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8話~コーリン~

 少し頭を悩ませておる。行軍3日目で暴行事件。起こしたのは1つの隊であり、それを撃退してしまったのはワカトシになっておる。ワカトシに悪いところがないところが分かっておるためどうしたものかと考えておるが…。


 周りの兵士もそこまで騒ぎ立ていないが、何も罰がないというわけにもいかん。しかし、撃退した側に試合で追い詰めるようなことをしても兵士の中では褒美となるわけである。他の罰と言えば体罰ぐらいだがの…、あまりよくはないだろう。貶めるような奴も出てくるし。おっ。あれがあるか。


 やっておるの。筋肉運動を。周りの兵士は若干引いており、嫌な顔をしておるがワカトシにはそこまでの大きな罰ではあるまい。だが、あそこまで長く鍛え続けられる人間はほとんどいない。稀有な才能と言っても生まれ持った体の強さは群を抜いておる。行軍が終わってからやり続ける人間なんていないからの。ほどほどにしておくか。


 部下から報告を受けておる。間者が紛れ込んでおると。問題はあるが問題はない。間者が入り込むのは当たり前のことであるからだ。すべての人間の捜査を行っていれば大変なことになるため間者は入りこむこととして話を進める。見られてはいけないのが、兵糧と戦略になる。兵糧が軍の規模と行軍の日数、戦略がどこを攻めるかになるため、どのような奇兵を準備していようが、ある程度のことが割り出せる。


 報告の中でワカトシの話が気になった。相手にすれば運よくなのだが、ワカトシにしては運が悪くワカトシ以外が全員間者であるため、普通の兵士たちではない。最初の行軍で周りの状況が全員間者とはのう。ある意味変わった行軍だろうの。しかし、良い経験である。間者がどのように動くかわかるためじゃ。ほとんどの兵士は間者がどのような者を指すのかわからずに死ぬか引退する。


 間者にもいろいろおるが、今回は情報を探る間者である。将兵を殺すような間者でなくてワカトシは助かったところか。案外返り討ちにしそうだが、こんなところで終わらすわけにもいかないのう。普段は何もないようにふるまっているから質が悪い。しかし、彼らは間者である証拠が並んでいる。多くの場所でいろんな兵士が見ているのはおかしい。


 当然ながらすべて打ち首じゃ。家族がいるとか関係ないし。そもそも、他の兵士にも家族はいるし、兄弟もいるだろう。もしかしたら、身ごもった妻を置いている兵士もいるだろう。結局はその者の心の問題じゃ。一回やった者は再度やる。弱い方に流れていく。境遇が悪くても切り開く者はいるのじゃ。


 部下が伝令を走らせている。儂を見ながら少し驚きおって。儂も気になるから来ているのだろうが。まあ、良い。その場には4人の兵士が並んでいる。残念ながら彼らに帰る場所はない。間者はその場で殺すことになっておる。昔、脱走した間者が敵軍に帰り、戦で大敗北を喫したところから死罪となっている。


 無論、勘違いであれば大変なため裏はしっかりととる。すべての間者を防ぐことができるわけではないが、間者になる人間は激減した。命を懸けるには危険すぎる任務だからだ。ほとんどの間者が借金を抱えていたり、出世が遠のいている兵士だったりする。罪人を使用することもないわけではないが裏切る可能性があるためほとんど使用しない。ただ、駒として使用する場合はある。あえて噂を流して殺させるなど。


 互いにそこまでの余裕はないため間者として使っているだけだ。ただ、ワカトシを誘っているのは評価できる。おそらく有能な兵士になっていくと思ったのだろう。背の高さからして間者には向いていないからの。


 ワカトシはその首を見ていたの。泣いてはいないらしい。何を思ったかわからん。しかし、最悪な状況であるの。一番上の儂は頑張れとしか言えん。すまんの。


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