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【旧】無口な異世界転移者が大将軍に成り上がるまで  作者: かかと
ヴィンセント国防衛戦
201/301

1話~とある兵士~

 世界は狭いと父が言っていることを聞いたことがある。その時には何を言っているのか分からなかったけど、軍に入ってよくわかった。この軍は地獄であると言っていいと思う。ワカトシという隊長は若い隊長であまり戦場の経験がないと聞いている。しかし、彼らの表情を見ていればしっかりと経験している。


 戦場では何が起こるか分からない。だからこその訓練、練兵である。まずは体力作りから。その言葉を聞いて、いきなり20キロを走らされるとは。その上に防具をしっかりと身に着けている上で。他の兵士たちもしんどいと言っているけど、この隊にいた人は全員何も言わずに訓練を続けている。それもそうか。隣にはワカトシ隊長がいるのだから。


 その訓練も2週間が経つころには体が慣れている。不思議なものだ。


 しかし、2百人ほどで訓練を行うのは難しい。戦場のように大人数で戦うことは少ないのだから、それはまた考えるようだ。その次の日から警邏任務が始まる。首都の警備であるということで俺も含め、他の兵士たちも意気揚々と行っていた。部屋に戻ってみると兵士たちが言い争っている。今までは訓練で疲れていたのでしゃべる時間も休息に当てていた。任務で疲れているが、訓練ほど疲れがないために話す時間ができてしまう。貴族と平民との間で価値観の違いと立場の違いで揉めている。


 貴族たちは優遇されるべきだと思っている。平民は家族を養うために軍へ入っている者もいるため、できるだけ上に上がりたい者もいる。だから、部屋割りでさえ争うことになるのだ。俺はすでに両親が他界しているため何もない。親戚の家には1年間の給料分全てを入れることで終える。実質2年しかいなかったから。


 両親が死んでからは施設に入っており、14歳で施設から卒業した時に親戚に引き取られた。正直、良い暮らしではなかった。親戚からすればごくつぶしにしかならない。お腹が減っていて倒れているところを将軍に助けられて、その時に軍に入ろうと思った。その将軍はコーリン将軍と言った。彼は何も言わずに立ち去った。将軍からすればかわいそうとおもったのかもしれないけど、俺にとっては十分な救いだった。


 選抜試験で受かった俺はコーリン将軍の直属の兵士となると思っていたが、そうはならなかった。ワカトシ隊長は弟子であるという話を聞いて、心が躍った。コーリン将軍と近くなると。しかし、彼らはコーリン将軍を歯牙にもかけていなかった。部下がこんなではと思っていたが、コーリン将軍を必ず超えていく男だと皆が言っている。


 目の前で兵士が舞っている。隊長が兵士を投げまくっている。にわかに信じられないような光景。そうか…。コーリン将軍はこの男に未来を見ているのか…。少し嫉妬してしまったけど納得する。これだけ強いのならばね。イーリンさんが肩を叩いた。笑いながら。スゲーよなって。俺はこの男と早く戦場で戦いたいと思う。そして、強くなって隣で戦い。コーリン将軍はこのことを見越していたのかな。


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