9話~コーリン①~
8話のコーリン目線を少し修正しております。
他の5人はそれなりの行軍の経験があり、儂との試合も見ているためワカトシを英雄扱いしておる。簡単な話、間者を見つけるということはそれだけ難しいのじゃ。今回のワカトシには何も褒章がない。それは未だに軍隊に所属していないから。もったいないと思われるが、この件で他の国の間者でもないというのははっきりしたの。間者であれば誘いに乗る方がいい。逃げるにしても知らない国の兵士であれば問題ないのじゃ。
5日目にして目的の場所に着いた。これでようやく1つの勝ち要因が増えた。この場所に敵軍より先に着く方が重要であったからの。幸いにして兵士たちはそこまで疲れていないようじゃ。体力の訓練を増やしただけ強くなっておる。罠を設置するため指示を出しているが、動きが良くないの。罠の設置は経験がいるから仕方ないのじゃが。
ワカトシは何も言わずについてきているらしいの。文句も言わないというのは存外難しいことじゃ。人間は案外文句を言うことが多い。その点で言うとワカトシは一流になるだけの力がある。文句を言う間に体を休めることができるからの。
敵将の情報が入ってきた。面倒な敵将じゃ。王の縁戚らしいが、ガーマスという将軍であるの。ガーマスは戦に勝つことだけを考える変わった将軍じゃ。この国では珍しく手段を問わないような勝ち方をする。儂にとってはライバルと言われるような存在なのだろうが、まったく気にしていなかった。
基本に忠実なコーリンとガーマスの奇襲による戦い方では兵士の配置なども違うため比べるものがいない。コーリンにとってはどうでもよかったが、その後がいけない。規律を守ることがないような軍隊がガーマスである。凌辱や殺人などを平気で行う。残忍な軍隊である。国内では評判が良くないのはそのためである。
今回は多くの罠を仕掛けることにした。彼らの目的は我々の殲滅である。少しでも軍隊が存在していれば反乱の芽が残ることになるため、殲滅作戦をとる。今回で殲滅するわけではない。あくまでも彼らはいずれ殲滅させればいいと思っている。だからこそ、ガーマスがどのように考えているのか読めないところでもある。
斥候の情報で1万2千の軍勢が到着した。我々は6千。約半分だが、サラガノス山城を攻略する必要もあるため兵士の消耗が少なくする必要がある。後詰としてケヴィンの7千の兵士が来ることになっているが、間に合わないだろう。国外からの侵攻防衛に駆り出されているのだからそう簡単には行かない。ここまではガーマスの作戦通りになっているのだろう。わずかに髭を触りながらガーマスの声を聴いていた。




