70話
衝撃が走った。アミール宰相を遠目に見ただけだが、自殺するような人には見えなかった。何のために自殺したのか分からない。コーリン将軍やハーグさんはそこまで意外そうな顔をしていなかった。もしかしたら予想していたのかもしれないな。2人とも親しそうにしていなかったが、元は同僚だから知っているのだろう。しかし、どうやって自殺したのだろうか。凶器は持って入ることができないのに。…、まさかな。あえて持っていることを見逃したということはないだろう。
ハーグさんから指令が届いたが、どれも軍に関するものだ。どうしても首都であったことが周辺の貴族たちに伝わるのが遅くなる。遅くなればなるほど、戦いを継続しているという貴族が悪気なしに暴走する可能性がある。まずは、ビルを使い、主要な貴族と連携を取ってもらうということだ。こちらに関してはクレアが対応する。そして、首都の外で待っているギュンター軍をギュンター帝国へ送る係をコーリン将軍とともに行う。他の周辺国にはすでに報告をしているようだ。流石にギュンター帝国といきなり事を構えたくはないため、そのまま通してくれるらしい。
ギュンター帝国に行くまでに2週間の道のりとなる。どうしても本国からコーリン将軍が離れるため軍の力は弱まるが、フォン将軍が何とかするらしい。コーリン将軍がいない間に陥落ということになったら格好悪いだろうから。
陛下の葬式については国葬で行われるが、この国の決まりで火葬までは親族が行うことになっている。どんなに保存技術が発達していたとしても故人がボロボロになるまで葬儀を行うというのは意味がない。国葬については国が安定した時に行うという少し変わった形をとっていた。そのため、俺たちのギュンター帝国への護送が終わり次第、帰国し、葬儀を行う段取りになる。ハーグさんもこの話を聞いてほっとしていた。すぐに葬儀を行うのは調整が難しかったのだろう。各国の要人も来る可能性があるため、国内だけの準備に留まらない。
俺たちはとりあえず、ギュンター帝国の護送へ出発した。




