9話~コーリン②~
森の中から大きな声が聞こえ始めたの。森の中で戦いでは陣形という概念が少ない。全体像を把握できておらんから、布陣という考え方はないのじゃ。ただ、森の中を抜けた後に後ろを取られれば窮地に追いやられる。それを防ぐため、扇状型の布陣にて森の側面を固めておる。
幾重にもなっているため、すぐに抜けられることはないの。難しいのは森の中での戦闘の状況が見えにくいことじゃ。援軍を送ろうにも判断がしにくいの。ここに関しては情報を信じるしかないのじゃ。
第一陣が衝突して半刻ぐらいが過ぎておるが、変化は見られん。ただ、先程の兵士からの情報で本陣が見えていないというのが気になるのじゃ。本来、ガーマスは守備にも定評がある。今回は防衛線ではないと言っても本陣がなければ儂どもを壊滅させるまでに至らないだろうと思う。狙っているのは殿下であるにしても、大胆な展開じゃ。
森の中でわずかに揺らぎを感じる。いくつかの隊が壊滅したかの。どうしてもすぐに援軍を送ることができないため、布陣上不利になるような隊はどうしても出てくる。こちらの兵数は敵軍の半分程度。各所の隊が頑張らなければ勝機は見えてこないのじゃ。問題なのはガーマスの率いる隊じゃ。本隊ということもあって、他の兵士たちは気色が違う。勝つためには手段を択ばない人間が多くいるのじゃ。早めに潰しておかねば何をするかわからん。
翌日、朝から多くの音が聞こえる。後ろからはわずかに何か別の音が聞こえるの。…ケヴィンのほうか。嫌な気配じゃ。すぐにでも援軍に行ってやりたいがの…。森の中の戦いは停滞しておる。全体像が把握できないためどうしても兵士たちも進んでいかん。確認してからの進軍のために時間がかかっておる。ガーマスもいまだに見つかっておらんし。
陽が真上に上ったの。情報ではガーマスがいるという情報が少しずつ入っておる。まさかとは思うが、一般の兵士の姿をして進軍しているということが頭をよぎったがの…。正気ではないの。一般の兵士となっていれば仲間に見捨てられる可能性も出てくる。…不気味な奴じゃ。
再度、情報を精査しようかの。森の中でも三角形になっている拠点がある。少し高い頂上の山じゃ。そこを全て押さえれば全体が把握できるため、この戦いを優勢に保つことができる。儂らの軍はその3点に向けて侵攻しておるが、ガーマスにはその気配がない。…一体何を狙っておるのじゃ。




