40話~コーリン~
少し肌寒いの。羽織る服を持ってくるべきだったかの。マットの中で過ごしておると言ってもそれなりに寒いの。資料を見ながら今後の対策を立てるのじゃが、気になる部分がある。王が危篤であるということじゃ。もし、王が死ねば殿下が王になるのじゃが、反乱軍を率いている状態では王として認められん。
アミールが王になればもっと混乱するし、問題はフォンじゃ。あそこまで王に思い入れがある将はいないじゃろう。それこそ、フォンだけが王のために戦っているという印象だったのじゃ。だからこそ、殿下の味方をしておらんのは驚きじゃった。王が死んだらどのようになるか儂にも見当がつかん。じゃが、王が生きておる間は何かあることもないじゃろう。アミールもフォンへの監視を強めているとの報告もある。
モルダーは誠実そのもの。不正なんぞあるわけもないじゃろうし、特産物の加工や城の修繕など多岐にわたり問題を解決してきておる。ただ、少し問題なのは軍の様相である。正義第一主義となっている軍の目標は少々危うい。領主や君主も正義を貫いていないと判断した場合、軍が反乱を起こす可能性もあるのじゃ。
まあ、何も考えない軍よりはよほどマシじゃがの。資料にはマットの軍容が書いてある。2千から3千の兵士だが、それなりに鍛えているようじゃ。これならば使えるが、モルダーの指示以外は聞かんじゃろうな。
さてと、もう1つの資料はビル・クロードの資料である。最近急成長した下級貴族である。クレアの父親と知って驚いたものじゃ。性格が全く異なる。表立った違法な取引はないものの貴族同士では怪しいところを行ったり来たりしておる。叩けば埃が出ることじゃろう。しかし、どこからお金が出ているのじゃろうか。商売では普通の服を売っているだけである。その服だけで貴族に貸せるほどの売り上げを上げているようには見えん。
裏が何かあるのじゃろうが、その裏を調べるような時間もないの。そういえば、ワカトシたちからの連絡が途絶えておるな。何かあったのじゃろうな。ただ、今は援軍を送ることができない。クロード家との戦争にまで発展したらややこしいことになる。あの3人を信じて待つしかないの。




