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6話~コーリン~

 ケヴィンが連れてきた男はやはり背が高いの。180センチは超えている。この国では160センチが標準的な身長である。彼ほどになれば兵士の中でも充分に目立つような兵士じゃ。ここに来るまでの5日ほどあったが、自分で鍛えてはおるのだろう。疲れが見えているの。牢屋の中にもいたから仕方のないことじゃが。


 ただ、思ったよりも雰囲気があるの。…、まさか倅とよく似ているとは思いたくないが、よく似ておる。姿かたちは全く異なるが、内面が非常によく似ておるように思う。倅も武官というよりは文官になりたかったようだ。武官の方へ圧倒的に才があったが。この男はその逆じゃの。無理やり文官にされているような感じだ。武の才能はおそらくある。


 倅の槍を渡した。倅が近衛兵になった時に渡した赤い槍。自分で言うのもなんだが、この槍を打ってもらったときには自分が使いたいと思うほどの出来栄えだった。まさか、知らない馬の骨に渡るとは思いもしなかった。彼が持っているとしっくりくる。収まるところに収まったということか。


 兵士の中でも胆力と腕力が強いオルタと戦わせることにした。ワカトシというらしいが、彼はオルタを前にして完全に驚いておるが、試合が始まると感情が消えたように能面になった。


 そして、あっさりとオルタに勝った。彼は見ているだけであったの。同じ軸に立っておらんのだろう。極限の緊張状態の中で覚醒したのかもしれないの。ただ、彼自身は特に驚いておる。オルタが手を抜いていると思ったのかもしれんの。ただ、手を抜くことなどないの。オルタは手を抜くのが苦手で割と怪我をさせやすい性格じゃ。


 ワカトシはこのまま誰かと試合をさせれば怪我をさせることもありうるの。オルタは体が強いため、今のような倒れ方をしても怪我することはないだろうの。しかし、他の兵士ではそこまでうまくない。儂は槍を他の兵士から借りる。儂の行動に周りの兵士は騒いでおるな。久々だからの。槍を実戦以外で持つのは。ワカトシといったか。良い表情じゃ。儂に勝てるとは思っていないの。しかし、一矢報いる表情だ。どれほどの兵士がこの表情をできるか。


 彼は儂に勝てなかったが、良い汗をかけた。兵士がタオルを持ってくる。儂は顔を拭きながら彼の表情を見ていた。やりきった顔をしおって。…、体の節々が痛む。流石に年を重ねただけあって無理がきかなくなっておる。だがの、こういうことがあるからやめられん。女房には止められるがの。


 …彼は伸びるだろう。そっと見守っておくか。この年になって新たな楽しみが増えるとはのう。しかし、ワカトシに規則も教えていないとはケヴィンもそこまで余裕がないということか。肝心なところで甘いの。まあ、そこが可愛いとこでもあるがの。


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