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【旧】無口な異世界転移者が大将軍に成り上がるまで  作者: かかと
ヴィンセント国防衛戦
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6話

 兵士の質が変わった。破城槌が土塁の近くに来てから明らかに精鋭兵と思われる兵士が前に出てきた。俺の槍もなかなか通らない。反対に味方の兵士たちが負けているような状態だ。しかし、何とか兵士の数では我々の方が勝っている。敵兵は入ってくる人数が少ないから、こちらが応戦していればそう簡単に入ってくることができない。ただ、あの土塁が壊れてしまえば一気に形勢が傾く。


 その時、いきなり騎馬隊の1人が入ってきた。大きな矛を持って精鋭を5人まとめて斬った。気張れ。その一言でフォン将軍の兵士が歓声を上げる。…、これが常勝将軍のフォン将軍の力か。なんて、カリスマ性だ。今までのヴィンセント国の軍の奮戦が吹き飛んだ。それほどまでにフォン将軍の兵士たちの士気の高揚は著しい。そしてあのフォン将軍の武力。まだまだ強い将軍がいるのだな。


 フォン将軍の兵士たちの熱気に当てられた俺たちも無心で武器を振るう。先ほどの疲れがどこに飛んで行ったようだ。体が軽い。そして、槍に思いが伝わるように動いてくれる。弓矢兵も多くの兵士を射ているのか、敵兵の進軍が少し遅くなる。それでも前に進んでくるのはこの土塁を壊す破壊槌を守るためであるが、一向に壊れる気配がないな。以前はこの時に壊していたはずだが。それほどまでにたくさんの兵士がいるのだろうか。ただ、俺たちができることは進軍を止めることのみ。


 夕方に差し掛かったが、土塁が壊れることはない。何か仕掛けがしてあるにしても随分と長く持っている。ヴィンセント国の軍も次々と兵士を派遣してくる。手際がかなりいいな。そして、兵士たちも正念場と分かっているからこそ突撃してくる。並々ならぬ気迫を感じる。しかし、気迫では作戦を超えられていないのが現実だ。ヴィンセント国の軍もかなりの戦死者を出している。すでに3日目も終わろうとしているから、ヴィンセント国の軍は意地でもここを抜けるために多くの兵士を投入している。他の土塁は分からないが、それでも5千人以上は犠牲になっているはず。


 土塁から変な音が聞こえた。ついに土塁が崩れるか。何か大きなものが傾いてくる。土の中から出てきたのは巨大な石である。それが倒れてヴィンセント国の軍の精鋭兵士の10人くらいを巻き込んで倒れた。確かに土の中に石を入れていればそう簡単には倒れないよな。分かるが、どのように運んできたのだろうか。その石が崩れたのを確認してヴィンセント国の軍は引いていく。もうすぐ夜になるため無理をする必要はないか。


 その夜にフォン将軍からの指示はほとんどなかった。あったと言えば、石を土塁と平行に置いて入り口を高くする程度。この石の意味は分からないが、戦いの作戦に関しては全くない。千人将も少し悩んでいたようだ。どのようにして守るかが重要になってくる。敵兵を殲滅する守り方かそれとも侵入を防ぐような守り方か。個人的には後者の方がいいと思っている。味方の兵士が疲弊しているということもあるが、それ以上に兵士の死者が増えるとこちらが負ける可能性がある。


 翌日、千人将の布陣は守りである。しっかりと守り敵兵を少しずつ削っていく。弓矢兵も今日は多くの矢筒が上げられている。構造は簡単なのでどの兵でも充分な強さの弓矢を放つことができる。ただ、この消極的な形ではたしてヴィンセント国の軍を押し返すことができるのだろうか。


 ヴィンセント国の軍が迫ってくる。彼らはかなりの密度で兵を進めている。弓矢兵は面白いように当てているが、楯を持っている俺たちはすごい力で押されている。完全に力で押し切ろうとしている。千人将の消極的な作戦は良くなかった。しかし、ここからどうにかするにも…。横から百体ほどの騎馬隊が入ってくる。そして、敵兵の後ろを切断していく。前の兵士の力が抜けて、槍で首を突いた。今のうちにかなり前へ出る。他の地点でもちらほら、同じような状況になっているようだ。騎馬隊は陣形が整ったのを見て、横にはけていく。


 俺たちは石が横になっている線を境に防衛を続ける。敵兵も必死に超えようとしてくるが、人数が限られているためそう簡単には崩れない。彼らは井蘭車を持っていないのだろうか。今こそ使うべきだと思っているのだが。そのまま防衛を続ける。他の地点でも防衛に成功したところが多いようだ。


 7日目。そろそろ限界が近づいてきている。戦える兵士の数が少なくなってきている。もちろん、負傷兵も復帰してきているが、まだ負傷兵の方が多い。普通の怪我ではないからどうしても治りが遅い。敵兵の方が多く負傷しているが、兵数が圧倒的に多い。だから戦える兵士は多く残っている。俺と千人の兵士は前線に立っている。フォン将軍より任務をもらった。非常に難しい任務だ。この戦場で一番目立つように敵兵を倒しまくれということだ。その代わりに他の兵士たちは少し離れて陣とっている。まるで意味が分からない。本当にうまくいくのだろうか。


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