6話~ハーグ~
開墾というのは重要なことです。今までは品種改良で生産量を増やしていましたけど、それでは限界が来ます。ゲルラリア国でしか生産できないマイカは管理をしっかりとしていれば1年以上持ちます。そのため行軍では必要な兵糧となっています。反対に兵士たちはこのマイカで育っているため、マイカを切らしてしまえば士気に影響が出ます。馬鹿げた話だと思っているかもしれませんが、これは事実です。そのマイカの生産量を増やそうと思っても難しいのです。農夫だけでは。なぜかと言えばマイカの畑が特殊であることです。
マイカの畑を尽くすためには約5メートル耕す必要があります。すでに穴掘りだと思われるかもしれませんが、この作業をしなければマイカが枯れる可能性があります。マイカは普通の作物と同じですが、水の消費量が多いためかなり下まで根を張ります。だから、下の土が柔らかくないと下に根が伸びず、水を吸うことができないために枯れるのです。だから、日照りが長く続くような時には水を大量に撒く必要があります。根が下まであるということは隣のマイカと絡んでいるということですからね。枯れているマイカの周辺に水を撒いたとしてもそのマイカが全て水を吸えるわけではないですから。
だから、この開墾作業には軍が動員されます。以前も大規模な開墾が行われたのは有名です。10万人が2か月作業するのですからかなりの重労働です。しかし、そのおかげでかなりの収穫高になり諸外国へ輸出できるようになりました。外貨が入ったことで軍備の方も拡充できたということです。ただ、その分、人口も増えていきますからね。このあたりでそれなりの開墾をするということになりました。来年の予定している戦争の兵糧はすでに備蓄済みです。翌年からの戦争のための開墾です。規模は30万人。
諸外国もゲルラリア国が本気で戦争をしようとしているのが分かるでしょう。我々は本気で戦いに行きます。ヴィンセント国のような甘い国ではありません。今の一番戦力が揃っています。若手の台頭も多く出てきています。若手が成長してこない軍には衰退しかありませんから。ワカトシはその筆頭でしょう。
ヴィンセント国での戦いでコーリン将軍とフォン将軍の隊には多くの死者が出ています。それ以上の戦果も挙げていますが、隊が全滅も報告では上がっているほどです。だから、彼らだけは1か月のみの開墾です。ただ、ヴィンセント国との戦いも全軍ではなかったのですから、立て直しは早いでしょう。しかし、資料に上がっているワカトシにはかなり厳しい条件でしていますね。経験を積ませるためとはいえ、直下の兵士を指導に送らないとは。まあ、コーリン将軍は弟子にすごく厳しいですから仕方ないでしょう。あのワカトシの軍が全滅するとは思っていませんでした。それなりに強いと言われていましたからね。そのワカトシもようやく本来のキレを戻してきていますね。良いことです。
殿下もこのまま終わるのはないかと心配しておりましたからね。計画の中にワカトシの名前がちらほら見えるのでそう簡単に兵士を辞めることはできないのですけど、戦えない兵士を送るわけにもいきませんからね。フォン将軍もコーリン将軍に謝っていましたし。思った以上にヴィンセント国が強かったということでしょうから。
机の上に資料を置きました。殿下のところへ書類をとりに行きましょうか。まだまだこれから大変です。




