えますが、私の場合は攻めることを前提としていませんでした。おそらく誘っていることは分かります。普通の将兵であれば攻めてくるでしょう。その攻めがないということはそれなりに戦術眼がある将兵か、単純に馬鹿な将兵かどちらかです。


 …埒があきませんが、待ちましょう。我々は不利です。無理に攻めてはいけません。部下を宥めるが億劫ですが、仕方ありません。あとは、コーリンの方の状況を見ながらですかね。


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