51話~コーリン~
カーソンの軍隊に関してはどうにでもなるの。前の戦いでもそうじゃったが、命令がうまく通っていないのが問題じゃ。どんな軍でも命令をしっかりと聞いてそれなりに実行できれば普通の戦果くらいは保証できるのじゃ。戦に勝つかどうかは別にしてじゃが。その先にあるのが戦術や戦略だの。基本ができないうちは戦争で戦っても負けるだろうの。
ふむ。周りの兵士も乗っておるの。カーソンに良い勝ち方をしておるから、自然と体が前に前に出ておる。突撃隊としては十分じゃ。そろそろ接敵か。少し衝撃に耐える構えで敵軍に突っ込むがの。…思ったよりもすんなり入っていけたの。クレアくらいの指揮官はいないのじゃな。クレアがいればこんなに簡単に進めはしなかったろうの。しかも今回はファウストもおる上にハーグが後方を支援してくれておるから儂が十全に暴れられるのじゃ。
数刻戦ったが良いものじゃ。戦場にはやはり生と死が隣り合わせになっておるから面白いのう。ただ、貴族の兵士の中には覚悟ができていない中年の兵士がいるのは興ざめじゃが。…、右翼が思ったほどに押し込めておらんのか。部下も右翼を気にしていたようで兵士を2・3百人ほど増やして対応しておるようじゃが、うまくはいっておらんようじゃ。そう考えておると前方から歓声が聞こえるの。止まっておるのは貴様らが強いというわけではないぞ。
十分に前の方は叩いたの。明日からも随分やりやすくなるはずじゃ。では、ここは部下に任せて問題の右翼へ行くかの。敵兵を倒しながら右翼へと足を進めたのじゃが、遠目に見ても敵兵はかなり強い。兵士の強さも貴族としては最高ぐらいに位置する練度じゃ。それにあの兵士たちの防衛陣もしっかりと対策ができているの。ワカトシやイーリンが入っていてもなお前に進めないというのは仕方ない。
しかし、どこかで見たことがあるような気がするの。陣も儂に似たところがある。それにどこかで見たような顔を混じっておる。以前の大戦の参加者か…、知り合いなどいたかの。最近は物忘れが激しくていけんな。儂が出てくると敵兵はわずかに動きを止めた。同じ国内じゃからそういったこともあるのかの。普通はあり得んのじゃが。
指揮官の顔が見えた。…、ワルダー、どうして貴様がここに。周りの敵兵たちが儂を囲むように布陣しておるの。儂のことを過大評価しておるぐらいに儂に兵士を割いておる。変わってはおらんのじゃが…、貴様がどうしてアミールの言いなりになってまで、ここの戦場に来る必要があったのじゃ。部下が話しかけてきた。まあ、良いか。とりあえず、作戦も変えねばならないだろうの。今日はここまでにしておこう。
初日から憂鬱になるの。彼のような優秀な貴族を葬る必要があるのか…。お前には国内の貴族を取りまとめてもらうはずじゃったのに。




