9話~ガーマス~
まさか、コーリンと戦うことがあるとは思っていなかった。コーリンは俺と全く異なり、正攻法で戦っている。どんな時でも正々堂々とぶつかっていく。…、俺にはできない。戦は勝つことが重要である。勝つためにはすべてをかける。拷問や囮もそうである。どんなことでもやる。凌辱だろうが、盗みだろうが。
…この小山か。相変わらず、本当にちっさいところで戦っているな。もっと大きな戦いでやってみたがな。まあ、こんな小さいところだったら何をしても許されるだろう。下品な笑みを浮かべながら近くを哨戒していた兵士を捕まえた。
その兵士は大きな丸太に縛られ、大きな火にかけられている。あの山城からは見ているだろうな。さてと、怒って出てくれればよいが。あそこにはコーリンの兵士が詰めていると聞いていたから、今回のような場合には出てくると思っていたが、ちゃんと行き届いているな。…、森の中で戦いは得意だが、部下の動きが把握できないのが難点である。
まあ、どっちでもいいか。うちは戦に勝てば問題ない。先遣隊がぶつかった。コーリンは目と音、そして雰囲気で戦を動かしていく。さてと行きますか。部下が用意している下っ端の兵士の服を着る。今回の戦いではコーリンを倒すのでない。殲滅するのが目的である。まずはコーリンを叩き、その後、ゆっくりと料理していけばいい。コーリンも俺を狙っている。
自由にやるとは言っても指揮系統がある程度なければだめだからな。懐かしいな。裏を取るためにいろいろなことをやったが、一番面白かったのは兵士の恰好をすることだった。やはり手に感触があるのがいい。戦争は人殺しを容認しているようなものだから。山を進んでいると多くの兵士が戦っているのが見える。敵兵の背から剣を首に少し当てる。噴水のように血が飛び出る。
戦争で多いのは出血死。このように動けなくなって死んでいくのだ。兵士の目がおびえている。まさか、自分が死ぬとは思っていなかったのだろう。下っ端の兵士程そのような考えが多い。甘ちゃんだと思う。死ぬ気で来ないから死ぬのだ。
部下からお見事と言われた。すでに百人ほど討ち取っていたか、数えるのが面倒くさいから。…、何かいるな。雰囲気が少し変わった。これほどの空気を纏うような兵士はコーリンの兵士の中にいなかったと記憶している。地方に行って、大物を見つけてきたか。その男は背が高い。とはいえ、俺と同じくらいか。
わずかに牽制して見たが、彼は動いていない。わずかに足を取られた。土の中に剣が埋まっている。故意に埋めていたわけではない。彼の槍は純粋でそして真っすぐ進んできた。首に槍が刺さって痛みが襲うが、一瞬だった。俺みたいに苦しむ切り方ではない。




